出会い系で会った彼女が幼馴染だった件

白浜 海

第1話 再会

 黒歴史。それは人が生きていく上で絶対に人には言えない、言いたくないような経験をした場合に用いられる言葉だ。


 俺こと夕空響は大学2回生なので、今年で19歳にもなれば黒歴史の数は1つや2つに留まることはもちろんないのだが、現在また新たな黒歴史が1ページ刻まれていた。


「なんでお前がここに…まさか、お前がMさんなのか…?」


「…だったらなによ」


 友達に勧められた出会い系アプリを入れて苦節3ヶ月。最初はどんなやり取りを、どんな写真選べばと悩みに悩み、慎重すぎる程のチャットでのやり取りし、実際に会う約束を取り付け、やっとの思いで初めて出会った女の子が幼馴染である塩田瑞希だなんて……何の冗談だ?


 瑞希とは同じマンションに住んでいるため、小学生の頃は一緒に登校したり遊んでいたくらいには仲が良く、中学に上がってからは別の部活のため一緒にいる頻度は少なくなっていたが、たまに会って2人で遊んだりもしていた。


 高校は別々の学校に進学したため、マンションのエレベーターや近所のコンビニでたまに会うくらいで瑞希との接点はほぼ無くなっていた。大学生になった今も高校の頃と同じ状況が続いていたのだが…


「…帰ろうか?」


 うん! 気まずい!


 久しぶりの再会が出会い系アプリってなに!? あまりの気まずさに帰宅を提案しちゃったよ! けどこれって、帰宅先も同じなんだよね! いやもう、どうしよっかこれ!?

SiriでもGoogle先生でもいいから俺に解決策を教えてください!!


「えっ、帰っちゃうの?」


「…え?」


 表情には出していないものの、頭の中でゾンビ映画もびっくりもパニックを起こしていた俺だが、瑞稀の発言で一瞬にして現実に戻されてしまった。


いやいや、なに? このまま2人でご飯にでも行っちゃう感じですか? 俺はどんな顔で何の話をこの状況からすればいいんでしょうかね?


 一応言っておくが、別に瑞稀のことを俺は嫌っているわけではない。久しぶりにちゃんと話して…はまだいないけど、瑞稀とご飯や遊びに行くことに抵抗感は全くない。ただし、今回のような再会でなければの話なのだが…。


「むっ、え?ってなによ。そんなに帰りたいの?」


「いや、うん。帰って布団の中で悶えたい」


「久しぶりなんだからご飯くらい行こうよ! 

お店も予約してくれてるんでしょ?」


 



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出会い系で会った彼女が幼馴染だった件 白浜 海 @umisirahama

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