置き物人間
@786110
置き物人間
僕は置き物人間。いてもいなくても変わらないけれど、なぜか傍に置いておきたくなるみたい。いまは、ある女子大学生の寝室の片隅に置かれている。
僕には性別がないから、部屋の主である女の子が着替えていても欲情することはない。一人称が「僕」だから紛らわしいかもしれないけれど、生物学的にも性差的にも無性なんだ。
僕が普段しているのは、その場でただジッとしていること。どこにも行かないし、何も言わないし、何も食べない。女の子が帰ってきてから話すその日の出来事を、静かに聞くだけ。
女の子は友達との通話で、講義の話や恋愛の話、アルバイトの話、美容品や雑貨の話など、何時間にもわたる会話をすることが多い。
それじゃあ僕は必要ないじゃないか、と思うかもしれない。それが、違うんだ。
通話の後、女の子は決まって、さっきまで話していた子の悪口を言う。
愚痴愚痴と、ねちねちと。
何回も何回も、しつこくしつこく。
単純に、僕に呪詛を撒き散らしているんだね。
まあ、そういった感情も受け止めてしまうから、僕は重宝されるんだろう。
人形ってだけで都合よく使われるんだから、苦労するよ、ほんと。
置き物人間 @786110
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