非感性的なあなたへ

@786110

非感性的なあなたへ

 きっと、才能があると言って欲しかったんだと思う。

 私は勉強も運動も苦手だったから、唯一夢中になれそうな芸術に手を出した。

 ひとえに芸術と言っても、音楽、絵画、小説など、細分化すると多岐にわたる。

 その中で選んだのが、小説。

 理由は、自分の想像を一番手っ取り早く表現できそうだったから。

 そんな軽い気持ちで、物語を紡ごうとした。

 ダメだった。プロットを組んで予定通りに進行させようとしても、言葉につまずいてしまう。ほころびを見つけるたびに物語の深層に沈んでいき、気づけば身動きが取れなくなって、視界も不明瞭になってしまった。

 胸には、不快感だけが充満している。

 短編ですら書けない私には、芸術の才能の欠片もなかった。

 特別になどなれない、ただの凡人。

 その現実を突きつけられたとき、人は抗うか、諦めるか。

 私は、後者だった。

 この息苦しさは、生きづらさに繋がっている。

 好奇心に殺されるなんて、夢にも思わなかった。創作なんてやろうとしなければ、こんなことにはならなかったのに……。

 人の欲望は罪だ。簡単に自分をも殺す。

 しかし、その怒りの矛先は、自分にしか向けられない。

 この優しくない世界に、呪詛のあらんことを──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

非感性的なあなたへ @786110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