モブ男の俺に学校一の美少女じゃ釣り合わないので断ったら全力で落としに来るんだが、なんで他の美少女達まで俺を狙って来るんだよ!?
斜偲泳(ななしの えい)
第1話
「佐藤君……。好きです、私とお付き合いして下さい!」
「謹んでお断りします」
ペコリと俺は頭を下げる。
「何故ですか!?」
「何故ってそりゃ、伏木が学校一の美少女だからだろ」
呼び出されたのは放課後の空き教室。
何故だか俺は、学校一の美少女である
心当たりは特にない。
わかる事と言えば、伏木が学校一の美少女であるという事だけだ。
みんな言ってるし。
実際俺も可愛いとは思う。
夕日を浴びてキラキラ輝く艶やかな黒髪、神様がこいつの為だけに一週間程全てを投げうって励んだとしか思えない整いすぎた容姿、絶妙なバランスで成り立ったプロポーションは女神のように美しく、白い肌は凡人には触れる事すら許されない神々しさを宿している。
伏木奈子という女は、一億の群衆に紛れても一目でわかる、超常的な美貌を備えていた。
対する俺は、どこにでもいるような普通の凡人だ。
神様がモブキャラジェネレーターで量産したとしか思えない、特に語る所のないモブ男子Aである。
名前だって普通だし。
「その上伏木は成績優秀、スポーツ万能、誰にでも優しいパーフェクト美少女だって話じゃないか。どう考えても釣り合わん。そういうわけだ。気持ちは嬉しいがな」
「確かに、私なんかでは佐藤君とは釣り合わないかもしれませんが……」
「お~い。俺の話を聞いてたか? 逆だ逆。俺が下、伏木が上。勘違いする所じゃないぞ?」
「慰めてくれるなんて……。優しいんですね、佐藤君は……」
「いや、違うって……」
ダメだ。
伏木の奴、完全に目がハートマークで人の話を聞いちゃいない。
やはりあの噂は本当だったか……。
一見すると才色兼備、パーフェクト美少女にしか見えない伏木にも、一つだけ欠点があると言われている。
実はこの女、とんでもない不思議ちゃんらしいのだ。
だからこそ、俺みたいなモブ男子に恋なんかしたのだろうが。
「とにかく、俺は伏木とは付き合わないからな。部不相応って奴だ。俺みたいなモブ男が欲を出して背伸びをしても、お互い不幸になるだけだろ。じゃあな」
話を打ち切ると、俺は空き教室を後にする。
「私、諦めません! 頑張って努力して、佐藤君と釣り合う女になってみせますから!」
去り行く背中に伏木が叫ぶが……。
いや、努力なんかされたらますます釣り合わなくなるだけだぞ?
言っても無駄のようだから言わないが。
まぁ、どうせ不思議ちゃんの気まぐれだ。
ほっときゃその内目が覚めるだろう。
なんて気楽な考えは、とんでもない大間違いだったのだが……。
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