00011縁その十一 猫の擬娘

00011縁その十一 猫の擬娘


「ふう終わった馬鹿馬鹿しい内容だったな」


 俺は縁屋の仕事を終え家に帰宅しているところだ。

 今回はたわいない物探しで散々探しまったあげく妖怪の自宅にありましたとかいう馬鹿馬鹿しい内容だった。

 しかも人間と妖怪の縁とか言っておいてただの人間のラノベが好きな妖怪だったという落ち。

 あまりのくだらなさに妖神様は怒ってやけ酒を飲むといって俺を自宅地近くまで送るとさっさと行ってしまった。

 そんな寂しい帰り道のことだった。


 「にゃー」


 「お! 三毛猫か可愛いなあ。悪いけど手持ちにくれてやれるものはないからまた今度な」


 そのまま帰ろうとするが俺の足にすりすりする三毛猫。


 「わかったなんかやるから少し待ってくれ」

 

 俺が玄関を開けて家に入ろうとすると。

 三毛猫が足のわきから家に入り込もうとしたが――


 「ぎゃっ!? 痛い!」

 

 「猫がしゃべった!? いや待て妖怪かお前」


 「その通り……縁屋に依頼する前に餌を頂こうとしたんだけど私たちはそのままでは家に入れないの忘れてた……」


 ◇

 「で要件はなんだ?」


 「私はミーという私の主人の最後を見取りたい」


 「病院に入院しているから入れないからか? でも猫は病院に入れないぞ」


 「それなら大丈夫だ」


 すると三毛猫は制服姿の女子高生に変わった。

 黒髪セミロングで黒縁眼鏡をかけ顔は可愛らしい印象は受けるが肉付きは薄く低身長て図書館で本を読むのが趣味のような内気な印象を受ける。


 「ちなみに誰の姿なんだ?」


 「私の飼い主の娘さこの姿を得るために食べてしまったけどね」


 「それって――」


 「何を言ってる猫の小娘よ。お主の体からは人の血肉の臭いはせん。妖怪が一度でも人を食えば数百年は血肉の臭いがするからな」


 「妖神様」


 「半分正解だ。私は人子の血肉は口にしたことはない」


 「なんだと猫妖が人の姿を得るには一定量の人子の肉体を食らう必要があるはず……ふむ嘘の気配はせんな……面白い細かい話は聞かんて置こう! 小僧この依頼受けるぞ! 今日の娯楽書のやつよりは面白そうだ!」


 「ところで場所は分かっているのか?」


 「臭いでもうわかっている明日がご主人様が命を終えるときのはずだくれぐれも頼む」


 「わかった」


 「仕方ないやけ酒は明日にするか今回の縁で口直しできるとよいのだが」


 その日光景となりつつある夢を見た。

 『「ミーご飯だよ」

 「ミー可愛いね」

 「ミーあなたの名前は私の好きな小説の主人公からとったのよ」

 「ふふ貴方が小説の中のお化け猫ならお話ができたんだけど」

 「やったよミー! 志望校に合格したよ! これで小説の勉強ができる! 作家になれたらミーを主人公にして本を書いてあげる楽しみにしていてね!」

 「ミー聞いて……私病気みたいミーを主人公にしてあげられないかもしれない……」

 「ミー……最後に……会い……に……来て……くれ……た……の? 今……から……変……な……こと……言う……わね……間……違って……いた……ら……ごめん……ね……ミー……私……食べて……私……姿……を……奪って……それ……で――」

 「わかったわ……キョウコ私が食べてあげる……」

 「ふふ……私……大好……きな……化……け猫……さん……涙……なんて……流さ……なくて……いい……の……せっか……く……の……美人……が……台無し……よ……」

 「さようなら……キョウコ……」』


 「ツナグ朝よ」


 どうやらこいつには深い理由がありそうだ。

 今日平日で学校があるが妖神様の術で何とかなっている。


 「さっさと行くぞ乗れ小僧ども」


 妖神様が雲を呼び雲に乗った妖神様膨らんだところに乗り込む。

 毎度ながら中々乗り心地カエルってぬめぬめしてぷにぷにしているけどそぬめりがなく人肌のように暖かい感じだ。


 「小僧猫の小娘を縁の鏡に入れておけ」


 「わかったミーこいつに入っていてくれ」


 「どうやって入るんだ?」


 「鏡に触れれば入れるはずよし入った」


 俺はミーを鏡に収納した。

 

 「さて行くぞ! ちと予定より死の神が迎えに来る時間が早い! 窓から入るぞ! 小僧しっかりワシにつかまっておれ!」

 

