【縁屋~妖泣談~人と妖の絆と愛と切なさに幸せな結末を~一度も泣いたことのない俺が号泣して終わる物語】

到達者師失人

縁その?? 愛という願い

縁その?? 愛という願い


俺は今日となり町で開催されたフリーマーケットに来ていたた。


 「さて掘り出し物はと」


 「ママ魔法のランプがある! ママ買ってよ!」


 「駄目よ! そんな汚いもの! それよりこのお弁当箱買いましょう! あなたの好きなもの沢山詰めてあげるわよ!」


 「わーい! やったー!」


 「おじさん! さっきの子が言っていた魔法のランプは?」


 なぜか妙に心惹かれた俺はその声のした露店のおじさんに話しかけていた。


 「お兄さん……物好きだね……これだよ!」


 と差し出したランプは、インド料理店のカレーのルーをいれるような童話やアニメなんかで見る魔人の入ったランプだが、とても小汚い。ランプは全身しサビだらけで光沢はほとんどなく手入れすらされていないのが見て取れる。


 「おじさん……これ本当売る気ある? 錆くらいとりなよ……」


 「俺もそうしたいんだげとね……このサビどうやっても取れないんだよほんとに……彫刻刀あててハンマーで叩いてもダメ。金属紙やすりで小一時間削ってもダメ。頭にきてマンションの屋上から地面にたたきつけても傷一つさえつかないし、ワックスと研磨剤つけていくら磨いても光沢すら出ない……マジで魔法かかってんじゃないかと思うくらい……お兄さんこれ買う? マジものの珍品だよ? お安くくしておくよ?」


 「値段は……買った!」


 俺は足早に家に帰宅した。

 おじさんの話によるとランプの蓋は何をしてもあかないし、隙間さえなく液体も入らなければいくら熱しても冷やしても冷たくも熱くもならない不思議仕様らしい。

 中々興味をそそられる逸品だ。

 どうせワンコインで買ったものだし、本当に役に立たなくてもジュースを買おうとして小銭を落として回収できなかったと思えばいい。

 俺は家に入り階段を駆け上がりランプをこすってみた。


 「そりゃ何も起きないか……さて次は――」


 「帰ったぞ! 小僧面白いものを持っているのう!」


 「わかる? さっきフリーマーケットで買ってきたんだ!」


 「お主。お前が持っているのは本物の願望器がんぼうきじゃぞ? その意味わっかておるのか?」


 「がんぼうき?」


 聞きなれない単語に思わず返してしまった。


 「簡単に言えば願いをかなえる神具の一つじゃ」


 「えっ!? じゃあこれ本物の魔法のランプなの?」


 「そうなるのう」


 マジか。


 「しかし、このままでは使えないな。どうやらまだ前の持ち主の願いをかなえていないため、おぬしには権利はないようじゃな」


 なんだよがっかりだよ。


 「しかしわしの個人的な興味はそそられれるな。外の国の願望器の事情知っておいても損はないじゃろう。というわけだ縁屋の仕事じゃ。中にいる魔人に話聞いて前の主人の願いをかなえて小僧の好きな願いでもかなえてもらえ」


