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__そして、かれこれ二時間以上が経過。

 


気付けば図書室内はほんの数名ぐらいしか残っておらず、時刻を確認すると午後七時を裕に超えたところ。


窓の外を見ると既に空は暗くなっていて、今日はこれで切り上げようと私は教材を鞄にしまい図書室を出た。



それから、昇降口がある一階まで戻ると既に部活は終わっている時間帯なので、中は人気がなくがらんとしている。


思いの外長居してしまったので、今日は迎えに来てもらおうと、私はポケットからスマホを取り出し、電話をかけようと画面ロックを解除した時だ。



「……あ、そんな。いけない人ね」


何処からか聞こえてきた女子生徒の声。

しかもその声色が妙に色っぽく思わず顔を上げてしまう。


「あん、ダメ。もし誰かに見られたらどうするの?」


暫く聞いていると声の色味が段々濃くなり、何だか嫌な予感がしてきた私は、スマホをポケットにしまってから発信源を探すために校内を見回す。


まさか、こんな場所で不純異性交遊を?


そうとしか思えない話し声に、副会長である以上それを見過ごすわけにはいかず。

私は必死になって探していると、階段下の薄暗いスペースに二つの人影を捉えた。


そして、近付いて注意しようとした直後。


そこには予想外の人物が居て、体がまるで石化したようにピタリと固まってしまった。



「九条君はキスがとてもお上手ね。これも倉科さんのお陰なの?」


「美月にはまだ早いよ。だから、こうして練習相手になってくれるのは助かる」


「まあ。もはや練習する必要なんてないわ。あっちの方も相当なお手並みだったのに」



これは夢だろうか。


今私の目の前で、知らない女子生徒と舌を絡ませ熱いキスを交わしているのは、本当に亜陽君なのだろうか。


挙げ句の果てに、女子生徒のシャツは下着が見える程はだけていて、そんな露になった豊満な胸を亜陽君は楽しそうに弄んでいて。


正しく予想していた通りのことが目の前で行われていて、そのお相手が私の婚約者だなんて。



……嘘だ。


何かの間違いだ。


だって、亜陽君は常に私の事を考えてくれて、優しくしてくれて、愛してくれている。


今朝だってはっきり“大切だ”って言ってくれたのに。


そんな亜陽君が知らない人とこんな淫らな関係を結んでいたなんて、そんなこと絶対にあり得ない。



そう叫びたいのに。

その女の人は誰なのか一刻も早く問いただしたいのに。


あまりの衝撃的過ぎる光景にショックで声が出てこない。


終いには体が異常なくらい震え出し、このままここに居ると意識を失いそうで、気付いた時には私は全速力で昇降口へと向かっていた。

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