時を巡る猫と少年

@manten-happiness

まだそこにいたのかい

夏の夕暮れ、古びた時計塔の下で、少年の太郎は一匹の猫と出会った。その猫は、ふさふさした尻尾と大きな緑色の瞳が特徴で、どこか物憂げな表情をしていた。太郎が手を差し出すと、猫は警戒しながらも、ゆっくりと近づいてきた。


「僕、クロっていうんだ。君の名前は?」


猫が話しかけてきたことに、太郎は驚きを隠せない。クロは、太郎に自分のことを話す。クロは、時間を自由に行き来できる能力を持っており、過去や未来を旅することができるというのだ。そして、失われたものや人を救うために、時間を旅する使命があるとも。


最初は信じられなかった太郎だが、クロの不思議な力を見せてもらい、次第にその言葉を信じるようになる。二人は、古ぼけた蔵書室で古い地図を広げ、冒険の計画を立てる。


最初の目的地は、太郎の町の歴史に深く関わっているという、今はもう廃墟となった屋敷だった。クロの力で、太郎たちは屋敷が栄えていた時代へとタイムスリップする。そこには、美しい庭園が広がり、人々が楽しそうに過ごしていた。しかし、屋敷の奥には、暗い秘密が隠されていた。


その後も、二人は様々な時代を旅する。未来では、環境破壊が進み、人々が苦しんでいる様子を見て、太郎は心を痛める。過去では、大切な人を救おうとするが、歴史の流れを変えることはできないという現実に直面する。


時間の旅を重ねるたびに、太郎は、時間の大切さ、そして、過去と未来が繋がっていることを深く理解するようになる。しかし、時間を操作することは、大きなリスクを伴う。クロは、時間の流れを乱すことで、未来が変わってしまう可能性があると警告する。


ある日、太郎の町が危機に瀕する。かつて、この町を襲った大災害が、再び起こりそうだった。クロは、この災害を食い止めるために、過去へと戻ることを決意する。しかし、その代償は、クロの命を危険に晒すものだった。


太郎は、クロを止めようとするが、クロは決意を固めていた。そして、過去へと消えていった。


一人になった太郎は、満天の星空を見上げながら、クロとの別れを悲しんだ。しかし、クロの言葉を胸に、太郎は、未来のために、そして、クロのために、何かをしたいと思った。


それから数年後、太郎は、町の人々をまとめ、環境保護活動に尽力するようになった。太郎の行動は、多くの人々に影響を与え、町は少しずつ変わっていった。


ある夜、太郎は、いつものように星空を見上げていると、一匹の猫が彼のそばに現れた。その猫は、クロそっくりだった。


「太郎、元気にしてたかい?」


猫は、そう言って、太郎の頬に顔をすり寄せた。太郎は、この猫がクロだと確信した。


「クロ、君は…」


「私は、また、新しい時間を生き始めたんだ。君のおかげで、私はたくさんのことを学んだ。ありがとう。」


クロは、そう言うと、再び姿を消した。太郎は、クロとの再会に感動し、再び満天の星空を見上げた。そして、心から幸福を感じた。


太郎は、クロとの出会いが、自分の人生を大きく変えたことを知っていた。そして、これからも、クロの言葉を胸に、未来に向かって進んでいくことを決意した。

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