 「ほんとにいいのか?」


 「別に構わん。お主は中々の縁との縁があるこれくらい褒美としてくれてやる。では呼び出すぞ! はあ!」


 妖神さまがそう気合を込めるとランプから紫色の煙が立登った。


 「妖神様大丈夫なのか? 色的に完全に毒なんだが……」


 「何この煙は実体のない幻にすぎん。こうでもせんと信じん人子もおるじゃろう? 演出というやつじゃ」


 するとその煙は人型に集まりポンという音共に褐色まの肌の緑の髪の可愛らしい15くらいの女の子が現れた。

 服装は薄い胸を一枚の布で隠しへそ出しのふた昔前の魔人をテーマにしたアニメに登場する女魔人のような服装にしている。


 「私は魔人ピクティア。残念ですがまだ新しいご主人様の願いはかなえられません……」


 「そんなことは先刻承知じゃ。儂が聞ききたいのは何故願望器の精であるお主が、前の主人の願いを叶えないかじゃ」


 「よく見れば人間ではなく同業者ですか」


 「まあ儂は厳密に言えば同業者ではないが……今はよかろう。話すがいい小娘」


 「今私は病気で死んでしまった前のご主人さまの転生体にであい、残りの願いをかなえるために待機している状態です」


 「何いっておる? 欲深な人子が願いを残したまま死んだとでもいうのか? 事故でもない限りありえんわ!」


 「私も信じられませんが本当なのです。ほぼすべての人は死ぬ前に私に願い望む願いをかなえてきました。しかし彼一人だけは違った私に一つの願いを叶えさせ残り二つは私にかなえてもらおうとしなかった」


 「ますますありえんな。ちなみにその一つの願いはなんじゃ」


 「とても簡単な願いです。残り二つの願いを叶えるのを自分の隣で見届けてほしいと」


 「それって……」


 「私は最初は疑いました。私に取り入り必要以上の願いをかなえようとしているのではないのかと……しかし彼は違った」


 「ふん! どうせ演技じゃろうて!」


 「私も最初はそう思いましたが彼の最初の願いは本心からのもの。私は願いをかなえることで幸せになる者不幸になる者を数えきれないほど見てきました。彼は私が願いを叶え幸せを手にした人間の振る舞いと言葉そのものでした。彼とは何十年も共に過ごしましたがそれが崩れることは一度もなかった」


 「ふむ! 小僧仕事じゃ! いつもの奴じゃ! しっかり話を聞いておけ! 儂はこのやり取りを術で保存し後で報告書を作る!」


 「わかった話を聞こうピクティア。俺は妖神さまとともに君たちみたいな存在と人間の縁をつなげその縁を見届けることが仕事だ」


 「この国には不思議な人間たちもいるんすね。私のすむ魔人界にはないものです。私と彼サマディーリとの出会いは、私が前の主人の願いを叶え砂漠のオアシスの底に沈んでいたのを彼がたまたま引き上げたことだ。そしてサマディーリは私のランプをこすった」


 『「うっわ! 変な煙出た!」

「私はランプの魔人ピクティアあなたの願いを三つかなえてあげましょう」

「…………」

「あの……ご主人さま私の顔何か変でしょうか?」

「違うよピクティア! よくわからないけど。最初の願いは決まったよ! ピクティア僕が残りの願いをかなえるのを僕と一緒に見届けてよ!」

「そんな願いでいいのですか? 金銀財宝を出すことでも王様にだってなれるのですよ?」

「王様はいろいろと責任としこどが多そうだからいいや。金銀財宝は子供の僕が持っていても悪い大人に取られちゃうしな……だからピクティアがずっと一緒にいてくれればいいや! 僕の名前はサマディーリこれからよろしくね! ピクティア!」』


 「今思えば数年前唯一の肉親の母を失い天涯孤独のサマディーリは家族を求めていたのかもしれません。それから数年後サマディーリは大人になりましたが残りの願いはまだ私に願っていませんでした」


