第46話  龍の渓谷

 あの者が、サラフィンとその息子と共にここにきたのは、冬がもう終わりを告げる頃になるだろうか

 最初訪ねてきた時にあの者は銀色の髪に深い蒼い色の瞳を纏っておった


「黒龍ハックロンよ どうかこやつの力になってやってくれないか」


「サラフィン、どうしてそのものはどうしてそのような色を纏っておる

 そなたの真実の色を纏い我の前に立てぬのか

 まずはそなたの真実の姿を晒してみよ」

 リルは、ピアスを外した 

 すると徐々に髪色と瞳の色が漆黒に変化した


「やはり、お主は我が契約者であり我が主人ポーラリスの息子か 」


「リアイアル ラーセル ズメイルインペリアル でございます

 しかし今はリル・ジーザメリウスと名乗っております

 ハックロン殿 我が父上をご存知なのか」


「ポーラリスは、我の血の契約者であり盟友でもある 

 お前がポーラリスとジュリアンがおのれの全ての力を授け守った息子か…… 」


「はい」


「お前が、ここに理由はわかっておる「魔力の解放」だな 

 引き受けない理由はない 

 お前はポーラリスの息子であり我が息子へイロンの命の恩人でもあるのだから」


「え?」


「覚えておらぬか? 

 数年前そこのサラフィンの息子と共にドラゴンの子供を助けただろう」


 リルは、ブルーと目を合わせるとブルーは静かにうなずいた


「ヘイロン」

 ハックロンがそう呼ぶと あの時のドラゴンが現れた


「お久しぶりです リアイアル その節は大変ありがとうございました」

 ヘイロンも、話しができるのか


「ふっ、 リアイアル

 お前 もうお前の使い魔とも話ぐらいできるようになっておるのを気がついておらぬのか・・・

 ああ、まだ鍵が足らぬからか」


「鍵ですか? 」


「魔力を解放する為、鍵を探し風・火・水の精霊を解放しろ

 精霊の鍵が奪われ風・火・水の精霊とらわれておる 

 鍵を見つけて彼らを解放するのだ

 鍵が揃い3つの鍵が合さった時、お前の魔力は解放されるであろう 

 その時までの魔力暴走は、私の力で抑えよう 

 私には完全なる魔力を解放するまでの力はないがお前がその器での力を最大限に放出したとしても魔力の暴走を抑制する力ならある」


 刹那、リルの指輪が粉々に弾け、リルの体から七色の光が溢れ出てきた

 ハックロンがその光に巻き付きながら呪文を唱えると溢れ出てきた光が緩やかにリルの体に収まった


「リアイアル、ヘイロンをその3頭共に連れて行くと良い

 この巣穴の向こうに龍の渓谷があるそこに、精霊の扉がある 

 扉を見つけ精霊と対峙して参れ

 精霊からの認証を受け取れれば鍵を託されるだろう

 ポーラリスの息子よ、その力を自分のものとしろ」


「ありがとうございます ハックロン殿 

 そしてサラフィン感謝しています

 貴殿等の大切な息子と共に行ってまいります」


 リルは、マシロ、ブルー、ホクトそしてヘイロンと共に龍の渓谷へと旅立った


 龍の巣穴といっても巣穴を少し抜けると広大な高原が広がっている

 そこには沢山のドラゴンが居住し穏やかに共生している


「ヘイロン、龍の渓谷はここからだとどの位置になるんだ?」


「高原を抜けるとドワーフの森があるその森を抜けると人間達との共生を拒んだ魔獣がすむ高い山があるその向こうに龍の渓谷があるんだ。僕だったらひとっ飛びで行けるんだが……… 」


「そうしたいのは山やまだが、ハックロンも出発する時言ってただろ行く先々での出来事が俺たちの財産になるって、だからひとっ飛びで行きたいところだが一歩ずつを大切にしようよ」


「わかったよ、俺は上で飛んでていい?」


「ああ、もちろんだよ俺もそこまでは強制しないさ」

 とヘイロンと笑いながら話していた


「あっそうだ、マシロ、ブルー、ホクトお前達も学園じゃないんだから本来の自分の姿に戻っていいぞ」


 そういうとブルーとホクトが本来の大きさになった


「え?? ちょっと待てホクトお前めちゃくちゃ大きくなってないか? 」

 ホクトが1.5mくらいの大きさになっていた

 俺が魔法で変えているホクトの毛並みや流さを解除すると新たな発見に驚いた


「あれ、もしかして、お前クロネコではなく黒豹の幻獣だったのか」

 大きくなって黒くてもしっかり豹柄がよくわかるようになっていた

 ホクトは、自分の力を見せつけるかのように肢体を柔らかくくねらせながらくるりとジャンプした

 ジャンプをした時に、毛先から花火のようにパチパチと火花が散った

 ホクトは、幻獣という名前にふさわしくとても幻想的で美しい本当の姿を解放した


「火属性なんだな

 ホクト今までお前の事何一つわかっていなかったな

 本当にごめんよ 」とホクトの頭を撫でた


 学園生活は、彼等にとってはとても窮屈なものだったのだと改めて感じた

 それ以上に、俺が今まできちんとブルー、ホクト、マシロに向き合っていなかった事、彼等の事をわかっていなかった事に情けない気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいになった


 マシロは? 見てみると相変わらず小さなサイズで俺のフードにすっぽり入って眠っている


 お前がそれでいいなら、そのままでいいよ


 あちこちで寛いでいるドラゴンの隙間をぬって高原を駆け抜けていく

 魔力を解放したせいなのか 

 考えられない様なスピードて自分が走っていることに慣れないのだがとにかく爽快だ

 少しステップを強く踏むと2mは、軽く前に飛んで行く

 この感覚・・・そうだ「北斗」時代にワイヤーアクションした時にこんな風に飛ばされたな

 あの時はワイヤーで身体中あちこち痛かったけど思い出したら笑ってしまった


 今は、もっと自由に、速く走り、高く飛べる

 魔力の暴走を抑えて自分で調整して魔力を貯めなくても一瞬で魔力を使える

 そうは言っても、まだドラゴン達の居住区から出れていない

 そろそろ大きく広い空がオレンジ色に染まってきた


「今日はこの辺で休むか」

 ピューイと口笛を吹くするとヘイロンが降りてきた


 空間収納をあけ、野宿のための道具を出す

 前世で見たアニメでこういうことできたらいいなと思っていたことを、ここでは大体のことができるようになっていると思うと何故かニヤニヤしてしまう

 テントを張り、火をおこし、食事をする

 パチパチと火が弾ける音だけが優しく響く

 空には満天の星空だ「北皇星」が一際、煌めいている


「明日は、ドワーフの森に行けるかな…… 」

 そう言いながらブルーに体を預けるように眠りに落ちた

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