#45 思い (2/5)

 翌朝、神主が部屋を訪れる。

 「皆様、おはようございます。天照大御神あまてらすおおみかみ様がお呼びになられています。支度出来次第、本殿へ参られますよう」

 それだけ言うと忙しそうに神主は部屋を後にした。朝支度を進めるが、皆一様に、昨日の戦闘で激しい衝撃に幾度も曝されたせいで、体のあちこちが痛む。中々起きない百花を起こそうと香南芽かなめが奮闘するが、

 「あと五分、と一時間・・・・」

 「なげーよ!ひせりん、ももっち押さえてるから布団剥いで」

 抵抗するも布団を奪われ、一度は体を起こすが目が開いていない百花は寝言のように、

 「あとお風呂入りたい・・・。それと美味しいご飯も食べたい・・・」

 苦笑いをする斐瀬里ひせりは、

 「みんなが我慢してる事、全部言われちゃったね」


 するとどこからか、聞きなれない声がしてきた。

 「風呂ならこの辺りは温泉が幾つもあるぞ!飯は難しいがな」

 思わぬ朗報に百花の目が覚め、

 「ほんと!?ってあれ?今の誰の声?」

 声の主が見当たらず、皆も辺りを見渡している。

 「こっちだ、こっち!」

 窓の方から声が聞こえると、傑は何か思い出したように窓枠に顔を近づけ、

 「少彦名すくなひこな!覚えているか!?」

 傑の視線の先には、手の平に乗るほどの小人が立っていた。

 「おお、お主。わしが叡智を授けた、いつぞやの幼子か!?大きくなったな」

 「あの時は突然姿を消したから、随分悲しんだものだよ」

 「わしは気まぐれに動いておるからな。だが今は違う。大国主命おおくにぬしのみこと分霊わけみたまに言われここへ来ていた。ここで天照様の助力をしていれば、待ち人現るというえにしを見たと言われてな。お主が来たということは、またこれから何か物創りをしろという事なのだろう」


 そこに百花が割って入って来たかと思うと、少彦名を手に掬い上げる。

 「その待ち人はあたしで、温泉に案内するって役目かもしれないですよ!」

 「これ!神を粗雑に扱うでないぞ!娘!そんなつまらん用事であってたまるか!」

 百花の手から飛び降りると、軽い身のこなしで一回転して元居た窓枠に着地すると、

 「ああ、既に耳にしているかもしれんが、湖周辺に逃れている人間達の話で、ちと気になる事を耳にしたもんでな。・・・では、わしは先に本殿に戻る。あまり悠長にするなよ」

 少彦名はツグミをちらりと見ると去っていく。一行は身支度を済ませ、言われた通り本殿へと向かった。

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