缶蹴りの恐怖が突然やって来た…!子供の頃の懐かしい思い出が、まさかあんな恐怖の形で再現されるなんて…!

天川裕司

缶蹴りの恐怖が突然やって来た…!子供の頃の懐かしい思い出が、まさかあんな恐怖の形で再現されるなんて…!

タイトル:(仮)缶蹴りの恐怖が突然やって来た…!子供の頃の懐かしい思い出が、まさかあんな恐怖の形で再現されるなんて…!


▼登場人物

●優斗(ゆうと):缶蹴りしていた時に崖から落ちて亡くなる。その直後、家族は誰にも言わずに引っ越す。密葬の形で周囲の誰にも「死んだこと」は知られなかった。享年8歳。

●洋二(ようじ):冒頭は子供のストーリーで。8歳。優斗の幼馴染。缶蹴り仲間。ストーリー途中から30歳。

●果子(かこ):冒頭は子供のストーリーで。8歳。優斗の幼馴染。同じく缶蹴りなんかして遊んでいた。ストーリー途中から30歳。

●由里子(ゆりこ):冒頭は子供のストーリーで。8歳。優斗の幼馴染。同じくよく遊んでいた。ストーリー途中から30歳。

●近所の人:おばちゃんの感じで。優斗の家の近所に住んでいる。


▼場所設定

●皆の遊び場:丘の上の広場。優斗、洋二、果子、由里子の4人でいつも遊んでいた場所。缶蹴りなんかもここでしていた。少し離れた所に崖があり(ここが天然の高台)、優斗はここから落ちた。

●果子と由里子の自宅:一般的なマンションのイメージで。1人暮らし。

●浴室:果子のマンションの浴室。一般的なイメージでOKです。


(メインシナリオのみ=4358字)


語りは果子でよろしくお願いいたします。


メインシナリオ~


ト書き〈缶蹴りをして遊んでいる、懐かしい子供の頃の風景をバックに〉


優斗)「じゃあ次は僕がオニだねー!」


洋二)「逃げろー!」


果子・由里子)「きゃ~~(笑)」


優斗)「1、2、3、4、・・・」


語り)

私達はみんな幼馴染で、子供の頃からよくこうやって暗くなるまで外で遊んでいた。

よくやっていた遊びは、ベーゴマ、かくれんぼ、どろたん、野球、そしてこの缶蹴り。

この日、私達はいつものように夕暮れになるまで遊んでいた。


ト書き〈優斗がいつまで経っても現れない〉

ト書き〈缶が置いてある場所付近まで、みんなそろ~りと近付きながら〉


洋二)「…なぁ…優斗のやつ、まだ来てないよな…?」(小声で)


果子)「…うん…今なら蹴れるかも…」


由里子)「ウフフ・・・行こ行こ・・・」


語り)

でもこの日、いつもとなんだか様子が違った。

普通なら、私達が缶に近寄ればすぐに優斗が現れるのに、この日は一向に出て来ない。

優斗はいつも散らばった皆をワザと探そうとせず、木陰などに隠れて皆が出て来て近付くのを待つ。

そして急に跳び出して皆を捕まえてしまう…そんなやり方をきちんと心得ていた。

だからこのとき私達が缶に近付いた時点で、すぐ優斗が出て来ておかしくない。

それが一向に出て来ない・・・


果子)「あれぇ…優斗君、まだ出て来ないねぇ」


洋二)「ホントだな…。いつもならとっくに出て来てやがるのに」


由里子)「…」


ト書き〈夜の19時くらいになる〉


語り)

私達はあんまり優斗が出て来ないので、辺りを探し回った。

でも、一向に見付からない。

そのうち洋二が言い出した。


洋二)「ハァハァ…なぁ…もう帰ろうぜ…!多分あいつ、帰ったんだよ。ほらこの前もかくれんぼしててさ、『自分だけの隠れ家に隠れてやる!』とか何とか言ってよ、自分ン家に帰ってた事あったろ?あれやったんだよきっとあいつ」


果子)「う~んそうかなぁ…でも缶蹴りしてる時に帰った事なんか1度も無かったよ」


語り)

私達はちょっと府に落ちなかったので、もう少し探してみた。

結局見付からない…。

仕方が無いので、そのままみんな帰った。


ト書き〈翌日、学校に優斗は来ていない〉


語り)

そして翌日。

私達は昨日の事もあって、優斗が学校へ来たらこっぴどく叱ってやろうと思っていた。

でも、その張本人の優斗は学校に来なかった。お休みである。


果子)「…結局、今日1日、来なかったかぁ…」


ト書き〈数日後。ずっと優斗は学校を休んでいる〉


洋二)「…ったく優斗のやつ…一体いつんなったらガッコ来んだよ…ずっと休んでんじゃねぇか…」


果子)「ホントねぇ」


由里子)「…ねぇ、今日、優斗君の家に行ってみない…?どうしてるか、ちょっと気になるしさ」


洋二)「えぇ~~(汗)俺ヤだよォ!あいつのほうがすっぽかしといてよ!なんで俺達があいつの心配してやんなきゃなんないんだよォ」


語り)

