配信は好きを広める~ダンジョン配信で広められる好きな物とは?~

ゼータ

プロローグ ⑴

 僕は今、モニターをのぞき込んでいる。

 モニターの中には一人の可愛らしい少女が楽しそうにしている。

 この映像の始まりからみんなには見て欲しい。というか一緒に見ていこう!


 130センチくらいの身長で体型は服装のせいで分からないが太ってはいない。

 服装はゴスロリ衣装と呼ばれる物で、パンツが見えてしまうのではというくらいの丈のフリフリがたくさんついた真っ黒のドレスに、膝上まである黒いニーハイソックスを履いている。絶対領域がある。

 靴も真っ黒だ。

 肩くらいまでの長さのロング手袋をしているため腕は黒で覆われている。

 頭にもフリフリがついたカチューシャを着けている。髪は黒色でショートカットだ。

 そのため黒い部分ではないのは絶対領域と首と顔だけのため、絶対領域はとても眩しく、画面で見ると顔がとても強調されてるように見える。

 その顔は少し丸っぽく、口と鼻は小さく、目はぱっちりと大きく、瞳は黒と言うよりは紫色に近く、眉毛は細く少し下がり目で自信がなさそうに見える。簡単に言うと困り顔が似合うとても可愛いロリといった感じだ。


「おはようでありんす、配信をみているみんな殿。妾は妾で露光ろこうりんでありんす。あ、違うでありんす。この配信ではゼータでありんした」


 声は幼い感じだが、必死にお嬢様を演じようとして声を張っている。

 配信開始早々に本名を言ってしまう、少し抜けたところがあって、見てる人から共感を得られるような年相応の可愛らしい少女といった感じだ。


「それではこれからよろしくお願いするでありんす。あとチャンネル登録もお願いするでありんす」


 両手でドレスの端をつかみ、丁寧に礼をする。




 コメント欄(視聴者数10人)

名無し  可愛い!

名無し  コスプレ?

名無し  凜ちゃんも言ってたけど「ゼータ」ってキャラのコスプレだと思う。

ボール  凜ちゃん言うな。というかここダンジョンの中だよな?違うか?

名無し  確かにそうかも。でもこんな子供が?いや、子供とか関係ないか

ボール  確かに




「みんな殿コメントありがとうでありんす。ここからはダンジョン探索を配信するでありんすから、コメントは見られないかもしれないでありんすが、申し訳ないでありんす。それでは行くでありんすか」


 凜、ゼータは洞窟のような場所にいた。

 周りは岩が出ていてゴツゴツしていて、天井からは鍾乳洞のように氷柱のような岩が飛び出ている。頭の上に落ちてきたら確実に死ぬだろう。

 地面も平らに整備されてるわけではなく、ゴロゴロとした岩が転がっていたりと足場がかなり悪い。

 しかしそこまで暗くはない。壁の一部の岩は青白の光を出していて、幻想的な洞窟になっている。まるで地球ではなく、異世界のようだ。


「魔物が出てくるまでは雑談してるでありんすね。聞きたいことがあったらコメントでお願いするでありんす。今なら見られると思うでありんす。えっと、好きな物でありんすか。妾の格好で分かると思うでありんすが、好きな物はアニメでありんす。特に今コスプレしてるゼータは大好きでありんす。あともう一つ好きな物があるんですが、それは後ほど教えるでありんす。それにこの配信はその好きな物を伝えるために行ってる物でありんすから」


 コメント欄では凜の好きな物がなんなのか当てる大会が開かれていた。

 人数はまだ少ない。初配信だからこんなもんだろう。それに子供のダンジョンは珍しいが、ダンジョン配信自体は珍しくもないから。


「みんな殿妾の好きな物当てようとしてるのでありんすか。自分自身、まあそれもハズレではないでありんすね。妾は妾自身も大好きでありんすよ」


 凜は手元に持っているスマホでコメントを確認しながら進んでいく。スマホを持ってる手は黒い手袋で見えづらいが、黒い指輪を手袋の上からはめていた。


「他には……ダンジョンの魔物でありんすか?まあ嫌いではないでありんすが、襲ってくるので好きではないでありんすね。そろそろ来るでありんすね」


 凜はスマホをポケットにしまい、前方に注目する。

 目の前には警察犬くらいの大きさの犬が2匹現われた。普通の犬ではなく、体は鉄か何かしらの金属でできていて、動くたびに体全体からガシャガシャと音が出ている。そして頭のところには赤い宝石のようなものがついている。


「犬っころでありんすか。妾の敵ではないでありんすね」


 凜は腰あたりから黒い扇子を取り出し、パシッと広げ口元に持ってくる。


「さあ、来るでありんすよ。雑魚殿」


 扇子を持ってない方でドレスの端を持ち一礼する。まるでどこから攻撃されても良いと言うかのように。

 犬たちは正面から2匹で同時に迫ってきて、1匹は凜の横に飛び、横から凜にかみつこうとし、もう1匹はそのまま正面からかみつこうとする。


「ガウッ!」


 凜は1歩も動こうとしない。

 かみつかれる瞬間に扇子で犬たちに風を与えるように軽く振ると、大きな風の刃が現われ、2匹の犬は真っ二つになった。

 すぐに鉄くずは消えて、小さくくすんだ赤い宝石とスーパーで売ってるような食パン6枚切りが落ちた。




 コメント欄(視聴者数30人)

名無し  すご!「ゼータ」みたいに余裕もあってかっこいい

名無し  今のウィンドカッターか?扇子が武器なの?

ボール  相手の魔物がE級とはいえ凄い!ゼータちゃん何級なの?

名無し  可愛くて強いとか、これから応援するわ。とりまチャンネル登録



 

「コメント欄のみんな殿、褒めすぎでありんすよ。妾が配信したいのはこれからでありんすから」

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