第15話

「これで、私の話は終わりです。

 信じて頂けるかどうか、過ぎてみれば、私にとっても夢の様な出来事でした。」


 女は、綿津見の話を身じろぎもせずに聞いていたが、

「それから、どうしたのですか?」


「それから…、私は翌朝浜へ行きました。

 すると、大きな亀が産卵を終えて海に帰ろうとしているところでした。

 亀は、大きな目に涙をいっぱいにためて、私を見ています。

 私のした事は、愚かだったでしょうか。

 碧の本当の姿を見ても、もう驚きませんでした。


 産み落とされたばかりの、つやつやとしたピンポン玉の様な卵を、砂に埋めてやり、もう一つの人間の赤ちゃん位の大きさの卵は、着ていたシャツにくるむと車に乗りエンジンを掛けました。


 しかし、すぐにスタートさせる事は出来なかった。

 私はいつの間にか泣いていました。

 自分が泣いている事に気付くと、ハンドルに突っ伏して声を上げて泣きました。


 何だか無性に悲しく、いや虚しかった。

 碧に私の気持ちが伝わっただろうか。

 伝えたかった。


 私は彼女を、碧を愛していた事に気付きました。

 それが、兄妹愛なのか、何なのか私には分かりません。

 異常と言われようとも、私は碧を愛していたのです。」

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