「第4話」お願いします! なんでもしますから!
同じクラス、またもや隣の席だった。
「「い つ も の」」
お互いにお決まりの語録を見合って吐き合い、きったねぇなとかお前本編見たろとかそういう何気ない会話をベラベラとした後に、一時間目の授業のチャイムが鳴る。
突然だが俺は、自分を心底真面目で誠実な人間だと自負している。授業中に友だちと話したり遊んだりすることはしないし、きちんと時間いっぱいに学び……そして授業終了のチャイムが鳴った瞬間に欲望を開放する。それが俺のモットーだ。
(あっ、消しゴム落とした)
黒板をノートに写すことに夢中で手元を見ていなかった。やれやれと俺は落ちた消しゴムを探すべく机の下へ……ん? あれ? 無いぞ?
「探し物はこれかな?」
「あ?」
顔を上げると、そこには足を組み俺にドヤ顔を決め込むアポロちゃんがいた。
彼女の手には、なんと俺が落とした消しゴムが握られていた。
「ああ、拾ってくれたのか。サンk
「おっと! ただで返すわけないでしょ」
「は、はぁ!? なに考えてんだお前!」
先生にバレないように小声で話し合う俺達。周りに気づいている生徒が何人かいるし、さっさとこのアホから消しゴムを取り返さなくては。
「アホなことやってないで返してくれ! お願いします! なんでもしますから!」
「ん? 今なんでもって言ったね?」
「あっ」
しまった、つい言ってしまった。俺は目の前に広がっていく満面の笑みを見て、思わず深い溜め息をついた。
前にもこのセリフを吐いたことがあるのだが、その時がまぁ酷い酷い。椅子がガタガタするから代わりに椅子になれと言われ、休み時間の間ずっと四つん這いでこいつの尻に敷かれていたのである……いや決してやましい気持ちもご褒美だとかも無い、決して無い。
「……なんだよ、言ってみろよ」
「どうしよっかな〜? どうしよっかな〜?」
消しゴムを楽しそうに手の中で弄ぶアポロちゃん。
「じゃあ、命令するね」
消しゴムを差し出してきて、アポロちゃんは言う。
「このあとの休み時間、私と手押し相撲で勝負しろ。負けたらもう一個言う事聞いてもらうゾ☆」
アニメ声可愛いなこの野郎。
そう思ってしまった俺の負けである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます