初恋に花束を
橋本衣
第1話 (桜) 変な関係性の始まり
グツグツグツ
「そろそろ完成しそうだな」
「ぁ、そういや、アイツこの時間のテレビ見ろって言ってなかったけ?」
そう呟きながら手元のお玉を置いて、火を止めた後、俺はリビングに向かってリモコンでテレビを付けると、
『人気アイドルグループ“カラフルブーケ“の皆さんでーす!』
『『『『『『どーも!カラフルブーケです!』』』』』』
そうテレビ、音楽番組の司会者がそう言って俺は一瞬時が止まった。
「、、、、は?はっ?、ちょっと待ってから生!?はぁ?マジかよ、アイツ、当日に言うとか、事前に言えよ、、はぁ、」
『続いてはカラフルブーケの皆さんです。カラフルブーケの皆さんは今年で結成7年、特に10代〜30代の方々から人気ですが、世代問わずその人気は収まる事を知らないぐらいですね』
そう司会者が言うと司会者から近い男がマイクを持って喋る。その男は爽やか系イケメンで優しそうな雰囲気を纏っている。
『そうですね。嬉しい事に色んな世代、性別問わず応援されている事は本当に感謝したいですね』
『それでですね、カラフルブーケの皆さんは中学高校からの付き合いなんですよね?』
『そうですね。俺と
『だね〜、仕事で一緒になったりする事多かったりしたし』
『休日もいつの間にかこの6人で一緒だったりするし』
『分かる分かる。性格違うけどなんか共通点あるし、意気投合したし』
『そうなんですね。
『はい、恋愛映画ですね。新人サラリーマン役で趣味で自作で作った歌をSNSに投稿しているところから始まる物語で、歌を通して知り合ったり、歌で繋がった恋がある物語です』
『俺自身初めての社会人役だったので、周りの社会人役したりしてる人や、メンバーに聞いたりして役作りをしたりしましたね笑、初めての事だらけで緊張したりしましたし笑』
『そうですか。それでは皆さんには映画の主題歌にもなった新曲を披露して貰います』
『カラフルブーケの皆さんで“この恋の歌を“です』
そう司会者さんが言ったら場面が変わって歌い始めた。俺はそんな場面を見て少し引いていた。
「うわぁぁぁ、何あの、笑顔、貼り付けたかの様な、、、、それに照れ顔、絶対に演じてる訳じゃん〜!」
「な〜にが、緊張しましただ!椿君は緊張のきの字もないぐらい、緊張した事ねーのに!本当!外面だけは良くてなんでバレねーんだろ」
何て文句を言いながらいつの間にか持って来ていたお茶を啜る。少し緩くなってはいるが猫舌なのでこっちの方が良い。
俺の名前は
暫く番組を見てのんびりしていて再び歌番組のチャンネルを付けたら、終わっていた。
「、、、、今何時?」
そう呟きながら時計を見ると8時半になろうとしていた。俺はそれを見て「ヤバッ」って呟いた後、すぐに自室に駆け足で向かい、入ったらクローゼットを開ける。開けたら目の前にかけてある服を手に取って今着ている服を脱いでそれを着る。
「ウィッグは、、、、ロングでいっか」
そう言って手に取ったウィッグを慣れた手付きで被って付け、ナチュラルメイクをしてスマホで時間を確認したら、部屋から出て玄関の方に向かう。
何故、俺が女装を知るかって?それは俺が本当に知りたい事だ。
何て思っていたら、鍵音がして扉が開く音が聞こえそちらに目をやる。
ガチャ
「
帰って来た男こと、
「、、、、50点、後、すぐにご飯食べるから」
ガチャ
そう言って自室に入っていく後ろ姿を見て俺は一瞬止まったがすぐに急いでキッチンに戻り、
「、、、、50点って何?!前回は45点だったけどこの5点差ってなんだよ!?てか、何で俺女装なんかしてんだよ〜!」
「まぁ、しないと暮らせないんだけど〜!!」
早口&小声で言いながら火をかけ直し叫ぶ俺。
何で女装をしているのか、そして何であんな男、、、、いや人気アイドル咲野椿と暮らしているのか。事の発端は、約3ヶ月前、、3月の中旬の事、、、、
・
・
・
・
・
・
夕飯食べ終わって部屋に戻ろうとした時、父に話しかけられた。その顔は深刻そうな顔をしていた。
「
「、、、、何?ママとパパ、そんな改まってきっちりして」
「良いから、座って」
「そうよ」
両親の顔の深刻さの圧力で俺は黙って座る事にした。するとパパは少しの沈黙の後、口を開けた。
「、、、、、、、、お父さん、転勤が決まっちゃいました」
「北海道らしいのよね」
「、、、、、、、、、、、、は?」
父の言葉に俺は言葉を失ってしまい、そのまま固まってしまうぐらいの衝撃が俺を襲った。すると、沈黙を破るかの様に母が喋った。
「だから、桜はお父さんの転勤先に着いて行くか、このままこっちで暮らすかってなるんだけど、どうする?桜転校する?」
「嫌なら、1人暮らしは危ないから、誰かと暮らさないと、それは桜が探しなさいな」
と言う言葉の後の会話はイマイチ覚えていないし、気付いたら寝ていて次の日になっていたぐらい衝撃だった。
俺は起きてすぐに、新品のノートを取ってシャーペンを手に取り、知っている限りの親戚の住んでいる県と市を書く。
カキカキ
「、、、、ヤバイ、コイツ以外同じ県と市に暮らしてる人は居ない。何で姉さん達県外の大学進学したりして県外で結婚してんだよ〜、どうしよう、コイツと何か暮らしたくない、けど1人暮らしは無理だし、、、、ぁあ!もう!嫌がってたら出来ないし!断られても、受け入れて貰えるまでは家に居座れば良いだけだし!」
書き終わってちゃんと見たら1人しか同じ市に住んでない事に気づいて絶望しながらも意を決して、財布とスマホを手に取ってその1人の家へとバスに乗って向かう。
「行って来まーす」
・・・・・・・・・・・・
ポチポチポチ カチッ ピーンポーン ピッ
「、、、、はい?」
「ぁ、椿君、桜だけ 「さような、」 待って待って!最後まで聞いて!じゃないと伯母さんに意地悪された事言うけど!?」
「、、、、チッ 分かったよ。そこじゃなんだし、入れ」
ピッ
「ありがと (本当、意地悪!まぁ、でも伯母さんを出せば、言う事聞くから、ヤッタネ!」
ウィーン
そう椿君こと、咲野椿は俺の母方の従兄で従兄弟以外では外面が良いのに、俺達従兄弟達には意地悪で毒舌、特に俺に特段意地悪である。椿君が俺の従兄だって知ってるのは親戚と限られた友人と椿君の所属するグループのメンバーとマネージャーぐらいだ。本当、積極的に会いたくないけど、コイツぐらいしか頼れねーし、今は、今はね?
何て、考えながらエレベーターで10階まで上がり、1004号室の扉を開ける。
ガチャ
「よぉ、桜、素早く要件言って帰れ」
開けるとすぐに椿君仁王立ちで俺の方を見下ろした様な顔で俺を見ていた。俺はその威圧感と冷めた目で見られてちょと硬直してしまいすぐさま姿勢を正した。苦手なんだよね〜、あの目で見られるのは昔からずっと苦手だった。支配されそうで怖くて俺は心の中で皇帝眼って呼んでる。
「、、、、、、、、その、聞いてないと思うけど、パパ北海道に転勤する事が決まってね」
「ふぅん、叔父さんが、それで?何、転校すんの?」
「されそうなの、そのあの、《椿君の家に居候させて欲しいなぁ〜、何て》」
「何?ちゃんと言ってくんねーと、分かんねーんだけど?」
「〜〜〜!!だから、椿君の家に居候させて欲しいんだけど!!?」
「って、言いたかったんです」
「、、、、は?居候?」
「、、うん、だって転校したら友達と気軽に会えなくなるし、それに折角高校楽しく生活してて、それで、嫌だったら、その」
俺がそう言うと、椿君は深く悩みながら考えた後、深い溜め息をして俺を見たかと思えば、
「、、、、、、、、はぁぁ(深い溜め息)、良いよ。お前の事だから、断ってもしつこくこの家に居座りそうだしな」
「後、衣食住などの金の保証は俺に任せろ。無駄にお前から取ったら、母さんから色々言われそうだし」
「良いの!ヤッタ!ありがとう!椿君!」
