タイムスクレイパー・シュラ

しゅら

第1話 覚醒

 社会人というのは悲しいもので。いや、別に悲しいことではないのかな。

 生活リズムってやつが確立しちゃうと、それを変えたり壊したりしようと思っても、すぐにはできないものだ。

 例えば「起きる時間」ってやつがある。

 学生の頃は、あんなに自堕落な生活を送っていたというのに。大学院の頃なんて、授業が少ないのをいいことに、ほぼ昼夜逆転の生活ですらあったというのに。

 社会人になると、別に決まった時間に起きなくてもいい、好きなだけ寝ていられる日にだって、自然と目が覚めてしまう。


 その日はまさにそんな日だった。仕事が無いし他の用事もない。つまりいつまで眠っていても構わない。だから僕は「絶対に好きなだけ寝てやる」と心に決めて、布団に入った。

 それにもかかわらず、自然に目覚めて時計を見ると……


   7:45


 ほらね。まぁ確かに早起きとは言えないよ? でも、学生の頃なら絶対お昼まで寝てた。でも社会人のサガか、このくらいの時間に起きてしまった。

 まぁ、すごく寝不足だったわけでもないもんな。とは言っても、まだもう少し惰眠を貪りたい感じがある。滅多にない機会だ。もう一度目を閉じよう。


 ……目を閉じ、眠っているのか起きているのかわからない(かといって無理に起きる必要もない)幸せな感覚に包まれながら、しばしダラダラと過ごす。


 20分くらいは経ったかな?


 そろそろ本格的に目が覚めてきた。「ウトウト」という感覚が去っていく。こうなると、もう眠ろうと思っても眠れない。そう思って目を開く。20分経ったとして8:05というところか。いや、もうちょっと過ぎてるかな……?


   12:45  というね。


 いやいやいや。絶対寝てない。そんな寝てないって。別に寝不足だったというわけでもないし、酒を飲みすぎたわけでもない。絶対寝てない。

 僕は驚愕と共に身体を起こし、聞いている人が居るわけでもないのに、思わず呟いた。

 ……それが、自分の才賦アビリティ覚醒めざめだったのだと僕が知るのは、もう少し時間が経ってからだった。



『  時間超越才賦者タイムスクレイパー  シュラ  』


 ひょんなことをきっかけに才賦アビリティ覚醒めざめたシュラ。

それは、同等の才賦アビリティを持つ者たちとの出会い、そして別れの始まりだった。

 全日本で突発的に、超自然的な能力に目覚めた青年たちがいた。

その能力は『才賦アビリティ』と呼ばれ、それを操る者たちを『才賦者アビリティスト』と呼ぶ。


 なぜ自分たちにそのような才賦アビリティが付与されたのか?

 最初は誰もわからなかった。

 だが、彼らの前に1人の『長老エンシェント』が姿を現す。

 長老エンシェントは語る。


 全世界に、巨大な『マッド』が覆いかぶさろうとしている。

才賦者アビリティストたちは、そのマッドの、いわば反作用として生まれた。

 マッドが放つ『禍々しき波動ウェイヴ』が飛び散る時、その周辺から逃れるように『輝ける波動オウラ』が抜け出した。

 この波動オウラを浴びた者たちは才賦者アビリティストとして覚醒めざめ、マッドを『無滅イレイス』する宿命シュクメイを荷うことになったのだ。


 シュラが最初に出会ったのは『不触力場アンタッチムーヴメント』の才賦アビリティを持つ少年・ソウマだった。

 ソウマは戸惑うシュラを長老エンシェントのもとへと導く。そこにはソウマ以外の才賦者アビリティストたちが、すでに一堂に会していた。


「よう、遅かったじゃねえか」

「………」

「ったく、待ちくたびれたぜ」

「でも、らしいっちゃらしいんじゃん?」

「なるほど、レイパー(スクレイパーの略)だもんな」

「言えてる~♪」


 まるで初対面とは思えない会話を一方的に聞かされるシュラ。混乱する彼に、長老エンシェントとソウマが、わかりやすく説明してくれた。それを完全にはまだ呑み込めないシュラであったが、彼らは次々に自己紹介を始めた。


 既に会った『不触力場アンタッチムーヴメント』の才賦者アビリティスト、ソウマ(10歳)。

「よろしくね、お兄ちゃん。僕だけまだ子どもなんだけど。みんなと会えて、すごく嬉しいんだ。一緒にがんばろうね」

 まだ公園プレイング・ステーションではしゃぎ回っていてもおかしくない筈の少年は、そう言って健気に笑った。なぜ、こんな幼い子供チャイルド才賦者アビリティストとして選ばれてしまったのだろう……