 『「ただいま今帰ったよ! ピクティア」

「おかえりなさいサマディーリご飯できていますよ」

 「いつも通りピクティアは料理上手だね! きっと君の未来の旦那さんは幸せ者だね!」

 「何を言っているのですか? 魔人の世界では成人は百人の願いをかなえた者でそれにならないなら結婚することはできません。このぺースでいくなら結婚は三千年後でしょう」

 「そっか大変だな。僕も願い考えないとね」

 「別に急がなくてもいいですよ。この生活も楽しいですし外で自由に動けるのは貴重ですから」

 「ところで前言っていたけどピクティアはこのランプの魔人の仕事に誇り持っているんだよね?」

 「当然です。誇りも意思もないなら四千年もこの仕事は続けられません。その価値感すら捨てられることがあるなら別ですが」

 「ふーんそうか。そういえば露店で君の好きな果実の蜂蜜づけ売っていたから買ってきといたよ」

 「ほんと! 私果実の蜂蜜づけ大好き!」

 「じゃあご飯にしようかデザートはそのあとにしよう」

 「腕によりをかけたから完璧だよ。魔法を使わない料理って楽しいのね。自分の手て作った満足感があるし、サマディーリがおいしそうにたべてくれるの嬉しいし」』


 「それから十五年サマディーリは子供が成人してもおかしくないほど年を重ねていた」


 『「サマディーリ願いはいいのですか?」

 「僕はこの生活が幸せで満足しているのだ。今はこれ以上は望まない」

 「この幸せをもっと大きくしたくないのですか? 例えば私をおよ――なんでもありません……」

  「今僕は本当に幸せなんだ。家に帰れば君がいて二人だけだけど寂しくなくて暖かい。そんな帰る家があればね」』


 「それからしばらくしてサマディーリは病気になった。私は何度も私に病気を治すよう願いように言った。でもサマディーリは」


 『「サマディーリ! 私に願ってください病気を治すように!」

 「ピ……ク……ティ……ア……ごめ……ん……それ……は……で……きな……い……」

 「何故ですか! サマディーリ! 私は貴方を本当に貴方を!」

 「僕……同じ……気持……ち……さ……でも……そ……れ……だけ……は……ダメ……な……ん……だ……」

 「サマディーリ! いかないでサマディーリ!」

 「ピ……ク……ティ……ア……あり……が……とう……僕……家……に……明る…………い……光……と……火……とも……して……くれて……君……の……光……と……温も……り……に……包ま……れ……て……僕……は……幸せ……だっ……た……よ……」

 「サマディーリッィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!?」』


 「サマディーリは最後まで残りの願いを使うことはなかった。理由は分からない。そして私規定に従いサマディーリの転生体の願いをかなえるためランプの中にこもっていたのです」


 「どうやってサマディーリさんの転生体と出会うつもりだったんだ?」


 「これは確定したことです。いずれサマディーリの転生体に私が確実に行きつくようになっているのです。いつかまではわからないけどね」


 「そうかさてどうするか……縁の鏡で探すにしても海外の可能性もあるし……」


 「簡単な方法があるぞ!」


 「どういう方法だ? 妖神様」


 「何こやつの存在を使うのよ」


 「どういうことだ?」


 「願望器の精が実体化するには多くの力がいるそれを利用すればその程度の願叶えるのは容易だ。ただ――」


 「千年は実体は出せない」


 「当然といえば当然だがわかっているではないか」


 「それでいいのかピクティア? サマディーリさんの転生体と会えるのが千年先延ばしになるんだぞ?」


 「かまわない私はサマディーリの本心を知れれば千年なんて待ち続けられます」


 「よしでは夜は遅いし寝るぞ! たっぷり眠って気分よくことは済ませたい!」


 「分かりました私はランプに戻ります。時が来たら呼びだしてください」


 そういうランプに戻るピクティアと布団に入りいびきをかき始めた妖神様をしり目に時計を見ると11時を回っていてた。


 「俺も寝るか」

 その晩夢を見た。

 『「今度はどんなご主人様だろうまともな人だといいな」

 「今度のご主人さま変わっているな。私とともに自分の願いをかなえるところを見届けてほしいとか……英雄とか王様になるつもりなのかな?」

 「ますます謎が深まるばかり、英雄にも王様にも金銀財宝にも興味はないみたいだし、ただ私と一緒にいる時とてもうれしそうにして生活している。私が小さいころこんな感じだったのかな? 長くランプの中にいたせいで記憶はおぼろげだけど」

 「今日私は隣の家のお姉さんの指導のもと初めて料理を自分の手で作ってみた。当然失敗して黒焦げになっちゃたけど。サマディーリは美味しいと無理した食べてくれた。その気遣いがとても嬉しくて、この笑顔を本当においしい料理でサマディーリの顔に咲かせてみたくなった」

 「あれから数年私の料理の腕もサマディーリも成長し、隣の良くしてくれたお姉さんはお嫁にいってしまった。最後にお姉さんは立派なお嫁さんになってねとだけいって村を出て行った。魔人が人間のお嫁さんになんかなれるわけないのに……でもそうなれたらいいそう思えた」

