第11話 セシルの嘘
夜の王都の街は昼間とは全く別の顔になる
宝石箱をひっくり返したような煌びやかでそれでいて少し危険な空気をあちらこちらに感じる
歩く人たちも恋人たちや友達同士少し解放感を纏いながらまた昼間と違う雰囲気で歩いている
屋台がある街の中心の噴水のある広場に人だかりができていた
「お嬢様、ほらもう聞こえてきますでしょ あの人だかりの中の真ん中できっとシャドが歌っていますよ」
「凄い人気なのね 全然見えないわ」
「最近歌い出した恋の歌から特に人気に火がついてみんなが集まってくるんですよ」
「でもみんな静かなのね」
「お嬢様だって皆さん歌を聞きにきていますもの」
「あ、でも1番前の方は若い女性が多いですね みんなうっとりしながらきいていますね」
シャドは顔は隠していてもその所作やスタイルから女性のファンがすごく多いと聞いたが確かに頷ける
そうやって見ているとますますユリウス様と重なって見えてしまう
キャーキャー言われているのが少しもやっとした
ん?何?もやっとって?
私達も人垣の隙間を抜けて見えるところまで言った
やはり、前に行くと声がよく聴こえる
一番最初にシャドに会った時と全くちがうような歌で歌い方や感情の込め方がちがうように聞こえた
もっと心に染み入るような切ない気持ちが伝わる……
「これは、本当に恋をしている人でないと歌えないですよね」
「本当にそうだステファニーのいうとおりだ・・・・
もしも、本当にありえないかもしれないけど・・・・
シャドとユリウス様が同一人物だったとしたらユリウス様は今恋をしているのかしら他に好きな人がいて好きでもない私と婚約していたら・・・
しかも政略結婚でも力を下げる方の政略結婚だなんて・・・
そんなのユリウス様あまりにも不幸すぎる・・・・
あの時「無理して愛さなくてもいい」と仰っていたのは、ご自分に愛する人がいるから私を愛せないという事だったのかもしれない
やっぱりはっきりさせないともし、他に愛する人がいるならこのまま結婚してもお互い不幸だわ
結婚したとしても離婚できるようにしないと…と関下こんでいると
「お嬢様おかえりにならないとご主人様御邸に帰って来られるお時間ですよ」
ステファニーに声をかけられた
「そうだわ 早く帰りましょ」そう言って帰りながらも考えた
でも今あの広間で歌っている人がユリウス様なら今ユリウス様自身はどこに行っていることになっているのかしら?
「ねえ、急いで早く帰りましょ」
慌てて帰って見るとエントランスでサマンサにあった
「あらセシル様!こんなお時間にどこにお出かけになられていたんですか!しかもそのようなお姿で!」
といきなり怒られた
「あ、これはね違うのそうお兄様と急にお会いしなくちゃいけなくて・・・・」
と慌てて適当な嘘をついてしまった
「お兄様とおっしゃいますと」サマンサが少し強めに聞いてきた
「サマンサほら魔塔にいる双子の兄よ」
「あれ?おかしいな魔塔にいる双子の兄って僕のことだよね」
と柱の影からルーカスお兄様が出てきた
ええー!!なんでいるのお兄様 それは流石に想定外だわ
「まずさ、セシル・・・嘘はいけないよね ちょっと僕と話しようか・・・」
あ~・・・・ これは滅茶苦茶に怒っている時のルーカスだ
「あ、はいお兄様・・・・ごめんなさい」
「サマンサにも謝って」
「ごめんなさいサマンサ・・・」
「じゃあ、君の部屋に行かせてもらってゆっくり・・・」
とルーカスが話してる途中にユリウス様が帰ってきた
「どうした」
「ユリウス様おかえりなさいませ」
「お留守にお邪魔して申し訳ございません」
「いえ、お兄様いつでもいらしていただいても問題ないです」
「少し妹と話がしたくて」
「ああ、ではまず食事をご一緒にいかがですか」
「ありがとうございます」
「申し訳ございませんが私は着替えて参ります」
とユリウス様は私の前をスッと通りすぎた
その時甘い木の香りがした
あ、この香り・・・
「ほらセシルお前も着替えてから食堂に来い」
「あ・・・はい」
ルーカスに言われ部屋に一旦戻った着替えながら考えていたらどんどん自分の中で疑問が確信に変わっていくのであった
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