第35話 ドラゴンコインと風車のある国②


ガレオンとの取引で得た大量の森の木材や不要な素材は、見事に換金され、その代わりに必要な食料や資材が手に入った。


リオトはその資材を使い、第2層の防壁を再構築する作業に取り掛かった。ネクロドレイクが開拓した広大な土地と統合し、新たな第2層が築かれることになった。


リオトは完成した防壁を見上げ、隣に立つウィリアムに尋ねる。


「これで新しい第2層が完成したわけだが、問題はないか?」


ウィリアムは図面を広げながら頷いた。


「旧第2層の壁を取り払い、新たに開拓した土地を統合したことで、防御力は格段に強化されました。さらに防壁は外縁まで広げたので、国全体を囲む形になっています。中央部に位置する第一層も、より強固な避難場所として機能するでしょう」


リオトは満足げに頷く。


「これで安心して、みんなが農作業に励めるな」


そこにベルノスが加わり、防壁を見上げながら言葉を発した。


「見事な防壁ですね。これを突破しようとする者があれば、相当の戦力を必要とすることでしょう」


リオトはベルノスの言葉に同意しながら続けた。


「防壁だけじゃない。第一層も中央部を強化して、食糧庫や倉庫は石造りにしてある。耐火性も高く、防湿性も抜群だ。資材や食料をこれまでより長く保管できるようになった」


ウィリアムがさらに説明を加える。


「食料加工施設も設置しました。生肉や作物を保存する加工場ができ、女性たちが担っていた作業を効率化できました。これにより、国全体の生産性も向上します」


ベルノスが軽く頷きながら言った。


「これで、民の生活もさらに安定することでしょう」


そこへセリフィアムが優雅に歩み寄り、微笑を浮かべながらリオトに声をかけた。


「リオト様、牧場や畑の管理も順調ですわ。灌漑かんがいシステムがとても効率よく機能しておりまして、水路も立派に役立っておりますのよ。まさに、私たちの国がますます栄えるための基盤が整っておりますわね」


彼女はリオトを少し見上げ、ふといたずらっぽい微笑を浮かべた。


「でも、リオト様。少しはご自分のお休みも考えたらいかがかしら?あまりに働きすぎて、老け込んでしまうわよ。私がしっかり見守って差し上げますから、心配なさらずに」


リオトはその軽口に驚きつつも、つい笑みがこぼれた。


「……セフィ、老け込むほど年もとっていないと思うんだけど」


セリフィアムは冗談を楽しんだあと、真面目な表情に戻り続けた。


「とはいえ、国の基盤はしっかりと整っていますわ。徴税所や兵站本部も稼働かどうしておりますし、税金の管理と政策も進んでおります。徴税官がリオト様のご指示通り、ドラゴンゴールドを国民たちに配給する準備も進めておりますわ」


ウィリアムが話を引き継ぐ。


「税制の導入も順調です。国民はまだ少数ですが、リオト様に対する信頼が厚いため、反発は少ないでしょう」


リオトは満足げに頷き、彼らの報告に耳を傾けた。


ウィリアムはさらに続けた。


「それと、農産業区に新たに建てた製粉所ですが、風車を使って小麦を粉にすることができるようになりました。これで国民の生活も豊かになるでしょう」


リオトはその報告に目を輝かせた。


「小麦粉か……それがあれば、ついにパンも作れるな」


ウィリアムは微笑みながら頷いた。


「ええ、その通りです。国民が待ち望んでいたパンが、これからは安定して供給されるでしょう。さらに、製粉所の周りには風車が立ち並び、景色も変わりました」


リオトは製粉所のある農産業区に目を向けた。風車の羽根がゆっくりと回り、周囲の牧歌的な風景が広がっていた。青空の下、風に乗って回転する風車はどこか平和で、豊かな未来を予感させる。


ベルノスも景色に目をやり、穏やかな表情を浮かべた。


「この風景を見ると、平和を守るために戦う価値があると思えますね」


「ああ、これで防御力、生産力、そして税制の基盤も整ったな。これからは、さらに国全体の安定と発展を目指していく」


リオトは彼らの言葉に耳を傾けながら、静かに景色を見渡した。国が少しずつ発展し、人々の暮らしが安定していく。それはリオトにとっての誇りであり、責任でもあった。

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