動画の時代に見つけた、文字の魅力
星咲 紗和(ほしざき さわ)
本編
ここ最近、私にとって「文字」が以前にも増して魅力的な存在になってきました。動画は視覚的に情報を一気に伝え、瞬時に感情を揺さぶる力がありますが、そんな便利さにも関わらず、何か物足りなさを感じるようになったのです。かつてから映像作品を頻繁に見ることは少なかったものの、特に最近、心に響く動画が少なくなってきた気がしています。SNSやストリーミングサービスが普及し、膨大な量の映像コンテンツが日々流れてくる時代において、私の中で「文字」の存在が再び大きくなりつつあるのです。
映像は、目の前に広がる世界をそのまま伝えてくれますが、どこか想像力を使う余地が少ないと感じることが多くなりました。情報が過剰に与えられると、自分でその世界を作り上げる余地がないと感じ、心が満たされないのです。動画の中のストーリーは瞬時に理解できますが、それと同時に、自分で物語を考えたり、登場人物の心情を想像したりする余地が削がれる気がします。そんなとき、文字による表現の奥深さに改めて気づかされます。
文字は、一見シンプルで平坦なものかもしれませんが、読み手の想像力によって無限に広がる力を持っています。一つの場面や感情を表現する文章は、読み手の解釈によって千差万別の意味を持つことができ、そこにこそ文字の真髄があるのではないかと思います。私にとって、文字が持つこの「余白」が、想像力を刺激し、自分だけの世界観を構築する楽しみを提供してくれるのです。
この変化は、執筆をしている私にとっても良い兆候かもしれません。文章を通じて自分の思いを表現することが、以前にも増して楽しくなってきました。特に、文字による表現は、読む側に委ねられる部分が多く、読み手自身の経験や価値観が反映されることで、より深い理解や共感が生まれることもあります。文章を書くことで、私自身も新しい発見をすることが多く、またそれが他の誰かに伝わることで、さらに新しい解釈や感想を引き出すことができるのです。
ショート動画のような短時間で消費されるコンテンツは、多くの人にとって手軽で便利なものかもしれませんが、私にはあまり刺さらなくなりました。一時期、私も自分で動画を撮って発信しようと考えたこともありましたが、今振り返ると、その決断をしなくて良かったと思っています。自分が本当に伝えたいことや感じていることは、どうやら文字を通じて表現したほうがしっくりくると感じるからです。
文字の世界は、映像のような瞬間的なインパクトはないかもしれませんが、その分、時間をかけてじっくりと理解し、感じ取る楽しみがあると感じます。文字を通じて広がる世界には、映像では表現しきれない深さと自由さがあります。読者が一字一句に込められた意味を噛み締め、自分なりの想像を重ねることで、文字の持つ豊かな表現力が一層引き立つのです。
最近では、読書の時間も増え、さまざまな物語やエッセイから新しい刺激を受けています。読書は、他者の視点や経験を疑似的に体験することができ、自分の中に新たな発見や視点をもたらしてくれます。また、本を読むことで、言葉の持つ力や美しさにも改めて気づかされ、自分の言葉選びにも影響を受けることが多々あります。文章は、単なる情報伝達の手段ではなく、感情や思考を共有するための重要なツールであり、その可能性は無限大です。
こうして文字の世界に引き込まれている自分がいることに気づき、これまで以上に執筆に対する意欲が湧いてきています。動画が溢れる時代にあっても、私は文字の持つ奥深さと自由さを大切にし、これからも文章を通じて自分の考えや思いを伝えていきたいと思っています。結局、私には「読む」ことが一番合っているのかもしれません。
このエッセイを通して、私と同じように、動画の速さや視覚的な魅力に満足できないと感じている人が、文字の魅力に目を向けるきっかけになればと思います。動画から離れ、ゆっくりと文字を味わうことで、新たな発見や心の豊かさが広がるのではないでしょうか。
動画の時代に見つけた、文字の魅力 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
不安症な私と、九谷焼のちょっとしたお話最新/星咲 紗和(ほしざき さわ)
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 20話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます