第9話 再

結局装備をそろえて再び迷宮に行ったのは数日後だった。

その間、べこさんと打ち合わせを一回したくらいだった。


今回は探査を進める目的ではない。

俺たちが全滅した場所は、この何週間かですでに別のチームが踏破したらしく、

危険度はレッドゾーンからイエローゾーンに地図が修正された。


とりあえず なくなった装備は全面的に保険適用を渋られた、

もう自分の目で取りこぼしがないか、調査するしかない。

組合にはごり押しした。

もちろん、チームの、戻ってこられなかった残る二人の手がかりがほしい。


全ては自己責任で、という条件付きだが、ベコさんも帯同することになった。

イエローゾーンなので危険度が下がったというのと温情というところだろうか。


「見たらさっさと帰りますよ」

「どうせ見つからないでしょ」

「きっと誰かが盗ったあとです」

ベコさんの文句は多い。このひとは本当に公務員なのか。


迷宮の入り口から少々歩いたところに一番近いホールがある。

エントランスのようにひらけているのと少し空気がいいのと何チームか休憩していた。


先にすすむにも情報収集しなければ。


「何階まで行った」

「どのルートが安全だ」

「今日はモンスターが多いのか」

「何がでた?」


聞くことはいくらでもある。


特に

「人型」の

情報がほしい。

この迷宮にいる特徴的なモンスターだ。

動きが俊敏で道具も使う。

暗がりから弓や投石をしてくるため、はっきりと姿を見たものはいない。

できるかぎり会いたくない。


「おーい、久しぶり」

顔なじみの行商がいた。

「水とレーションある?」

「まいど」

ここには数日にわたって潜るチームもいるため、運ぶのが面倒なもの 水や保存食を売っている。なじみになって買い物をすると最新情報を教えてくれたりする。


「ねえ、2週間前に俺たちが入ったのって覚えてる?」

「さあ、記録自体は役場にありますわ」

「俺たちのパーティの誰かが戻ってないかな」

「ああ?全員の顔をおぼえてるわけじゃないですねえ。」

塩対応だ。何年もまえから懇意にしているのにたった2週間あけただけでこれだ。

まあでも。俺たちは一回全滅してるんだから他のメンツが普通に歩いて戻るわけないか。


「おいおい塩対応すぎない?」ベコさんにぼやくと、

「さあ。」

あのくらいのおじさんは更年期とか。あるのかもしれない。

女子の前で行きつけの店、みたいにイキってしまったのが急に恥ずかしくなってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

復活の呪文 ねんど @nendo0123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る