 「駄目だ私はおかしくなってしまった。毎晩のようにサマディーリとの結婚式の夢を見て、時にゆめの中で彼の子供を身ごもる。果てはその子供がお嫁に行って孫ができる夢さえ見る、下手なこと口走らないよね私?」

 「やってしまった。ついサマディーリのお嫁さんにしてほしいと口走りかけてしまった。いつかいえるかのこの気持ち」

 「それから暫くして気持ちを言えないままサマディーリは病気にっなってしまった。何度も私に病気を治すように願うように頼んでも首を縦に振らなかった。何故なのサマディーリ私と一緒にいたくなくないの?」

 「サマディーリは死んでしまった。心にぽっかり穴が開いたような気持で流れ落ちた涙は三十年止まらなかった。寝食を忘れ三十年泣き続けても平然と活動を続けめ魔人の体を初めて恨めしく思えた。いつしか私はサマディーリの転生体と出会うことだけが希望になっないた。サマディーリあいたいよ」

 「たとえサマディーリが私のことを忘れていてもいい。彼と残された最後の繋がりである残り二つの願いを彼の転生体が使ってくれれば私はそれだけで生きていける。私はただもとのしごとにもどるだけだ。早く私に願って幸せになってサマディーリ。私の一番大好きなサマディーリ」』


 「ツナグ朝よ」


 「起きたな朝飯食ってとりあえず河原にでも行くか」


 俺たちは朝食をすまし近くの河原に向かった。


 「ここでいいのか?」


 「ここでよい。この地域はそこそこ田舎だから川の水のそこそこには清んでいるし、ここは水棲の妖たちの縄張りゴミをその妖たちが定期的にかたずけているから景観もよい。これから縁を宙に映し出すには近くて手頃といえる。それにここの水棲の妖たちの縄張りの親玉の妖とは飲み友達だ下手な邪魔が入る心配もない」


 「ところでピクティアの願望器の精としての存在を使うとか言っていたが、どうするのだ? そんな力自分で使えたから自分で調べているよな?」


 「その通り基本願望器の精の力は自分か主人もしくは両方を最低限守るためか、願いを叶える時にしか願望器の精としての力は使えん。それは例え願望器の精が強大な神に匹敵する持っていても変わらん」


 「じゃあどうするのだ?」


 「妖怪石を使うのだ。妖怪石の力は人ならざる存在に力を与える。故に欲しがる妖は多く妖怪石の力で妖と交渉が成立しやすい。当然人ならざる者には願望器の精も含まれる。つまり妖怪石を与えて願望器の精の力を高め高めた力を願望器の精に使わせるのだ。願望器の精に使用が禁止されている力は願望器によって本来生み出され蓄えられる力のみ。妖怪石により増えた力はそれには含まれん。いわゆる裏技というやつだ。では呼び出すぞ。妖怪石を掲げ唱える言葉は【汝らの縁と存在に力を分け与える】だ。はあ!」


 するとピクティアのランプから紫の煙が立ち上り俺は妖怪石を掲げ。


 「汝らの縁と存在に力を分け与える」


 すると妖怪石から光が飛び出し人の形をとの出した紫の煙が光だし次にわずかに発光するピクティアが現れた。


 「話は全てランプの中で聞いていました。私の力よ! サマディーリの本心を描き出せ!」


 そうピクティアが声を上げると映像が空に映し出された。

 

 『「今日変なものを拾った明かりをつけるランプだと思うけど、中々汚いので布でこすると可愛い女の子が出てきた。あまりの可愛さに心臓ばバクバクして顔を見つめていたら、そのピクティアと名乗る女の子は僕の願いを三つかなえてくれるというので、一人ぼっちで寂しかった僕はよくわからないけど残りの願いをかなえるのを見届けてほしいとかっこつけていってしまった。よくわからないけどやっと家族ができたのかもしれない」

 「それから分かったことだけどこのピクティアという女の子は本物のおとぎ話の魔法のランプの精で何でも願いをんな得てくれるらしい。この前僕がオアシスでおぼれかけた時魔法で助けてくれたから絶対本物だ。じゃあダメもとでお嫁さんになってもらおうかな」

