第6話【神の鑑定士】

ルークは心の中で「神の鑑定士かんていし」というスキルの名前を思い返していた。彼の頭の中には、スキルの詳細が浮かび上がるが、それが一体何を意味するのか、彼には全くわからなかった。


その名称からは何か特別な力を感じるものの、実際に自分が何を扱っているのかをつかむことができない。彼は心の中の混乱を整理しようとするが、思考はまとまらず、むしろ興味が膨らむばかりだった。


しかし、スキルの効果を試すことに興味を引かれ、ふと目の前にいるリサを見つめた。彼女は優しい目でルークを見つめ返しているが、戦争の影響か、どこかその表情にも疲労の色が見える。これまでゴブリンとの長い戦闘の日々を経て、彼女の目の奥には、悲しみと恐怖が宿っているように見えた。


試しに…彼女を鑑定してみるか......。ルークは心の中で、静かに「鑑定かんてい」と唱えた。すると、瞬間、視界にあわい光が広がり、リサの情報が彼の目の前に浮かび上がった。


光の中には、彼女の存在が持つすべての要素が凝縮ぎょうしゅくされているように感じられ、彼の心臓が高鳴った。


名前:リサ

種族:オーガ

年齢:18歳

職業:魔法使い

力:F

魔法力:D

防御力:F

魔防力:C

忠誠心:S

スキル:ファイアーボール


ルークは驚き、口元がわずかに開いた。このスキルは本当に相手の詳細な情報を視覚化してくれるのだ。リサが持つ能力、特に彼女の忠誠心の強さが印象的だった。


彼は無意識に息をのみ、その結果に感心した。リサの強さを知ることで、彼自身の心に芽生めばえた安心感とともに、彼女がどれだけ頼りになる存在かを再認識した。


「どうしたの?」


リサが心配そうに尋ねる。ルークはその問いに少し躊躇ちゅうちょしながらも、リサの優しさを感じ取り、何とか彼女に真実を伝えようとした。


「リサ、『神の鑑定士かんていし』っていうスキルを知ってるか?」


リサは首をかしげ、少し考え込む様子を見せたが、最終的には首を横に振った。


「聞いたことないわ。そんなスキルがあるの?」


ルークは小さく頷いたが、これ以上の詳細はまだ自分でも理解していないため、言葉を濁すことにした。


「ああ…まぁ......そんなところだ。」


その瞬間、ドアが音を立てて開き、二人のオーガが部屋に入ってきた。目の前にいるのは、彼が知らない二人のオーガの青年だった。彼の心の中では、初めて見る彼らがどんな存在なのかを疑問に思った。


「ルーク、大丈夫か?」


一人の青年が尋ね、心配そうにルークを見つめる。


ルークはその声に耳を傾けるが、彼らのことを知らない。その様子を見てリサが笑顔を浮かべながら言った。


「彼らは、あなたの弟よ。もう少し元気を出してあげて。」


ルークは驚き、思わず目を大きく見開いた。「弟?」という言葉が彼の脳裏に響く。


「うん、あなたのことをいつも手助けしてくれる心強い味方だよ。」


リサは二人の青年を指し示す。ルークは改めて彼らを見つめるが、彼の中にはただの好奇心が広がっていく。彼らが本当に自分の弟だということを受け入れられずにいた。


ルークは思い出すように心の中で「鑑定かんてい」と唱えた。すると、再び淡い光が彼の視界を包み、弟たちの情報が浮かび上がった。


次男の鑑定結果

名前:レンジ・オルガノ

種族:オーガ

年齢:16歳

職業:剣士

力:D

魔法力:F

防御力:C

魔防力:E

忠誠心:C

スキル:薙ぎ払い


三男の鑑定結果

名前:ナルカ・オルガノ

種族:オーガ

年齢:14歳

職業:弓兵

力:E

魔法力:F

防御力:D

魔防力:F

忠誠心:A

スキル:回避


ルークは弟たちのステータスをじっくりと評価した。次男のレンジは、剣士として戦うには力がD、魔法力がFとまだまだ未熟で、特に魔法力の低さが気になったが、防御力はCと一応の安定感があった。忠誠心はCとまずまずで、頼りにはできそうだ。


三男のナルカは弓兵としては力がE、魔法力がF、防御力がD、魔防力もFと、戦士としては非常に心もとない数値だった。しかし、彼の忠誠心はAと高く、心からルークのことを支えたいという気持ちが伝わってきた。


リサの提案で、ルークには療養 りょうようの時間が必要だということで、弟たちもそれに従った。


「ルーク、今は体を治してくれ。詳細な話は2日後にしよう。」


レンジは静かながらも切迫せっぱく感のある声で言った。


「2日後に軍議ぐんぎを開く。今は休んでくれ。」


ルークはうなずき、今の状況を飲み込みながらも、彼が今やこの戦士たち―しかも自分の兄弟たちを率いる立場にあることに困惑していた。弟たちが去りかけたところで、ナルカが一瞬立ち止まり、不安そうな目でルークを見た。


ルークは微かにうなずいて返したが、それが弟を安心させるためなのか、自分を納得させるためなのかは分からなかった。

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