洋二がこう言うのも無理ない。

でもやっぱり幼馴染。

私達はずっと学校を休んでいる優斗の事が心配で、様子を見に行く事にした…


ト書き〈優斗の家が引っ越す〉


語り)

私達はあの缶蹴りの日以来、実に5日ぶりに優斗に会おうとしていた。

しかし優斗の家に着いた時、家の中はすでにガラ~ンとしていた。

不審に思った私達は、ちょうどいた近所の人に事情を訊いた。

するとその人は…


近所の人)「ああ優斗君のお友達なのねみんな。優斗君ねー、丁度おとといの日に引っ越しちゃったわよー。なんでも急だったから、おばちゃんもびっくりしたんだけどね」


果子)「…え…!?引っ越しちゃったの・・・?!」


語り)

優斗は引っ越しちゃった。

私達はみんな何だか拍子抜けした感じがして、「何でいきなり何も言わずに引っ越しちゃったんだろ…」って疑問だけが残った…


ト書き〈皆、30歳になる〉


語り)

あれから22年の月日が過ぎ、皆それぞれの人生を歩んでいた。

でも皆はやっぱり幼馴染♪

今でもずっと連絡を取り合っていた。


ト書き〈仕事が休みの日、お互いに自宅から電話している〉


由里子)「やっほー♪調子どう~?」


果子)「もう~最近、仕事忙しくってさぁ~(汗)昨日も徹夜で書類仕上げてたわよ~」


由里子)「ははは、まぁ~果子も大変ねぇ~」


果子)「ホントよ~~(汗)」


語り)

私と由里子はちょくちょく連絡し合い、普段は電話で喋ってる。

この日、久し振りに子供の頃の話になり、つい優斗の事が話題に出て来た…


果子)「そう言えばさ、昔いきなり引っ越しちゃったあの優斗君、覚えてる?」


由里子)「え?優斗君…?えーと…あ!ああ、ああ、思い出した!あの優斗君ね!」


果子)「やだ由里子ォ、忘れちゃってたのォ~?」


語り)

最近じゃみんな仕事で忙しく、8歳の時に別れたってのもあって、つい優斗の事を忘れてしまいがちだ。

でも幼馴染の絆は強く、優斗はちゃんと皆の心に生きていた。


果子)「優斗君さぁ、あれから結局どこ行っちゃったんだろうねぇ…」


由里子)「ホントね。結局、誰にも引っ越し先 教えて行かなかったんでしょう?」


果子)「そうなのよ~、でもずっと一緒にいたんだからさぁ、あんなふうにいきなり消えちゃう…ってのは無いわよねぇ~」


由里子)「ホントよねぇ~」


ト書き〈いきなり小さな声で、電話の中から優斗の声が聞えてくる〉


優斗の霊)「1、2、3、4…今からぁ…いくぞぉ~~…オニがぁ…行くぞぉ~」(小声で)


果子)「…え?由里子、今なんか言った?」


由里子)「え…?ううん、何も言ってないけど…どしたの…?」


語り)

どうやら由里子には聞えなかったらしい。

でも私には確かに聞えた。

優斗の声だった…。


果子)「…あ!ほら…また…!」


由里子)「…え?…な…なに…?」


優斗の霊)「1、2、3、4…今からぁ…いくぞぉ~~…オニがぁ…行くぞぉ~」(小声で)


由里子)「…あ…ホントだ…」


語り)

今度は由里子にも聞こえた。

2人で喋ってる電話なのに、まるでそこへ割り込むようにして、優斗の声が小さく聞こえて来るのだ…。

私と由里子が少し沈黙した直後…


優斗の霊)「あ…!由里子ちゃんみぃーっけ!」


由里子)「え…?な…何よこれ…な…何で優斗君の声が…こんなふうに聞えて…来るの…」


果子)「わ…わかんないわ…何これ…」


果子)「み…みっけ…?」


語り)

優斗の声が「由里子の事をみっけ(見付けた)」と言った瞬間、由里子が物凄い勢いで苦しみ出した…!


