0007縁その七 拳の契り
0007縁その七 拳の契り
「お前が今代の縁屋が?」
「なんのようだ?」
「あたいは赤鬼のアカ! 縁屋に頼みたいことがある!」
赤鬼こりゃまたメジャーな妖怪が出てきたものだ。
見かけは金髪黄角赤膚ガテン系の逞しい体格にそれでさえ魅力的に見える引き締まった体に大きな胸と整った顔立ち。
背たけこそはあまり高くないが鬼のイメージでよくあるトラ柄の布を腰と胸に巻いている。
体を好んて使うタイプの美女だとと一目でわかる。
「何の用だ?」
「人を探してほしいのさ!」
「相手のことはどこまで知っているんだ?」
「名前だけだぜ!」
「別にいいけど死んでいても知らないぞ」
「何最後にあったのは十年ほど前だ! 人子でも生きているはずだ!」
「わかったついてきてくれ家で詳しいこととを聞こう」
「その前にこぶしを握りな! 男が信用に値するかそれで分かる! アタイはメスだが鬼の端くれ頑丈さには自信がある手抜いたら許さないからね!」
まさに脳筋すがすがしいことに。
まあいいだろう勝っても負けても悪いようにする相手には見えない。
「わかったやろ――」
「じゃあ行くよ!」
ちょっとまったまた準備――
その時の俺の意識は腹部に感じた強烈な衝撃を最後に途切れた。
なぜかそれだけで俺をアカは信用に足る人物して認識してくれた俺一生の謎確定である。
『「あんたかいここいらを荒らしまわる人子ってやつは?」
「正当防衛。勝手に襲い掛かってくるから返り討ちにしただけだ」
「アタイは赤鬼のアカ! あんたの名前は? これからアンタはアタイに倒させるんだ! 名前ぐらい覚えて帰りなよ!」
「俺は縁屋の末裔
「そうかい続きは拳で語りな」
「「ぐは!?」」
「クロスカウンターかよ……」
「なんだよそりゃ?」
「相打ちのことだアカ……」
「アンタ強いね! 同族でもここまで熱い拳のオスはいないよ!」
「俺も殴り合いがここまで楽しいやつは始めてだ」
「だろ! アタイとだちになってくれトドロキ! また殴りあおうぜ!」
「いいぜ! ついでに酒でも飲もう!」
「わかってるねトドロキ! 熱くなった血潮に決める酒は最高だからな!」
「今までは相手が弱すぎるやけ酒だったがここまで楽しい殴り合いの後の酒はぜってえ旨い!」
「全く人子にしておくにはおしいオスだね! 今回はアタイが持っているからこいつで飲もう!」
「これが噂の妖怪酒か! 丁度店でつまみたっぷり買ってきているからそこの俺の家で飲もう! ポテチの油を酒で流し込む快感を味をわったらもう抜けられねえぜ!」
「望むところだよ!」』
「ここは俺の部屋?」
「起きたか小僧こやつがお前を家の前にまで運んできたときはやられたのかと肝を冷やしたぞ」
「妖神様妖怪は許可なく他人の家に入れないとか言ってなかったけ?」
俺は酒瓶片手にいびきを立てるアカに視線を飛ばす。
「同居人の神や妖怪の許可でも大丈夫なのだ。しかしめんどくさいやつを連れてきたのう。こ奴らは酒と喧嘩のことしか考えていない連中だ。気のいい奴らだが細かい話が通じず理解する力も弱い。扱いを間違えたら腕一本ぐらい覚悟することだな。ついでにすこし目を離したらワシの酒を全て飲みつくしこのありさまじゃ……」
次の日。
「アタイとトドロキキは最高のダチで何度も殴り合い酒を酌み交わしたなかだ!」
「ちょっとまて大酒飲みの鬼の一族の酒盛りに参加させたのか?」
「それがどうしたんだい?」
「お前な……妖怪でもよほどの酒豪でもないなら鬼の一族と酒盛りなんて体を壊すだけだ……それを人子で……」
「そこは問題ないさ! トドロキはアタイに匹敵する酒飲みだからね! 酒神の加護を持った人子が酒で体なんて壊さないよ!」
「噂で鬼の一族は酒好きすぎて酒の神の力を感じやすいと聞くが酒飲みの来るところまでくると恐ろしいな……」
「へへへ! あんまほめんなよ!」
「ほめてないわ!」
「でっ妖神様どうする? 縁の鏡で探すか」
「ちょっと待て確か縁屋の縁者に轟という名があった気がする。確かここか」
妖神様はどこからか帳面を取り出しとぺらぺらとめくりだした。
「あったぞ五代前の縁屋の縁者だな。この帳面によると十年ほど前五代前の縁屋の子孫に残した加護を使ったらしい」
「どういうことだい?」
「簡単に言えば居場所が分かったということだ」
「どこに轟さんはいるんだ?」
「ここから北にある北斗山の山頂の山小屋にいるそうだ。この帳面に書かれているのはそれだけだ。おそらくなにか願いでその地にとどまっているのだろう」
「じゃあ行かないと頼めるか?」
「いやじゃな! めんどくさい! あーなんか酒でも飲みたいのう! 旨い酒があればみはらしのいところで飲みたい気分だがな!」
妖神様がちらちらとアカに視線を飛ばす酒飲みたいだけだなこりゃ。
昨日家の酒アカに飲みつくされたこと根に持っているのか。
「じゃこれでどうだい? 鬼帝殺し酒豪と名高い鬼一族で一番酒に強いアタイ達赤鬼でも一晩でつぶれる酒精の濃い酒だよ。土産として持ってきたの忘れてた」
「むほー! これかほんの少量で薄めても濃厚な酒の味が楽しめるという噂のよし! ワシに乗れ小童ども!」