 「えっ!?  窓より大きいよね!? 妖神様!?」


 そのまま病院の窓に突っ込むと某おならで犯人を退治する探偵のようにつるんと窓を壊すことなく病室にマジで何でもありだなこりゃ。


 「ご主人様」


 ミーは姿を変えた。


 「俺たちは外で待っているよ」


 「ああ頼む」


 俺たちが病室の外に出ると縁の鏡が光りだし映像を投影する。


 「わかっているな小僧縁を見届けるのも縁屋の務めだ」


 「わかっているよ妖神様」


 「母さん! 私よキョウコよ!」


 「来て…………くれた……の……ね……京子……ふふ……最後……だもの……嘘……だめ……ね……ミー……」


 「ご主人様気づいて……」


 「当り……前……よ……母が……娘……を……間違え……るわ……け……ない……じゃ……ない……」


 「ごめんなさい! ご主人様! 私はあなたの娘の姿であなたをずっと騙して――」


 「ふふ……いい……の……よ……私の……ため……だった……んで……しょう?」


 「私はそのためにあなたの娘を――」


 ミーはポロポロと大粒の涙を流す。


 『キョウコが死んで十の月が過ぎた――

 私は結局キョウコの血肉を口にすることはできなかった――

 ご主人様は一人娘を失い心が壊れてしまった――

 毎日人形をキョウコと呼び食事を作り風呂に入り共の寝る日々――

 ツガイに先ただれ親も死んでいたご主人様は本当に独りになってしまった――

 同属の友も心が壊れてからいなくなってしまった――

 キョウコの願いを私はかなえないといけない――

 そのために血肉を差し出すという覚悟は分かっていた――

 だが自分の家族を躊躇なく食べることなんてできない――

 同族に言えば笑われてしまう馬鹿らしい話――

 私は人に毒されてしまった――

 それも仕方ないことで猫として生まれ二百年最高の幸せと愛情をくれた最愛の家族――

 それをどうして食べられる――

 それからさらに十の月が過ぎた――

 ご主人様はキョウコの焼いた骨を手をつけてしまった――

 それだけは止めなくていけないキョウコはそんなこと望んでいない――

 結果私は焼いた骨を入れたツボの中身と引き換えにキョウコの姿を得た――

 私がその姿でご主人様の前に立つとご主人様は涙を流し私を抱きしめた――

 その時胸にチクリと針を刺されたような痛みを感じた――

 きっとこれは私の贖罪なのだ普通の猫と偽りご主人様をだまし――

 今またご主人様をだまそうとしている――

 それでも私は――』


 なんだこれは頭に映像と言葉か。


 「小僧どうやら縁の鏡の機能の一部が解放されたようだ。妖怪視点の情報を知ることができるぞ。そろそろ終わるぞよく縁を見ておけ」


 「わかった」


 「あの……時……は……驚いた……骨壺……が……空に……なった……ら……あなた……表れ……たんだ……もの……娘……蘇った……と……おもっ……たわ……で……も……すぐ……あなた……だと……気づ……いた……の……その……優し……さ……何年……も……甘え……て……しまった……今ま……で……あり……がとう……ミー……私……幸せ……者……よ……私……を……愛して……くれる……二人……娘が……いたの……だもの……」


 「ご主人様いかないで!」


 「さよ……うなら……私……の……最愛……もう……一人……の……娘……」


 「母様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!」


 こうしてミーは最愛の主人の最後を見届けた――

 この結末が最良であったかは俺にはわからない――

 しかし二人は家族としての愛とつながりは確かにあった――

 そんな二人の想いがどんな形であれこれもまた二人にとって最良の結末の一つなのかもしれないそう思えた――

 きっとそれは――


 「お前これからどうするんだ?」


 「キョウコの願いをかなえてやるつもりだ。誰もこない墓に埋められるよりキョウコと一緒に私の中でずっと一緒にいてほしい。そしていつか二人とともに天に上りたい」


 「わかったまあいいんじゃないか妖怪らしくて」


 そういって歩き出したミーの背中をなでる二つの手が一瞬見えた気がした――

 ああそうか家族はずっと一緒なのか――

 そう言葉が浮かんだ――

 愛すべき家族に愛されることは誰にとっても幸せで――

 それは妖怪さえ同じなのだろう――

 愛されるとはきっと――

 そこに人間と妖怪の垣根なんてないのだろう――

 それが愛なのだから――

 こうして俺たちとミーの物語は終わりを告げた――

 彼女はこれ

からどうな値のだろうか――

 きっとなにがあっても三人の家族がともにあれは乗り越えられる――

 人と妖怪の命の長さは違っていいてもその宿す愛は変わらないのだから――


 裏話011

 京子は生前わずかながら妖怪の気配を感じられる子でミーにタダならぬ気配を出会った時より感じていて家に向かい入れたとき大好きな小説の主人公の化け猫ミーと同じ名前を名付けた

 その小説は妖怪の性質を知るものが作者であったため化け猫の知識は小説からだけであったがすべて本当であった

 京子の夢は小説家でそのために小説を沢山読み沢山書いて勉強もたくさんして小説を学べる高校に入ることができた

 しかし病にかかりほどなく余命宣告されてしまう

 京子を最後に看取るために子供の入院患者に病院に招き入れらせたミーは京子の最期を看取り京子の母を一人にしないために自分の肉を食べてほしいと持ち掛けらけるが

 しかし愛する京子の血肉を口にできず火葬ののち骨壺は京子の母の願いにより墓には納めず自宅に保管することになるが京子の母は天涯孤独となり精神を病んでしまい友さえうしなってしまう

 その寂しさから京子の骨を食べるまでになりミーは覚悟を決め京子の骨をすべて食べ京子の姿を得て京子の母との生活を続けた

 それから十年京子の母の死期を感じとったミーはその日京子の母に買い物を頼みその先で京子の母は病で倒れ病院に運び込まれた

 京子の母の死期こそ化け猫の力で理解していたが病院にそのままでは入れないことと家族の骨を食べて騙していた罪悪感から最後の日まで顔をだせずにいた

  そしてこの話につながる

 最後に京子の母の骨壺の中身を平らげたミーは人の家を転々としながら化け猫としての力を人前では使わずただの猫として一生を過ごした

 普通の野良猫ではなく化け猫の血筋の猫たちであったためその晩年の野良ネコとして迎えた最後は沢山の子と孫にみとられた最後だった

 そうして京子の願いをかなえて魂は三つ天に昇っていくこととなる


次回予告

000012縁その十二 生贄の花嫁

縁を結ぶ妖の封印された祠に向かう縁屋

そこに封印された妖は語る

奇妙で愛しい嫁の話

二人は引きさかれの残された嫁の決断とは?

そして明かされる彼女の愛

そして二人の結末はいかに相も変わらずの濃厚なドラマが君たちを待っている

君の君たちの心へ感動を――

ただそれだけだ――

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