まさかの一発OKで喜んでいたら、俺に近づいて来て、その顔は真顔で目は皇帝眼だった。少し怖くなり俺は後ろに下がったらそこは扉で頭が付いたと思ったら椿君は俺の頬を左手で摘んで右手は、
ドンッ
「ふへっ?」
「ただし、保証する代わりにぃ、、、、」
「きゃわりに?」
「家事全部やって貰う事と、俺の言う事を聞く事、それと俺の世話出来る?」
「出来なかったら、この話は無しだけど?出来るよね?」
「コクッ うん(断ったら、転校、断ったら、転校)」
俺がそう言って、右手が扉から離れて摘んでいる力が弱まって離れるかと思ったら、再び力が入って、右手も扉に触れたままになった。そして、先ほどの同じ様に皇帝眼で俺を見つめたかと思えば、笑みを浮かべたかと思えば、
「最後に、決まった日に女装しろ?出来なければお前の恥ずかしい写真をばら撒く。分かったか?」
「、、、、、、、、ひゃい。分かりまひた」
「フッ ニヤリ(弱みを握った事を喜んでいるニヤけた顔)」
そう言わざる負えない状況だった。決して俺は悪くない。悪いのは、この椿って野郎だ!何て心の中で愚痴ってから、家に帰った。家に帰ったら両親に椿君の家にお世話になるって伝えてその1週間後に椿君の家に暮らし始めたんだよね。
・
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これが、全ての事の発端で変な関係性の始まりの話でもあります。アイツは人気アイドルの前に俺の従兄だ、いつだってアイツの弱みを世間に出せるがそれしたら色んな各所に迷惑かけるからやらないだけ、それにもし意地悪されても伯母さんに言えば万事解決。
「《いつか必ずアイツの弱みを世間にばら撒いてやる》」
何て考えながら小声で呟いていると背後から、
「ガシッ ((右手で桜の右手首を掴む))」
「なぁに、俺の悪口言ってんの??」
「っ、椿君、ぃ、居たの?」
「おう、さっきから居たけど? ズズッ((喋りながら掴んでいる桜の右手首を動かしてお玉から味見する))」
「へぇぇ、気付かなかった〜」
こっわ!何なの!?何で気配消して俺に近づいて来てんの!?めっちゃ怖いわ!近づくなら気配満載で来いよ!!
そう頭の中で叫んでいると、突然右手首が引っ張られ、その反動で椿君の体にスポッと収まる感じになった。
「へ?椿くっ!」
チュッ ((桜の首元にキスをする))
「ピッ‼︎ カァァ/////ドキドキ」
最後まで言おうとしたらいきなり首元にキスをし始めた。最初、唇にキスされた時離そうとしたら「、、、、俺の言う事は聞くんだろ?なら、キスした時は離そうとすんな」、って言われてから、離そうとしたら機嫌がいつもより悪くなるから、やりにくい。
すると、数分充分満足したとか、右手首を掴んでた手を離してリビングに向かった。
「早くご飯持って来いよ」
「、、、、ぅ、うん/////(毎回、これやられると変にドキドキするし顔赤くなるから嫌なんだよなぁ、アイツ無駄に顔は良いから)」
顔の赤みをなくしながら、急いでご飯をよそいで肉じゃがを小鉢2つに入れて、ロールキャベツをさらに移し、事前に作っておいたほうれん草の白和をリビングのテーブルに置く。
飲み物や箸なども置いたら、食事の始まりだ。
「、、、、美味い」
「!、、、、本当、良かった。ロールキャベツはトマト缶で作るの初めてだったから、笑」
「フハッ 笑、そうかよ。こんな事で喜ぶとか子供だな笑」
「ムッ そりゃあ、俺はまだ未成年なので子供ですよ〜だ!(何なのあの笑顔!!)」
一緒に暮らし始めてから分かった事も結構ある。たまに見せる自然な笑顔や優しく接する言動があってか、一緒に暮らす事はまだまだならないけど、超嫌って訳でもない。まぁ、苦手って言うだけで嫌いって訳ではないしな、まぁ好きって訳でもないけど、だけど、、、、
この変な関係性はまだまだ続けられそうだ。
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