妖神様の上に乗り暫くして目的地である山小屋についた。
「ここか北斗山こんな小さいところにこもっているか」
「馬鹿者見かけで判断するでない。この小屋の中は術で何倍も拡張してある人払いの結界もだ」
「ここにトドロキがいるんだね?」
「そうなるな」
「じゃあけるよ!」
アカは山小屋の戸を開いた。
中は何故か青々とした草原がひろかっていた。
その中心に二十代くらいの青年の姿が見えた。
「久しぶりだなアカ! まあ俺の体感じゃつい先日だがな」
「どこに行っていたんだトドロキ探したぞ! まだまだアンタと飲みたい酒も語り合いたいことも腐るほどあるこれで前みたいに――」
「その前に俺たちのあいさつはこれだろ!」
轟は拳を構えた。
結果か言えば俺はその殴りあいは目撃していない。
代わりに見えたものは――
『「ああつまらないアタイに腕っぷしで勝てる同族もアタイの酒盛りに最後まで付き合える同族もいないどこかにアタイと対等に戦えて酒盛りについてくれる奴はいないかね」
「こいつが噂の妖怪をしばき倒し恐れせられている人子か腕前見せてもらうかどうせアタイが勝つだろうけどな」
「アタイが初めて引き分けた相手が人子とか世も末だね。まさか酒までついてこれるとはこりゃ初めてさ。ここまで強い酒の神の加護持ちなら酒で体を壊す心配ない。なんでアタイが関係ない人子の体なんて心配しているのかね」
「このポテチとかいうやつすげー旨いし酒で口に残った脂っぽさ流し込むの最高だね。なんだろう酒のせいかとどろきの顔見ていると顔が熱くなる飲み過ぎかね」
「何故かトドロキを見ていると心の臓の鼓動が早くなる顔が赤くなって元から赤いか」
「最近おかしいいつも轟のこと考えちゃうし殴られているだけで触れたいるだけでなぜかうれしくなる」
「明日はどんな話をしようかな』
「トドロキこの拳の悲しみはどういうことなんだい?」
「アカすまねえ俺の命はもう尽きるんだ」
「やはりなこ奴。五代前の縁屋が今に至るので残した加護の力で時を遅らせ命を繋いていたのか」
「そんなどうにかならないのか」
「奇跡を起こす媒体でもあれば別だがな」
「トドロキいかないでくれ!」
「最後にお前と殴りあって果てたっかんだ……最高のダチにだからな……涙だの最後なんて湿っぽいのは俺たちに――なんだアカもう泣いているのか……仕方ないやつだな……」
「仕方ないだろ! 人生最高のダチとの別れだ! いかないでくれトドロキ! まだお前と飲みたい酒も話もあるのに――」
轟に抱きつくアカの相貌から涙がとめどなくあふれ出る。
「アカ……お前って……こんな……いい女……だったんだな……」
「いくぞ小僧これ以上は見るに堪えん」
「わかったよ妖神様またこの流れか……」
「何を言っておる?」
「えっ!? いつもと同じ流れじゃ……」
「鬼の熱い愛の涙は奇跡を起こすとは良く言ったものだ」
「それって……」
妖神様はそれ以上は教えてくれなかった――
二人の間に本当の奇跡が起きたかは当時の俺には知る由もなかったけど――
一人の鬼の鳴き声が響く山の中でそうあってほしいそう思えた――
二人は幸せだったのだろうか――
二人の関係は奇妙だったけど互いの気持ちは決して踏みにじってはいけないどんな存在だろうと――
裏話007
「トドロキ~~~~~~~~~~!?」
「あれ生きてる!? 調子もいいや! どうなってんだ?」
「トドロキ! 心配させやかって!」
「病み上がりにそれはきついやめ――」
「オラァ!」
「流れるような右ストーレート――グハ!?」
「アンタには罰して一生のアタイの相手をしてもらうからな! ついでにアンタのごにょごにょまだ早いか」
二人はその後末永く楽しく酒盛り生活を続け三人の子供をもうけた。
鬼の熱い涙の奇跡は真に愛する者にしか効果を発揮せず未来の少ない年寄りは効かないこともある
基本的に鬼は家族の死にめにも泣かないことが美徳とされているのでめったに泣かない
鬼と人子は妖怪の中では比較的にキツネ妖怪タヌキ妖怪と並び子供ができやすいが普通の人間同士よりはできにくい
轟の病気は生まれつきで五代前の縁屋の残した加護を少しつづ使い延命してきたが限界がきて最後の加護で時の流れを遅くしてアカを待っていた
十年もアカと会うのにかかったのは残った加護の力ではそれぐらいの方法しかできなかったから轟は未来にワープしたような感じもっと力が残っていればもっと早く再会できた
轟の病は飛び切り熱い鬼の涙で癒され健康な体となりアカと子供たちにかこまれ幸せな人生を送ることになる
次回予告
0008縁その八 幽霊の初恋
妖霊という魂だけの妖怪に成仏するために好きになった男に告白したいという幽霊
彼女の話を聞きその男に引き合わせるとその男が彼女の縁者であることが発覚し悪霊になり掛ける幽霊
切ない別れの後明かされる真実はとてもやさしい真実
そして二人の結末はいかに相も変わらずの濃厚なドラマが君たちを待っている
君の君たちの心へ感動を――
ただそれだけだ――
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