第2話
お父さんに連れられて、剣の稽古をお弟子さんにつけているのを見た翌朝、「私も剣のお稽古したい!」とお父さんにねだってみた。
お父さんは、興奮した様子で「ふーちゃんと稽古…楽しみだな。早く行こう。すぐ行こう」と私は稽古場に連行させられる。
それから、お母さんが食事に呼んでも、私が「お母さんがよんでるよ?」と言っても「いや、今は稽古中だ」と話を聞いてくれなかった。
そうこうしていると、お母さんが怒った様子で稽古場にやってきて、「あなた、いつまで続けるの?ご飯が冷えるのですが?」と私たちを呼びにきた。
どうしてだろうか、顔は笑っているはずなのに怒っていることが伝わってくる…。
怒ったお母さんは、怖かった。
剣術の稽古は、まずは素振りを行うことから始まり、並行して私は、独自に肺活量を鍛える特訓をしている。
素振りは、基本の形を覚えるために必須らしいからしょうがない。
なぜ肺活量を鍛えるかというと、私がお父さんとお弟子さんの稽古を見ている時に気がついたことがあったからである。
お父さんには、一日素振り100回を目の前でするように言われている。少しでも型が崩れたら、すぐに指摘される。
ずっと見られているので、剣を振っているだけなのに緊張して時々緊張の糸が切れて笑いそうになってしまうのだが、そのような状況になるとお父さんはすぐに「ふーちゃん、余計なことは考えない」と注意されてしまう…。
余計なことを考えているから笑いそうになっているのではなく、笑いが漏れてしまうのは、緊張と弛緩の問題なので仕方ないと思うのは私だけなのだろうか?
その後、怪我防止のために柔軟を行い、それから歩法を教わる。というのが今の稽古の一連の流れである。
この後は、お弟子さん達の稽古もあって私だけに構っていれないようなので、一人で勝手に練習している。
勝手に練習してはいるが、変な癖はつかないように、正しい型通りに剣を振るえるように気をつけている。
そういえば、この世界ではいわゆる銃刀法という法律などはなく、むしろ自衛のために武器を持つことが推奨されている。
それは、基本的に都市部は安全であるが、イレギュラーが起きることもあるし、田舎では魔物が外に出てくることある。
また、ダンジョンが出現したことで多くの人が亡くなったことも理由の一つだろう。
一方で、武器を所持することが認められていることもあって、治安は前世ほど良いとは言えず、時々テロ紛いな事件が起きているらしい。
稽古を始めてから一週間が過ぎた頃だったかな?その日を境に私は魔法が使えるようになっていた。
どのようにして使えるようになったのか?などは覚えていないしわからない。
魔法を使うことは前世から想像していたことであったし、魔法がこの世界に存在しているのは知っていたので、使えるようになったこと自体は特に驚くようなことはないはずなのだが、実際に使えるとうれしさのあまり騒ぎすぎてお母さんに怒られた…。怖かったです…。
魔法が使えるようになってから私は、稽古中も魔法の練習をするようになった。
それからわかったことがあるのだが、私は光と氷の属性に適性があるが他の属性は使える気配すらなかった。
気になったので、「お母さん、魔法の属性には相性があるのですか?」と聞いてみると、「ふーちゃん、魔法には人それぞれ相性があって、得意な属性が決まっているのよ?」と教えてもらったが、話を聞いているうちに多くはないが全属性に対して高い適性がある人もそれなりにいるようだった。
私は、特に光魔法に適性があるのが嬉しくて飛び跳ねていた。
私は聖女系の魔法を使うヒロインが大好きなので理想の聖女ちゃんを演じられるように光魔法の修練をこれからも積んでいきたいと思う。
せっかく光魔法を使えるのだから私は、私のためだけの理想の聖女ちゃんになりたいのである。
それは転生したら女の子になっていて、さらにこの世界には魔法が存在しており、魔物やダンジョンといったファンタジー要素も存在するので、私はこの世界で私のために聖女ちゃんになれたらいいなという願いから始まった。
最初はただ漠然とその願いが叶えば良いと思っていただけだが、実際に魔法が使えたり、魔法適性的にも不可能ではないとなれば目指してみたくなるのは、別に不思議なことではないと思う。
そういうわけで、私は聖女ちゃんを演じられるようにこれから頑張ることにする!
