第39話 コメント欄とかにアピールする

 少し進むと、通路の途中に宝箱があることに気が付いた。しかし相手は罠に定評があるというクアーク家だ、慎重に行動しなければ。


 まずは見た目。大きさは横20センチ縦15センチくらい。っせえ! サッカーボールかと思ったじゃないか。普通の木製で装飾も特に豪華じゃないし、ものすごくコストカットしてるんだろうなぁ。

 もちろん分かってるさ、宝箱ってのは大きさじゃない。中身だ。



266:名無しの冒険者

なんだあの宝箱、小せえな


267:名無しの冒険者

あんなのよく気付いたな。俺だったら気付かず蹴り飛ばしてる


268:名無しの冒険者

いやいや、いくらなんでも気付くだろ


269:名無しの冒険者

>>266

宝箱は見た目や大きさじゃないのよ。俺はBランクの天然ダンジョンであのサイズの宝箱を見たことがある


270:名無しの冒険者

マジか。で、中身は何だった?


271:名無しの冒険者

知らん。だって大穴の向こうにあったからな


272:名無しの冒険者

ほんとに見たことあるだけじゃねーか



 俺としては当然開ける以外の選択肢は無いが、これはリーンベル家の看板を背負っているといえる。俺の行動ひとつでリーンベル家への印象が変わることだってあるだろう。なので無防備に開けるということはしない。


 俺は宝箱の前で片ひざをついてしゃがみ、鑑定の魔法を使った。すると宝箱が赤く光り画面に『ミミック』と表示されたので、そのまま開けずにゆっくりと立ち上がった。



273:名無しの冒険者

おお、さすがリーンベル家は迂闊うかつに開けたりしないな。多分ミミックか何かの罠なんだろうな。


274:名無しの冒険者

そりゃそうだろ。ミミックの恐ろしさを知らないのか?


275:名無しの冒険者

知らないな。どれくらい強いの?


276:名無しの冒険者

そんなに強いか? ミミックってDランクの腕があればわりと簡単に勝てるはず


277:名無しの冒険者

>>275

俺ら四人パーティーだったけど一匹にすら勝てずに逃げる羽目になったぞ


278:名無しの冒険者

四人でも逃げたって君たち何ランク?


279:名無しの冒険者

Fランク


280:名無しの冒険者

約束された敗走(笑)



 俺としてはあんな小さなサイズのミミックがいたことに驚いているけど、実は俺は宝箱の中に罠を仕掛けたことは一度も無い。その代わり宝箱そのものを炎で包んで、アナスタシアさんに怒られた。


 それにしてもさすがクアーク家。一個目の宝箱からすでにミミックを仕込むとはな。ミミックの強さが分からないけど、ランクに見合わないめちゃくちゃ強い奴だったような気がするな。でも開けなきゃそれも無意味だ。


 ミミックを開けないという小さな見せ場は作れたけど、それじゃまだまだ足りない。

 俺がどうやってエリンの凄さをアピールしようかと考えていると、俺達が作ったダンジョンが映っている画面から、何やら声が聞こえてきた。


「な……なんだこれは!?」


「えっ!? 宝箱が燃えてるの?」


 そこには男女二人ずつの四人パーティーが、炎をまとった宝箱を前にした驚きの声だった。


 そのパーティーとは、リーンベル家とクアーク家以外で唯一同時に探索している、国選パーティーのことだ。


 宝箱自体を炎で包み込むということは、実はエリンのマスタースキルじゃないとできない。だからアナスタシアさんも初めて見た時はかなりビックリしていたんだ。


 でも怒られたからてっきり却下になるのかと思っていたけど、俺が「むしろこれはエリンにしかできないことなんですから、そんなアピールポイントを自分で潰してどうするんですか」と説得してみたところ、見事に採用となったわけだ。


 ほら、実際に国選パーティーのみなさんも驚いていらっしゃる。これは直接国にアピールできたと考えてもいいんじゃないだろうか。

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