繰り返すもの

前書き

遥か昔……今の人類がやっと火を使う事を覚えたかどうかと言った時代のことである。現在のグリーンランド近辺に今は忘れ去られた大陸が存在した。名を、ハイパーボリア大陸。

ハイパーボリアには今の人類とは由来の異なる人類が住み、優れた文明を築いていた。法による厳格な体制、産業革命以前程度の科学、そして、現代にはほぼ残っていないおぞましくも強大な魔術の数々が、ハイパーボリアの文明を構成しているものだった。

人類が爬虫類との戦争に勝利したことによって興り、最後の都市ウズルダロウムが極地の神のもたらした氷河に押し潰されたことによって終焉を迎えたこの文明は、恐らくこれを読んでいる諸君らの大半が覚えがないように、既に忘れ去られた、知られざる文明である。

この先に綴るのは、その知られざる文明の、その文明を生きた人々にすら知られていない、しかし、人類全てを巻き込んでいた、恐るべき戦いの物語だ。