第三話 バスケ部の恋路をスパイする

 

 最近いつも一緒に帰る先輩が早く帰ってしまう。

 この頃二週間くらいだろうか、俺の尊敬する二条城先輩は今日もひっそりと1人で部室から出ていく。

 正直なところ、俺はあまり気にしてなかったが、先程気になる話を聞いた。


「バスケ部の二条城先輩とマネージャーが付き合ってるって本当?」


 他のクラスで幼馴染である綾華(あやか)が聞いてきた。

 突然告げられた内容に俺は動揺する。

 何も知らない俺は綾華に色々聞いた所、最近目撃情報が出ているようだ。

 同じバスケ部の俺なら知ってると思い聞いたのだろう。


 残念ながら俺は何も知らなかった。

 そして今、それについて部活の友達の青井狸(あおい かい)と話し合っているところだ。

 狸はマネージャーと仲がいい方なので、何かわかるかもしれない。

 二条城先輩が付き合ってるという噂の相手。

 名を神無月夜(かんなづきよる)という。夜は俺達バスケ部のマネージャーの1人だった。


 つまりバスケ部内でのカップルが誕生したことになる。


 部活内での恋愛は何となく良くない印象がある人もいるだろう。

 この部活でもあまり恋愛は良くないという風潮があった。

 去年引退した先輩も色々問題になったと聞いたこともある。

 そんな中、噂になっているこの話題を夢中になって話す。


「正直、部活内の恋愛ってなくね?」


 狸は言う。


「そう思われるから二条城先輩も隠れて付き合ってるんだろうな」

「付き合ってるとしても先輩と夜って喋るとこ全然見なくね?いつから付き合ってんだろ」


 狸は言う。


「待って!あれ二条城先輩じゃね?」


 狸が突然声を上げる。


 顔を上げると、確かに二条城先輩が通りかかるのが見える。そして横には夜の姿もある。


「今、夜もいたよね?」


 俺の発言に二人は頷く。


「これってやっぱあの噂本当ってことだよね」


 狸は言う。


 噂がある中これを見てしまうとそうだとしか思えない。

 なんで二条城先輩と夜なのか。それは全く想像できない。

 なんなら夜は狸といい感じなのではないかと思っていた。

 狸はマネージャーみんなとかなり仲が良く、狸はマネージャー全員を狙ってるのではないかと時々思ってしまう。

 特に狸と夜の組み合わせは俺の中で勝手に良いと思っていた。


 そんなことを考えていると狸は


「てか、夜と付き合うってなくない?まずマネージャーをそういう目で見れないわー顔が可愛いだけじゃね?」


 と言う。


 狸が本気でそう思ってるのか嫉妬なのかは分からないが、どうだろう。

 確かに夜は可愛い、というか、美人とか綺麗と言った方が正しい。

 ひとまず、この噂はほぼ確定かもしれないということに達成感を得る。


 年頃の俺たちにはスパイ行動をしているみたいで噂を調べるのはとても楽しかった。

 特に狸はかなり厨二病心がある。

 そんな狸が半分ふざけて言う。


「これからも捜索しがいがあるな」


 まあでも、部内恋愛ということで、問題になってからでは遅い。

 二条城先輩と夜は明らかに付き合っていることを隠している様子だ。

 問題が起こらないように、少し情報を探ってみてもいいかもしれないな。



 ***


「楓。ちょっといい?」


 次の日。綾華が俺を訪ねてくる。

 二条城先輩と夜についてかと思ったが、違かった。


「宵闇さんっているでしょ?」

「ああ。いるが。」


 宵闇紗理奈(よいやみさりな)

 綾華と同じAクラスだ。

 バスケ部のもう一人のマネージャーである。

 ちなみにバスケ部のマネージャーは四人いるので、あと夜に加えて二人いる。


「宵闇さん。最近元気ないんだ。何かわからない?」

「そうなのか?」

「バスケ部と関係あるかもって思ったんだけど、違うかな?」

「すまないが、今は何も分からない。少し、気にかけてみる。」

「うん。お願い。」


 綾華に言われたので、少し調べてみることに。

 とりあえず、宵闇と話してみよう。

 ということで、部活の後に少し宵闇と話すことにした。


「ごめんな。急に呼んで。」

「ううん。いいよ全然。」


 今の所普通。か。

 とは言っても、話すことを考えていなかった。

 せっかくだし、今噂の二条城先輩と夜について聞いてみるか。


「宵闇は二条城先輩と夜が付き合っているなんて噂知ってるか?」


 すると、微かにだが、宵闇の視線が上に行くのを俺は見逃さなかった。


「え、そうなの?」


 おかしい。様子が少しおかしかった。

 おそらく何か知っているな。

 二条城先輩と夜。そこにどんな関係があるのだろうか。


 やっぱり調べておいた方がいいかもしれない。

 ちょうどもう冬休みに突入し、すぐにバスケ部は合宿の予定がある。

そしてなによりも、宵闇が元気がないのを助けるために。

 しばらくは、バスケ部を調べようか。


 

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