第13話 掘り出し物
■フィオレラ村 リカード商店出張所
「な、なんや……どうなっとるんや……」
リカードが眼鏡をズラしながら驚くのも無理はない。
小麦やジャガイモなどが結構な量が物々交換で持ってこられたのだ。
「この芋なんか、なんでこない大きいねん。巷に出ているものはもっと小さいもんやで?」
「そうなのか? 俺がイメージしているサイズはこんなものなんだが……ドリーも俺の意図を組んで成長させてくれたんだよな?」
「あい!」
リカードが手にしたジャガイモは俺がよく知る男爵だ。
大きさは日本でよく手に入るサイズで、それほど大きいとは思えない。
「ドリアードの力は植物の成長に大きな影響を与える。育ちがいいのは当然だな」
ひと段落したのか、小麦の入った袋を馬車に積んでいたセリアが俺達の下に来た。
セリアがドリーを撫でるとドリーもセリアにすり寄っていく。
少しの間に慣れてくれたようだった。
「もう一つ驚きなのはあんさん、キヨシはんやっけ? 聖者様やったんやなぁ~、そら大きい芋を育てられるわなぁ」
「そういうものなのか? 俺はただ普通に農業のまねごとをしているだけだ」
俺がまねごとといっているのは謙遜ではない。
昔、じいさんの畑を手伝っていたくらいの知識と経験では村の農家の人達とはレベルが違いすぎていた。
なぜだか、育っている作物が立派なので「ありがたや」とお祈りされたり「さすがキヨシ様」と担ぎ上げられるのでよくわからない。
ただ、過信はしないように気を引き締めては行きたいところだった。
「そうだ、リカードは街を知っているんだよな? 街の情報として風呂とかについて聞きたい」
「ああ、この村には風呂屋はないなぁ。川で水浴びするだけやろ?」
「俺は風呂のある生活に慣れていた人間だから、あったかい湯を浴びたいんだが何か手がないかなとな……」
リカードが説明してくれたことで、風呂の文化があることはわかったが村にそれらしいものがない。
だから、他の方法を知りたかった。
「せやなぁ……いい取引ができたんで、これをキヨシはんにあげるわ」
「これは?」
俺はリカードから赤い石の様なものを受け取る。
ゴツゴツした肌触りで、今まで触ったことのないような不思議な道具だ。
「温熱の魔導具ゆーてな、魔力を込めるとあったかくなるんや。魔力を込めてあったまった状態で水につければお湯ができるってわけやね」
「湯沸かしができるものか。再利用もできそうだな」
「火を使わないから川岸でなくても温浴ができるゆーて、街では一時期注目を集めたんやけど」
「だけど?」
「街で大量の水を用意する必要もあるし、魔力をかなり込めないと温らないものなんで使い道があんまりなくて在庫があふれている状態や」
「なるほどな……」
俺は石を持って、ぎゅっと握ると<浄水>を初めて使ったときのように頭に力の流れがイメージできる。
すると、石がさらに赤くなって熱を持った。
「あぁぁっっ!? こんなにすぐあったまるものなのか!?」
「キヨシはん! 貴族にしかロクに使えないと言われてたものやのに!」
「わからん……わからんが、これで風呂に入れる!」
俺は理由なんかどうでもいいので、あったかい風呂に入れることでウキウキする。
数日ぶりの風呂だ!
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