それから、両親が揃っているときに、「私ダンジョンに行ってみたいです!」と伝えることにしたのだが、そこで返ってきた答えは、「ふーちゃんをダンジョンに行かすことなどできない。どうしても行くというならお父さんを倒してからいきなさい」とテンプレのような回答だった。
アニメなどで、「どうしても先に進むというならば俺を倒してから行け!」というシーンがあるが、これは私が好きな場面の一つだった。
リアルにこれが体験できたことが嬉しかったこともあり、「うん、わかったよ、お父さんを倒して私ダンジョンにいくんだ!」と特に何も考えずに言っていた。
後になって考えてみると、お父さんを倒さなくても、実力を認めてもらえれば問題ないはずだし、仮に道場を継ぐのだとしたらダンジョンに潜って魔物と戦うことは今の時代においては必須のことだろうと思うし、そもそも私が演じたいの聖女ちゃんだし…なんて思ったりもした。
考えれば考えるほどなんでこんな約束しちゃったんだろう?と一度体験してみたかったシーンを目の前にして勝手に盛り上がっていた私を責めずに入られない。
とりあえず、後悔していても時間が無駄なのでお父さんを倒す方法を考え始めた。
どうしようかな?お父さんは歴史がある道場を継いでいるだけあって、若い頃はPTを組んでダンジョンで魔物と戦っていたり、他の道場に乗り込んで道場破り的なことをしていたらしい。
この話をお父さんから聞いた時は、何そのアニメ展開と吹き出してしまった。
現代において道場破りとか…何それ、面白い!と思ってしまう私がいた。
将来、お父さんに習って私も道場破りに挑戦しても良いかも?なんて思っていたりする。
そんな感じで、ずっとお父さんについて考えていたが、わかったことがある。お父さんは私が好きだということである。
急に何を言い出すのか?と思うかもしれないがこれは、お父さんから一本をとるために必要なことだと思う。
お父さんは、私の間合いや型を熟知している。それは、考える必要もなく当たり前のことかもしれないがお父さんから一本とるために必要な認識だと言えるだろう。
人間の思い込みは怖いものであり、ずっと見ていて知っているからということで先を勝手に予測することがある。
その予測が本当に正しいかどうかもわからずに…。
剣の間合いなどはまさに同じことが言えるだろう。
剣の間合いを毎日見て既に知っていたら、その知識をもとに私と戦うであろうことは想像に易い。
だから、普段の稽古では余裕を残して全力を出さないようにしようと思う。
練習では全力を出した方が、その練習の質が良くなるのは間違いないが、この際、剣の練習の質は考えないことにする。
そうして、それなりに時間をかけて誤った間合いと癖をお父さんに覚えてもらうことにする。
剣の鍛錬では、お父さんはお弟子さんが来る前に私の稽古をつけてくれているのだが、それ以外の時間をお父さんが見えない場所で稽古をしていくことにした。
そのことをお父さんに伝えると、泣きそうになっていた。
あんな条件をつけてくるからしょうがないだろうと思い無視したが…。
それから、何かにかけてお父さんは私に絡んでくるようになったが「つーん、お父さんなんか知らないです」と言って逃げ回っていた。
それから、魔法について学ぶため「お父さんには言わないでください。
「約束ですよ約束!」とお母さんの了承を待たずして勝手に魔法を教わる約束を結んだが、お母さんは笑顔で「しょうがない子ですね。一緒にお勉強しましょうか?」と言って教えてくれた。
それから、魔法の勉強はとても捗った。
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