明晰夢
ジゴク
自己犠牲願望
ある日、男は目を覚ます。ここは学校。今は物理の時間だったか。昨日ゲームをやりすぎたへ弊害だろうか。普段はどんだけ授業中に寝ようが気にしないが、この物理の授業だけは寝たら最後、もはや追いつけない速度で進んでしまうのだ。男は珍しく反省する。
「さて、どこまで進んだかな」
誰にも聞こえない声量で独り言をこぼす。黒板を見る。教師はいないようだ。
「あぁ、そこまで進んだか」
男はノートをとりながら教科書を並べ授業内容を時間中に理解しようと努力する。男がしばし理解に集中して数分が経っただろうか。再び前を向く。二匹の鬼が立っている。あぁ、そうだ今は自習の時間だ。もし、集中していないことがばれたら最後、どうなるかは想像に難くない。男は数学の自習をする。
数時間だろうか、数分だろうか、ふと前を向く。は、しまった。目が合ってしまった。男は先頭の席に座っている。鬼との距離など1メートルもない。急いで立ち上がって教室内を逃げ回る。周りの生徒は自分など存在しないかの如く自習に励んでいる。だが、教室内など逃げ回るにはあまりにも狭すぎるのは自明の理であろう。男は鬼に頭を持ち上げられる。男は叫ぶ。
「私がクラスメイトの犠牲となることで他の32人のクラスメイトが助かるなら悩むまでもない選択である。」
男は覚悟を決める。鬼が男の頭を叩き地面に転がす。男はふと、生への願望を抱いてしまう。男は鬼に殴り掛かる。鬼は微動ともしない。鬼は両手で男を持ち上げ頭を割る。男は死に際に思う。私は死ぬのか。たとえこれが夢だとしても、それは一興かもしれん。鬼は最後に脳みそを取り出し、そこで意識が途絶える。
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