 「ピクティアをお嫁さんにしたいという願いはやめた。ピクティアのこのランプの魔人としての仕事に誇りを持っているといっていた。僕のお父さんはなくなる寸前まで職人として働いて、自分に仕事をくれたお客さんの信頼を裏切らないのが自分の誇りだとよく言っていたし、少し前死んでしまったお母さんは、そのお父さんの誠実さにひかれて夫婦になったからそんなお父さんみたいな素敵な女の子と夫婦になってといって死んでしまった。そんなお父さんとお母さんの子である僕が大事な家族であるピクティアの誇りは奪うことなんてできない。違う願いを考えよう」

 「そうこうしているうちにあっという間に大人になってしまった。そんな時ピクティアが口に出しかけた言葉が本当なら改めて結婚を申し込もう。ピクティアは僕と夫婦になってくれたらいいな」

 「そして僕は病気になった。僕でもわかるこれは死に至る病。ピクティアは何度も病気を治すように願うように言ったけど。僕は願わなかった。ピクティアは言っていた魔法のランプの精と主人には全ての願いをかなえるまで決して切れず再び巡り合う運命の繋がりが残り続けると。僕は欲張りになってしまった彼女の誇りを失わせずできるだけ長く彼女とのつながりを持ち続けたい。たとえ僕が生まれ変わりピクティアに残りの願いをかなえてその繋がりが消えても、きっとピクティアの心には僕との消えない繋がりが残り続ける。それはいずれピクティアを苦しめるかもしれない。それでも僕は世界で一番大好きなピクティアの心を独り占めにしたかった。ピクティア何度生まれ変わってすべて忘れても僕は君が大好きだ。ありがとう僕を幸せにしてくれて」』


 「サマディーリッ! バカ! バカ! バカ! そんなことしなくても私の心は……縁屋さんいえ虹村ツナグさん私は行きます……」


 ピクティアの目からボロボロ涙が流れ落ちその顔は決意がうかがえる。


 「いくってどこへ? まだ妖怪石で得た力で何かするのか?」


 「小娘お主まさか? わかっているのかそれは――」


 「わかっています。これは願望器たる私たち最大の禁忌。私はこれからサマディーリの残した願いの一つを使いこの世界から消滅します」


 「なんでそんなことを? 千年待てばサマディーリさんの転生体と再会できるに」


 「私が使える一つの願いでは、役目から解放されても魔人界に戻らなくてはいけない私はサマディーリと結ばれることはできない。だったら私はこの世界で消滅して世界の一部となり、永久に妻として彼という存在を包み込み愛し続ける。ツナグさんありがとう。最後の願いの権利は貴方に差し上げます。ご自身の願いをかなえてください」


