第27話 頭がダンジョンのことでいっぱいになる
初見殺しダンジョンを作ると思い立ったはいいが、よくよく考えるとダンジョンなんてほとんどが初見なんだから、わざわざ差別化しなくてもという気がしてきたぞ?
「例えばなんだけど、属性ダンジョンとかはどう?」
「属性ダンジョンですか?」
「そう。例えば炎のダンジョンってのがあるとして、そこには火属性のモンスターしか出てこないとかだと、特徴的ということにならないかな」
「あっ、そういうことですね。確かに天然ダンジョンにもそういったものがありますよ」
「具体的には?」
「えっと、火属性・氷属性・風属性・雷属性・土属性などのダンジョンですね」
水属性じゃなくて氷属性なんだな。俺としてはその二つは別だと思ってる。氷だと火で溶けるから、火を消すなら水だよな? だから火属性の弱点は水属性だよね? なんて思ってしまう。
でも水イコール氷でもあるわけだから一緒といえば一緒だし、違うといえば違う。あぁー、もう訳わからん。こういうのは深く考えないほうがいいな。
「人工ダンジョンにはそういうのある?」
「ありますね。人工ダンジョンはいろんな事態を想定してありますから」
そりゃそうか。属性ダンジョンなんて誰もが思いつきそうなことだ。それに冒険者にシミュレーションしてもらうという人工ダンジョンが存在する意味を考えると、むしろ無いほうがおかしい。
「それなら特定の系統のモンスターしか出ないとかはどうだ? アンデッドダンジョンとかスライムダンジョンとか」
「それもありますね。他にもゴブリンダンジョンとかドラゴンダンジョンとかありますよ! ドラゴンダンジョン、凄いですよね!」
なぜか嬉しそうなエリンだけど、ちょっと分かる気がする。ドラゴンといえば地球では空想上の生き物。そしてカッコいいイメージがある。もしかしたらどんな願いでも叶えてくれたりもするかもしれない。
そんな存在がわんさかといるんだから、圧巻の光景だろう。多分属性ごとに赤や青や緑なんかで色分けされてるに違いない。
「さすがにドラゴンダンジョンは天然ダンジョンだけだよな?」
「いえ、人工ダンジョンにもありますよ」
あるのかよ……。そんなヤバそうなものを作れるだなんて、ダンジョンマスターってとんでもない人達じゃないか。
それにしても困ったな。一体どんなものを作ればいいのやら。もういっそのこと、入った瞬間に頭上から大岩が降ってくるとかでいいんじゃないか。
ダンジョンに入ってすぐ上を見上げる人なんていないだろうから、初見殺しということにもなるし。いやダメだ。それだと意味が無さすぎる。
なんてことを考えているうちに深夜になったので寝ることに。いつものようにベッドはエリンに譲り、俺は布団で寝る。
エリンの服装は人気のもこもこ素材のパジャマだ。ピンクと白の色彩をしており、まるで着ぐるみのよう。
二人で何気なくスマホで検索してる時に、エリンが「これかわいいですねっ!」と目をキラキラさせていたので、俺が「ほしい?」と聞くと「はいっ!」と即答された。
だったらそりゃもう買うしかないよねってことで買ったものだ。
「マスター、どうですか? 似合ってますか?」
ベッドに座り両手を広げて、俺に感想を求めてくる。ネットで買った弊害なのか、サイズが大きいようで少しダボダボしている。
「うん、かわいい」
「えへへ、褒められちゃった」
自分でも驚くほど自然にかわいいという言葉が出た。きっとエリンなら何を着ても似合うだろうな。
次の日の仕事中はずっとダンジョンのことが頭から離れなかった。もちろん仕事は本気で取り組んだが、どっちにしろ帰宅時間が変わるわけじゃない。
そのおかげかどうかは分からないけど、一応の案は出た。でもそれがいいものなのかどうかは、実際に探索してもらわないと判断できない。
またゲームみたいにキャラを作ってコントローラーで操作してもいいんだけど、やっぱりできれば生身の人間に探索をしてもらいたい。
(となると、あの人しかいない)
もはやルーティンとなった、二人で夕食をとった後のダンジョン作り。それを一週間ほど繰り返し、一応の完成までこぎつけることができた。
「エリン、見えてるか? 私だ」
「お姉様っ!」
絶妙なタイミングでテストプレイヤーがやって来てくれた。
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