第21話森の奥にある家

 ゴールドウィン伯爵家には、子供がふたりいた

 ふたりは双子のようで全く同じ顔をしていた

 そのせいなのか、フレンが鈍感なのかどうかはわからないがフレンは2人のことをひとりの人間だと思っているようだ


 姉と思われる子は、大人しくいつも本を読んでいる

 妹と思われる子は、いつも何かしらチョコチョコと動いて使用人の手伝いをしたりしている

 最初は、伯爵令嬢と分からず使用人の娘かと思ってみていた

 目立たずそれでいて周りの大人の様子をみて素早くそれでいてめだたず大人たちのフォローをするのだ

 それを当時5歳の女の子が・・・・だ。

 よく見ると同じ顔なのだが行動も雰囲気もまったく違う


 フレンはいつも本を読んでいる子がこの家の一人娘だと思っている

 そして、彼女の事を凄く気に入ったようである


 ゴールドウィン伯爵家の人たちはとても気のいい人たちばかりでイワン様はとても居心地が良いのか一泊だけのはずがもう今日で滞在してから3日目になる

 まあ、急ぎの旅でも何か目的のある旅でもないのだからどうでもいいのだが・・・・

 演習場で剣の素振りをしていると例のあのチョコチョコ動き回る娘が森へと走っていく姿が見えた

 だからといって何か思うわけではないのだが、気がついたら彼女の後を追っていた

 彼女は行きなれた様子で森の奥にずんずんと走っていく

 しばらく行くと小さな家があった


「こんなところに家があるのか」


 彼女は入りなれた様子で家の扉を2回ノックするとそのまま自分で扉を開けて中に入っていた

 窓から中を覗いてみると20代くらいの赤毛の女性と彼女が中で笑いながら話していた。

 しばらく様子をみていると道具や籠にいっぱい入った草をふたりでテーブルに出してきてなにか始めた

「草?薬か・・・」

 どうやら薬草で薬を作っているようだ

 あの女性に教えて貰っているのか……


「にゃ〜ん」

 突然隣から猫の鳴き声がしてビクッとしてしまった

 隣を見ると黒猫がちょこんと座ってユリウスをみつめていた

「ああ、お前の家なのか すまなかったな」

 黒猫に謝ってその日はその家をあとにした


 その日から毎日彼女の後を追っていると

 毎日彼女はある程度邸での手伝いが終わると森の奥にあるあの家に向かって家の主であろう女性に色々なことを彼女は教えて貰っているようだ

 明日はもうこのゴールドウィン伯爵領を出発する

 今日で最後の日だ

 何故かその日は、彼女より先に帰る気になれずそのまま見ていると彼女のほうが慌てて帰って行ってしまった


「俺は、なにをしてるんだ…… 帰るか……」

 立ち上がった瞬間

「少年! まあお茶でも飲んでから帰ればいかが?」

 目の前にこの家の主の女性があの黒猫を抱いて立っていた


「ありがとうございます」

 そう言って彼女の家へと入っていった


「まあ、そこら辺座って」


「はい」

 ユリウスは、いつもあの子が座る椅子に腰をかけた


「君、ここの所毎日セシルと私のこと見ていたよね」


「すみません」

 あの子はセシルという名前なのか……


「どうしてみていたんだ まあ、なんでもいいけど」

 コポコポとお茶を入れる音が静かな家の中に響く


「別に…… 何をしているのかと思っただけです」


「ふむ……」

 お茶をユリウスの前に置き、女性はユリウスの顔に近づき彼の瞳をじっと見つめた


「はぁ〜!君 今のままではだめだよ」


「なにが? だめ?」


「魔術のようなものの呪いではない

 そう、言霊の呪縛というようなものか……」

「呪縛……」

 まだ、お互い名前も知らない人から初対面でいきなりハードな言葉をなげかけられる

 ユリウスだった

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