 そうピクティアが言うと俺の手元にサビのきれいに消えた光沢のあるランプが浮き上がり、使えといわんばかりに手に収まった。


 「わかった。どうしても叶えたい願いが一つできた。ピクティアが消滅する前にかなえたい」


 「ふふ私とサマディーリと同じで欲張りさんですね。さあ願いをいって全ての私の力を使いかなえましょう」


 「おい! 小僧どういうつもりだ! 中々いい縁に水を差しおってからに!」


 「妖神様黙って見届けてくれ。この願いだけは決して譲ってはいけないんだ!」


 「まあよかろうそんな顔されて止めるほど儂も野暮ではない。どんなたいそうな願いか期待しているぞ」


 「さあ願いをどうぞ。最後の願いをかなえる人間さん」


 「願望器! 魔法のランプよ! 願望器の精ピクティアとその主人サマディーリに永久の幸せを!」


 「そんなまさかこんな願いを――」


 「よかったな小娘。これでお主の魂は消滅を免れサマディーリとの永久の縁が結ばれた」


 「一つ聞かせてください。何故ツナグさんはこんな願いを?」


 「だってこの三つの願いはサマディーリさんとピクティアの愛という願いという繋がりじゃないか。俺が使うよりもふさわしい二人のために使っただけさ」


 「ありがとう……優しい人間の縁屋虹村ツナグさん……サマディーリやっとあなたに会える……ああ! そこにいるのね! サマディーリ! 今行くね――」


 そういうとうピクティアは光の粒子を残して消えてしまった――

 その光の残り香はまるで天使のまき散らした羽のように宙に舞い消えていった――

 愛の天使が羽まき散らすのは愛し合う者たちを救い助けたるためというけれど――

 ここまでまき散らされた天使の羽という光の粒子は――

 二人の愛という願いにより愛し合う二人を祝福し包み込む世界の愛を感じた気がした――

 それが本当かはわからないけど――

 そう信じたい心からそう思った――


 「小僧流石に見直したぞ。まさか願い一つで縁の質をここまで高めるとは」


 「そういえば気になったんだが、この魔法のランプ中身のピクティアがいなくなったのになんか力を感じるんだが何か変化でもあったのか?」


 「気づかんのか未熟者め。その願望器は最後に正しき願いをかなえたことでお前とこれから生まれるお主の血族に幸運をもたらす神器に変化しておる。どこに捨てても盗まれてもお前の血族の手に戻ってくるようだな。心正しくあればこの願望器はお前の血族に幸運を授けてくれるだろうよ。まあ授けてくれる幸運は人並みの多少上程度だが十分すぎるだろう。良かったな小僧。一つの願いでは破格といえる血族の恩恵を得たといえる」


 「そうか」


 俺はそうつぶやいて――

 天を見た――

 今はこの満足感に浸っていたい――

 一つの願いをかなえるチャンスを失い――

 それと引きかえに救われた二人――

 ただ人を理由なく助ける偽善や綺麗ごとではなく――

 ただ助けたい人を助けたただの我欲ではあったが――

 これほど優しい願いを願えた自分が成長している気がした――

 それが正しいかはわからないけど――

 この心の満足感だけは否定してはいけないそう思えた――



 裏話??

ピクティアは魔法のランプの精として長年願いを叶え続けて多くの人間のろくでもない姿を見て正直うんざりしていた

自分の体を求めるもの恋仲夫婦になって願いを必要以上に願いをかなえてやろうという者も中々多く

そのような願いは規定違反なので断り続けていた

そんなかサマディーリとであい

最初はサマディーリも願いをかなえて不幸になるか欲に溺れて変わってしまうと思っていたが全く変わらす

肉体関係も求めず彼女を最後まで気づかい優しく愛し接し続けた

そんな彼にいつしか好きになり夫婦になって子供がしいとまで思うようになりお互いの気持ちが通じ合う寸前にサマディーリは病に倒れた

そして病でサマディーリは死んでしまい

ピクティアはサマディーリの転生体とめぐり会う時をランプの中で待っていた時にこの話とつながる

そして願望器の精が自分のために主人の願いを使うことは禁忌であり使えばその精の存在はこの世から消滅してしまう

ピクティアはその願いでその自分の消滅した残滓がこの世界にとどまりサマディーリを包み込み永久い愛そうとしていた

しかしそれは縁屋の願いにより不完全な形となり魂はサマディーリと結ばれるために永久に輪廻の輪に乗り共に転生を繰り返すこととなり願望器の精としての力のみ現世に残り二人を温かく見守り助けることとなる

そしてそれから数十年後

海外留学生クティアと現地の学生佐間田 サマタ が恋仲になり結婚して幸せに暮らすのだがその二人が何ものか語るまでもないだろう


次回予告

縁その?? 血のツガイ

町に現れたという美人の幽霊のうわさを聞き彼女と出会う縁屋

彼女は強い力も持つために同族の人間たちをも魅了する力をもち

そのせいで命散らした真祖の血をつぐ吸血鬼

彼女は最後の願いとしてとある男の血を飲んで死にたいと依頼してくる

そしてその男と再び出会い彼女が彼の血を口にしたとき二人の物語は――

そして二人の結末はいかに相も変わらずの濃厚なドラマが君たちを待っている

君の君たちの心へ感動を――

ただそれだけだ――

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