由里子)「うぐ…!!うぐうううあぐぐぐうああじゃぁぁぁぁああぁ!!」


果子)「ちょ…ちょっと由里…!由里子ォ…!あんたどうしちゃったのよ!?ねぇ!ねぇ由里子ォ!?」


由里子)「ぐぐうああじゃぁ…!…グフッ…!」


語り)

断末魔のような叫びの後、由里子は小さく「グフッ」と言い、それきり何も喋らなくなった。

と言うより携帯の受話器がガタンと落ちたのを私ははっきり聞いており、由里子が受話器向こうで倒れたのが分かった。


果子)「由里子ォ!由里子ォ!」


ト書き〈由里子が死亡〉


語り)

私はあれからすぐ由里子の家に向かったが、由里子は既に死んでいた。

警察も来て調べていたが、なぜ死んだのか、その理由が全く分からなかった。

私はこのとき警察に「優斗の声」の事について言ったが、案の定、全く信じて貰えなかった…


ト書き〈洋二に電話する〉


語り)

私は由里子の不審死の事を、すぐ洋二に言った。

洋二も私と同じようにずっと悩んでいた。

どうしてあんな形で由里子が死んだのか?

「優斗の声」の事を話したら、洋二は…


洋二)「…なにか…異様なモン感じるって言うか…変な感じだよな…」


洋二)「…なぁ、もしかしてさ…これ…優斗の呪いかなんかじゃ…ねぇか…?」


果子)「な、なんでよぅ!アタシ達、幼馴染じゃないのよ!なんで優斗がそんな事…!」


洋二)「いや、俺、人づてに聞いたんだけどさ、優斗さ、あの日に…崖から落ちて死んでたんじゃないかって…そんな噂 耳にしたんだよ…」


果子)「え?!ど…どういう事…?」


洋二)「いやなんでもさ、ホラ俺達がよく遊んでたあの高台、ちょっと離れた所に崖あったろ?まぁそんなに高いもんじゃねーけどさ、もしかしたら優斗、あの崖から落ちてたんじゃないかって話なんだ…」


語り)

そこまでを聴いて私は愕然とした。

まさか優斗があの日に死んでたなんて…!

でも確かに、私達がよく遊び場にしていたあの場所には天然の高台があった。

その高台は子供にとっては崖のようにもなる。

優斗がもしあの崖から足を滑らせて落ちていたら…


洋二)「それでさ、優斗、いきなり引っ越しちゃっただろ?あれ、誰にも言わずに家族だけで密葬したって話でさ、そのまま俺達にも言わずにどっか遠くへ引っ越しちゃったって…」


語り)

洋二は誰から聞いたのかは詳しく言わなかったが、そう言われると、それなりに辻褄が合って来るような気もした…


ト書き〈洋二とメールをしている果子〉


語り)

私と洋二は一旦電話を切り、そのあともちょくちょくメールで情報交換していた。

その時…


ト書き〈優斗のメールが果子の携帯に割り込んで来る〉


優斗の霊)「あ、洋二くん、みーっけ!」(メールで)


果子)「…え…?ええ?!ま、また…?!」


語り)

洋二とメール交換していた時、また優斗から送られて来た。

今度はメールだ!

いきなり来たメールに私は思いきり慌て、すぐ洋二に電話した!

でも繋がらない…


果子)「ちょっと!洋二!洋二ィ!」(何度も電話を掛ける)


ト書き〈翌日〉


語り)

洋二はあのメールが着信した時刻、いきなりもがき苦しみ出したらしい。

病院に搬送されたが、そのまま息絶えた。


ト書き〈果子が風呂に入っている時〉


果子)「…ホント…どうしてよ…ホントに優斗の呪い…なの…」


果子)「…ううん、そんな筈ない…だって私達…幼馴染じゃないの…どうして…」


語り)

私は心身共に疲れ果てていた。

立て続けに不審な死がごく身近な幼馴染に起こり、それも同じ幼馴染である優斗の霊が関係している…。

落胆すると共に私の心には、優斗に対する恐怖のようなものが芽生えていた…


ト書き〈脱衣所の方から音が聞え始める〉


果子)「…え…?…な…何か…音が…して…る…?」


ト書き〈浴室のドアがゆっくり開く〉


語り)

私はすでにガタガタ震えていた。

そうしている私の目の前で、ゆっくり…浴室のドアが開いた…


優斗の霊)「あぁ~~~…か…こちゃぁぁん…みーっけぇぇえぇ…」


果子)「…!」


語り)

私の目の前には、顔がグチャグチャに潰れた優斗が、8歳の姿のままで立っていた…。


ト書き〈異空間のような場所で遊ぶ4人〉


語り)

優斗はどうも寂しかったらしい。

自分だけが8歳のままで他の皆は成長して行く。

だからどうでも自分の元に又みんなを呼び寄せて、昔みたいに遊び、みんなと一緒にまた人生をやり直したかったらしい。

今度は違う場所で…。

優斗、洋二、由里子、そして私は、体が8歳児くらいに縮んだままで、今、あの天然の高台で缶蹴りの続きをしている…


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=8Bg2K1LHFYM&t=100s

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缶蹴りの恐怖が突然やって来た…!子供の頃の懐かしい思い出が、まさかあんな恐怖の形で再現されるなんて…! 天川裕司 @tenkawayuji

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