「よろしくな」と右手ライトハンドを差し出すのは、見るからに好青年ナイス・ガイだった。

「俺はトオル、年齢は28。『遠隔疎通ピンポイント・デリバリー』の才賦者アビリティストだ。才賦者アビリティストの思念を他の才賦者アビリティストに送ることができる。その才賦アビリティの性質ゆえ、リーダーをやらせてもらってる。ホントはそんな柄じゃないんだけどな……」


「ったくよぅ、もう遅刻すんなよ?」

 そう声をかけてきたのは、どうやらお調子者の青年らしい。

「コウジ。25歳だよ。才賦アビリティは『物質化モノトーン』。『精神世界クオリティ・ライン』にストックしておいた物質を『現実世界クオンティティ・ライン』に再構成することができる」


「クウヤだ。年齢は言う必要もあるまい。才賦アビリティは『移設アンビバレッジ』。特徴はそのうち理解わかるだろう」

 そう言ったのは、今まで一度も言葉を発しなかった、気難しそうな男。年齢エイジングを教えてもらえなかったが、30代後半アラウンド・フォーティに見える。


「よろしくね、寝ぼすけさん♪」

 そう言って無邪気な笑顔エンジェル・スマイルを向けたのは、この場における紅一点ポイント・オブ・クリムゾン

「コトノだよ。22歳でっす。才賦アビリティは『風刹カマイタチ』と『電気掃除機エレキング・ヴァキューム』。なぜかアタシだけ才賦アビリティを2個持ってるのだ。だから2倍大事にしなきゃダメだからね。風を操ったり、電気の力で色々吸い込んだりします。攻撃的な才賦アビリティを持ってるから、怒らせたら怖いよ☆」


「……そして、おぬしじゃ」


 一言も話さず、微動だにしないため加齢死していたのかと思っていた長老エンシェントが静かにポリデントを開く。

「おぬしの才賦アビリティは『時間超越タイムスクレイプ』。能力の説明はもはや要るまいが、すなわち時間を飛び越えることができる」

 さらに、長老エンシェントによる、僕たちの才賦アビリティの説明は続く。



 すでにをもって知っておろうが、才賦アビリティは、無条件に使用できるわけではない。

 使用には代償コストがかかる。代償コストとは、人間が本来、普通に持っている能力の一部を、一時的に休止ダウンあるいは暴走アップさせる必要がある、ということじゃ。


 トオルは、『遠隔疎通ピンポイント・デリバリー』の最中、目でものを見ることができなくなる。あと、ヨダレが止まらなくなる。


 コウジは、『物質化モノトーン』の才賦アビリティのうち、転送動作ストック/アンチストックの最中は耳が聞こえぬ。また『精神世界クオリティ・ライン』に物質を維持ストッキングしている間は、ものすごい鬱状態ブルーマインドとなり、かつ、生足に何の興味も抱けない状態ストッキング・フェティッシュとなってしまう。


 クウヤが『移設アンビバレッジ』を発動させている間は、自身が深い悲しみに包まれていなければならないため、自由に才賦アビリティを活用したいのならば『フランダースの犬トッテモ・ネムイ』や『火垂るの墓サクマ・ドロップ』などの動画を常備しておくがよかろう。


 ソウマは才賦アビリティ発動中、常に勃起エレクトしている必要があるし、コトノは凄まじいアヘ顔ラメェになるため、2人は基本的に行動を共にするとよかろう。またコウジが物質維持ストッキングする際のため、コトノはストッキングを常備するのだ。ただし儂に会う際には、生足に戻らぬと許さん。むしろ脱ぎたてホカホカが望ましかろうて。


 そしてシュラ。そなたの代償コストは……



 こうして、僕の物語フェアリーテイルは始まった。


 僕の才賦アビリティを発動させるための代償コストは、睡眠。

才賦アビリティ発動中は常に眠っている必要があるため、皆と同じように戦闘や調査に参加することはできない。

 よって、本部に残り、活動後に白木屋モンテローザ魚民モンテローザで開かれる飲み会シークレット・ミーティングにて、皆の活躍アクティベーション指を咥えて聞いているリスニング・オン・フィンガー・フェラールのが主な活動となった。


 ルビ練習したくて書いたんですが、萌え設定とBL要素ホモォを絡ませたらベストセラーにならないかな。


 あ~あ。




 

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