第2話 シスターホリィ

■フィオレラ村 教会礼拝堂


 俺が目を覚ますと、そこは教会の中だった。

 俺の住んでいる田舎の小さな教会によく似ているが、古くささなどからして別物だとわかる。


「ここは……どこなんだ」

 

 月明かりが差し込んで幻想的な雰囲気を醸し出している礼拝堂の床で俺は寝ていたようだ。

 そういえば異世界の教会って何をあがめているんだろう?


「すまない! 誰かいるか!」


 夜で静かにしなければいけないとは思いつつも、現状把握をしたいので声を出して呼びかけることにした。


「どちらさまですか? このような時間に礼拝でしょうか?」

「ああ、俺は……通りすがりというか、なんというか……」


 教会の入口から姿を見せたのは手持ち用の明りを持ち、シスター服を着たクセっ気のある金髪の女だった。

 ものすごく美人で、シスター服の胸元を盛り上げるほどの巨乳が目立つ。

 俺の務めていた工場は男ばかりだったし、女性がいてもおばちゃんなのでこんな美人と話すのは初めてだ。

 緊張して言葉に詰まるのは仕方がない。


「そういえば……言葉が通じている?」

「はい、聞こえていますよ? 旅の方でしょうか? このあたりでは見ない服を着ていますが……」

「ええと、これは……どう説明すればいいんだ……銀髪の長い髪の女に連れてこられたというか……」


 嘘は言っていないが、信じてくれるだろうか?

 俺の言葉にシスターは驚きに眼を見開いて、俺の手を取った。


「詳しいお話を聞かせてくださいますか? 重要なことですから」

 

 シスターに案内されて、俺は外にある司祭居住区へと向かった。


■フィオレラ村 教会司祭の家 キッチン

 

 小さな家の中にあるキッチンに案内され、俺は椅子に座って周囲を見る。

 書斎となっている部屋と寝室が2つ、あとはこのキッチンくらいだ。


「改めまして、私はホリィといいます。フィオレラ村でシスターをしているものです」

「俺はキヨシだ」

「キヨシ……変わったお名前ですね? それに髪の色や目も……東方と呼ばれる遠い国にいる人のようです」

「日本という国に聞き覚えはないか?」

「いえ、私にはありませんね……。」


 俺はホリィに事情を説明する。

 とはいっても俺自身よくわからいことばかりだったのでうまく説明ができたとはいえなかった。


「古い伝承で、女神セナレアが世界が瘴気に侵される時、使者を遣わされるとありましたが……まさか私が遭遇するとは思いませんでした」

「使者? そんなに仰々しいものではないぞ?」

「ですが、キヨシさんが見たという長い銀髪の女性というのは女神セナレア様に近いですから……」


 ホリィはウキウキした様子で俺の話を聞いてくれる。

 大人っぽい美人だと思ったが、こういうところはお茶目で可愛い気がした。


「この辺境の村、フィオレラをはじめ瘴気が広がってきているので、解決のためにキヨシさんを遣わしてくれたのかと……」

「俺はそんなに偉い存在じゃない……ただの派遣社員だ」

「そういうことにしておきます。まず、これからどうされるのですか?」

「できれば一晩でもいいから泊めてもらいたい。明日は村の方へいって帰る方法について探りたいと思っている」

「ここは私一人だけで暮らしていますから、空いている寝室で過ごしていただいて大丈夫ですよ」


 にっこりと綺麗な笑顔でホリィはいってくれるが純粋すぎて不安になる。

 鍵のかからない部屋で、年頃の男女が寝泊まりするというのは間違いが起きてしまうはずだ。

 いや、さすがに起こす気はないんだが……。


「わかった、ありがとう……世話になる」


 俺は素直に好意を受け取ると寝室へと向かった。

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