第41話 ボス戦はコメント欄とともに
スタートから2時間ほどかけて、ようやくボス部屋の前へとたどり着いた。
平坦な道のりではなく、道中にある宝箱の半分くらいがミミックだったり、頭上から何度も
でも逆に言うとそれらをクリアしてしまえば、あとはボスを倒すだけなのでもうひと頑張りといったところ。
877:名無しの冒険者
やっとボスか、長かったな
878:名無しの冒険者
国選パーティーより早く到着したな
879:名無しの冒険者
国選パーティーは全ルート見て回らないといけないから、ボス部屋へのルートの途中でも引き返す。なのでどうしてもそこで差がつく。とはいえリーンベル家も結構ガッツリ探索してたとは思う
880:名無しの冒険者
宝箱がミミックか罠ばっかりだったけどな。さすがクアーク家、そう簡単にアイテムばら撒いたりしない
881:名無しの冒険者
「冒険者の経験のために」とか都合の良いこと言いつつ罠ばっかりにして、アイテム代ケチってそう
882:名無しの冒険者
怪しい宝箱を全部回避してたから、リーンベル家は探索面でも優秀な人材が揃ってるんだろうな
俺はボス部屋の両開きの扉を押して中に入った。すると勝手に扉が閉まり、閉じ込められたことを直感する。といっても俺が閉じ込められたわけじゃないので焦りは感じない。むしろワクワクする。
ボス部屋の広さは学校の体育館くらいで、これはダンジョンのボス部屋として一般的な広さだという。だけどここは高さが全く違う。
見上げても天井が見えないほどに高く、仮に上から何かが降って来たら、重力による加速がとんでもないことになりそうだ。
床や壁は氷でできており、ところどころ崖のように高い段差があったり、180センチに設定した身長よりも高い岩のような氷が地面から突き出していたりと、戦いにくそうな地形になっている。
俺が右手に片手剣を構えると、突然地響きがして20メートルほど先の地面が広範囲に大きく盛り上がった。
それはみるみる高くなり、瞬く間に富士山かよってくらい大きな二足歩行モンスターが姿を現した。
今は一人称視点でプレイしているため、本当に目で見ているかのようでとても臨場感があり、モンスターを見上げるためにコントローラーを操作する必要があった。
883:名無しの冒険者
ほう、アイスゴーレムか。Cランクボスだな
884:名無しの冒険者
なんかトゲトゲしてて氷山みたいだな。強いの?
885:名無しの冒険者
まあ強くはある。デカいからパワーあるしゴーレムだから硬い。でもやっぱり火属性が弱点だから、その辺の対策ができてれば苦戦はしないはず
アイスゴーレムか。もちろん俺も知っている。属性ボス一覧で見たことあるからな。
モンスターとのバトルにスタートの合図なんて無いので、俺はコントローラーのスティックを前に倒し、剣を構えたままダッシュでモンスターとの距離を詰める。
アイスゴーレムの体長は横5メートル縦20メートルほど。この手の相手はまず足元を狙って体勢を崩す。その後で頭部に集中してダメージを与える。
俺は火属性の片手剣で右足のすね辺りを斬りつけた。するとガキン! という鈍い音とともにコントローラーが振動した。
(おおぅ……、こんな機能まであるのか。本当にゲームみたいだな)
イケメン操作キャラクターも、反動で体が少し後ろに持っていかれていた。
つまりゴーレムが硬くてダメージが通っていないということだろう。
886:名無しの冒険者
あー、やっぱりか。いくら火属性とはいえあの武器じゃ通常攻撃は効かないだろうな
887:名無しの冒険者
じゃあ何が効くんだ?
888:名無しの冒険者
一番は火属性魔法だな。ゴーレムをデカい氷だと考えて、魔法で溶かすイメージだ。武器で攻撃するならハンマーなどの打撃系の武器が効果的。そっちはとにかく全力でぶっ壊すイメージ(笑)
889:名無しの冒険者
ゴーレムをデカいハンマーでぶっ壊すって、めちゃくちゃ気持ちよさそうだな(笑)それで何か商売できるんじゃないか?
操作キャラクターが攻撃を跳ね返された反動で動けないわずかな隙をついて、アイスゴーレムが長い両腕を振り上げたのが見えた。
その両腕はアイスゴーレムのひざ辺りまでという長さで、パンチされた時のリーチが長いため俺は避ける準備をする。
ところが予想とは裏腹に、その両腕は地面に叩きつけられた。地鳴りのような音が辺りに響く。
(攻撃をミスったのか? ならばカウンターを狙って!)
それとほぼ同時に俺はコントローラーをしっかりと持ち直して、コンボ攻撃のコマンド入力を試みた。
するとその前にまたしてもコントローラーが激しく振動して、俺の手にもその感触がハッキリと伝わり一時的に操作不能になる。
画面の中での視界も揺れており、ゴーレムが両腕を地面に叩きつけた衝撃によるものだと理解した。
どうやら地震のようになって足を取られているらしく、俺がコントローラーを操作しても受け付けない。
890:名無しの冒険者
あー、ゴーレムの得意な手段だな。尻もちをつかない分まだあの探索者は体幹がしっかりしてる
891:名無しの冒険者
あそこでもし尻もちをついたらどうなる?
892:名無しの冒険者
そりゃあ分かるだろ。地面にぺたんとなってるところにゴーレムのゲンコツが飛んでくる。あとは分かるな?
893:名無しの冒険者
ひぇ……。人工ダンジョンの中であっても絶対に嫌だ
894:名無しの冒険者
俺、筋トレ頑張ることにする
ようやく操作できるようになると、アイスゴーレムの様子をうかがうため少し見上げる。
するとゴーレムの右手が勢いよく振り抜かれた。次の瞬間、視界に猛スピードで飛んでくるものがあった。
それは視界の中でみるみると大きくなり、その速さからかなりのスピードだと理解した。
俺はとっさにガードのボタンを押して、左手に装備した盾を顔の前に出して受けた。
ガキン! という金属音とともにコントローラーが激しく振動し、その衝撃の強さを物語る。
視界の端に砕けた氷が落ちていくのが見えた。おそらく氷の塊を高速で飛ばしているのだろう。砕けた欠片の多さからも、その氷の大きさが分かる。
反撃をしようにも間髪入れずに飛んでくるうえに、顔の前で盾を構え続けているため、不本意ながら自ら視界を狭めてしまっている。
そして氷が盾に当たる度に激しく震えるコントローラー。もしこれが本当に冒険者として戦っているのなら、とんでもない恐怖だろうなと俺は初めて考えた。
次の更新予定
2025年1月10日 20:13
異世界から来た美少女と自宅でまったりダンジョン運営する話 猫野 ジム @nekonojimu
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