第51話  蛇螻蛄

「ねえ、ねえ リル 俺の言ってることわかるようになった?」

 ホクトが俺の顔を覗き込見ながら尋ねてきた


「ホクト〜!!わかるよ! お前の話がわかる」

 思わずホクトをギュッと抱きしめた


 隣で、ブルーがわかりやすくしょんぼりしている


「さあ、次はブルーだぞ! 風の精霊の扉を探しにいくぞ」

 と言いながらブルーの頭をワシャワシャした


 ふと見るとまあるいスツールのような大きな雲が渓谷の間にポッカリ浮かんでいる


「なあ、ヘイロンあの渓谷にポッカリ浮かんでいる雲 あの雲なんなんだ?」


「え?わからない、あんな雲あったっけ?」


「とりあえず今は渓谷目指して行こう」岩場をおり滝に沿って山を降りていく

 中腹まで辿り着いた時、いきなり生温かい暴風が吹いた


 龍の渓谷に向かって巨大な蛇のようなムカデに羽が4つ付いているものが飛んでくる


蛇螻蛄ヘビケラだ!

 ヘイロン 俺たちを乗せて渓谷まで降りてくれ!」


「勿論だ それに早く母さんと子供達そして卵を助けないと!」

 どうやらあいつは俺たちではなく龍の子供と卵が狙いのようだ


 すでに母親ドラゴン達は子供を守るため臨戦体制に入っているものもいる

 しかしハックロンならともかくヘイロンや、母親ドラゴンでは例えここにいるドラゴンで立ち向かっても太刀打ちできないかもしれない


「ダメだ、相手が大きすぎる

 ヘイロン、それよりもお母さん達に子供から目を離すな子供と卵を守って避難しろと伝えてくれ 下手に攻撃すると仲間を呼んでしまう」


 蛇螻蛄ヘビケラは自分が攻撃されたり身に危険を感じると仲間を呼ぶ

 こいつ1匹でもやばいのに、仲間なんて呼ばれたら全滅だ


 すぐに俺の中に感じる聖力を目一杯使い渓谷に結界を張る


 張り終わると同時に、「ドゴ〜〜〜〜〜ン !! 」

 と思い切り結界に体当たりしてきた

 その後も何度も、何度も繰り返す


 いつまでも結界の中にもいる訳にもいけない

 でも、一発で仕留めないといけない 奴の急所を探せ 探すんだ……


「ドゴ〜〜〜〜〜ン !! 」

「ドゴ〜〜〜〜〜ン !! 」

「ドゴ〜〜〜〜〜ン !! 」


「リル! まずいよ結界が崩れる!」


「ああ」ホクトの呼びかけに一言しか返せなかった


 蛇螻蛄ヘビケラが結界に自分の体を叩きつける攻撃が絶え間なく続き轟音と揺れが響く


「リル、焦るな・・・よく見ろ どんなに強い相手も一瞬の隙がある

 その一瞬を見逃すな」


 カリアス師匠の言葉が俺の頭の中で響く

 そうだ、リル焦るな よく見ろあいつの動きを焦らず見るんだ


 蛇螻蛄ヘビケラが結界を攻撃しようと体制を変えようとした瞬間のことだった

 頭の中心、腹の中心、尻尾の先の中心が緑色に光った


「あれだ! おい、ブルー、お前は、風を纏って空を駆けることできるな」


 ブルーが頷く


「あいつの尻尾と腹と頭に緑色の魔石がある 

 普段はわかりにくいが攻撃を仕掛ける瞬間緑に光る

 その一瞬の間に魔石を叩き潰すんだ

 ブルーは尻尾、ヘイロンは腹、俺は頭を攻撃する

 多分こいつの核は頭の部分にある1番大きな魔石だろう」


「マシロ!出てこい」マシロが出てきて大きくなった


「マシロとホクトはここを守ってくれ、マシロお前結界を強化してくれ」

 マシロは俺が小さい頃結界で魔力の暴走を救ってくれた

 1番長い間そばにいるのにいまだにマシロのことが1番よくわからない


 マシロがコクコクと頷く

 なんだか久しぶりにマシロと会話した気分だ


 ブルーとヘイロンと打ち合わせをするお互いの攻撃する方向

 蛇螻蛄ヘビケラへの攻撃をイメージする

「でも、あくまでも現実は頭で描くのとは違うはずだ

 ただ一瞬を逃すな

 3つ同時だぞ 俺達ならできる」


 まだ響く轟音の中、俺とブルーは風を纏う


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