アドバンス・ヴィーター
カズタロウ
プロローグ お父さんはすごいんだ
ぼくのお父さんはすごいんだ!
それはね……子供の頃に世界を救ったことがあるヒーローなんだよ、すごいでしょ!
でもお父さんはあまりそれを自慢しようとはしない。
なんでだろう。
「ねえ、お父さん。お父さんはどうしてヴィーターになったの?」
そう言うと、お父さんはぼくの頭を優しく撫でてくれた。
「そういえば、今まで話してなかったかな。懐かしいなあ……お父さんは最初、強い人たちや魔物と戦うのが楽しみでヴィーターになったんだ」
「えー、なんかそんな風には見えないよ?」
「最初はね。仲間ができたからかな、世界中を旅するうちにお父さんにも楽しみが増えてね。色んな人たちに出会ったり、未知を求めたり、そのおかげで、旅の中でいろんなことを学んだんだ。でも、世界を救ったなんてお父さんも驚きだけどね」
あはは、と笑いながら懐かしんでいるお父さん。
お父さんは、世界を救って嬉しいのかな。
「お父さんはどうしてみんなに自慢しないの? 世界を救ったこと、うれしくないの?」
「もちろん嬉しいよ。でもそれは、一人で世界を救ったわけでもないし自慢にはならない。みんなで力を合わせたからこそ、世界を救えたんだ。過去にこの世界を名を遺してきた人達も、そのはずだってお父さんは信じてるよ。それに――」
「それに?」
すると、お父さんはぼくの手を握って笑顔を見せてくれた。
幸せそうな様子を見ながら、ぼくをじっと見つめている。
「それよりももっとうれしいことはね。旅の中で最高の仲間ができた事と、今こうやって幸せな家族ができたことだよ。お母さんと長多郎がいてくれて、とっても幸せさ」
その言葉を聞いて、ぼくは思わずお父さんの腕に抱きついた。
うれしさがこみ上げてくると同時に、お父さんに甘えるように寄り添う。
「えへへ、お父さん大好き!」
「長多郎、聞いてもいいかな。俺のようにヴィーターになりたい理由はなにがあるんだい?」
「えっとね、お父さんみたいな強いヴィーターになりたい。あ、それだけじゃないよ! 大きくなっても、アリサをずっと守れるヒーローになるんだ!」
「……なら頑張らないとね。長多郎、これからどんなに辛いことがあっても、悲しいことがあっても、アリサちゃんを助けてあげるんだよ。困ったことがあるなら、お父さんも頼っていい――大切な約束を破ることは、友達を裏切ることだからね」
「任せて! だってぼく、アリサが大好きだから!」
胸を大きく反らすぼくを見て、お父さんは微笑ましそうに笑う。
みんなから狙われるアリサはぼくが守る。
だって、大切な幼なじみだから。
この世界にはね、お父さんみたいなすごい人たちがいっぱいいるんだ。
ある試練に合格して、自分の夢を叶えた人がいたり、世界を旅したり、最強を目指す人たちがいるんだ。
自分の人生を自由に生きる、そんな人たちのことをみんなは――ヴィーターと呼んだ。
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