第36話 帰り道 〜ハイネ視点〜

「え? 鍵が、ない ない」

 領地に帰ろうと部屋を出ようとしたら鍵が見つからない

 何故かいつも出ようとすると鍵が見当たらない

 リフィが、私の肩掛けポーチを持ってきた

 そうだ、いつも見当たらなくなるからってポーチに入れていたんだ

 鍵を閉め寮を出ようとしたらもうみんな帰ってしまったようで誰もいなかった


「あ〜あ、リル様、一目見たかったなぁ、ねえリフィ、どうせ遅くなったからお庭お散歩しながら帰ろうか

 雪が積もって綺麗だよ」

 庭をゆっくり歩いていると向こうに銀色の髪が風になびいている


 きゃ!リル様! わわわ、どうしよう

 こ、声かけてもいいかな どうしよう

 そ、そう今回、薬草学で、学年首位取った自分へのご褒美に……

 とわけのわからないこじつけをして思い切ってリル様に声をかけた


「ジーザメリウス様」

 きゃ〜!声かけてしまった


「こちらから、声をかけて申し訳ございません、あの、今から領地にお帰りになられるんですか」


「グライシス嬢同級生で、しかも同寮じゃないですか、気軽に話しかけてくださいよ

 そうなんですわグライシス嬢 今から帰るところで…… あ!今 マシロ俺のフードの中で眠っていて…… 」

 とマシロちゃんをフードから取り出そうとするリル様

 どうも、リル様は、私を熱烈なマシロちゃんファンだと思っているらしい

 マシロちゃんも大好きですが私は、貴方のファンなんですよ〜!と言いたかった


「あ…… いえマシロちゃんゆっくり眠らせてあげてください、ジーザメリウス様お見かけしたのでお帰りになるのかと思いご挨拶できたらと、ついお声をかけてしまいました」


 あ〜、はずかしい

 やだ、今日もリル様の足元でブルー君とホクト君がじゃれあってる。全てが素敵過ぎる


「グライシス嬢も今から領地にお帰りですか? リシィもお利口だね 」と梟の頬を指で撫でた


「えっ、リシィの名前まで覚えてくださっていたんですか!」


 ええええ、リシィ名前覚えられてる

 しかもほっぺたスリスリなんて羨ましい

 と思ったら声が大きくなってしまった


 が〜ん!リル様に笑われてしまった……


「あ!すみません 大きな声出して」


 もう、恥ずかしすぎて死にそう


「いえいえ!こちらこそ失礼しました。グレイシス嬢とのお話が楽しくてつい笑ってしまいました」


 うわぁぁぁ、無理 無理 見れない! 反則だわ〜! 最終兵器か? この笑顔


「グレイシス嬢、よろしければカウンターまでご一緒しましょう」

 とリル様が空いていた右手で私の荷物を持った。


 え? 何が起きてるんですか? 今? 夢かどうか確認したいが頬をつねるのは、さすがにできないのでこっそり腕をつねる

 痛い! 夢じゃない


「ジーザメリウス様 重いですのにいいです、自分で持ちます」


「僕を、誰だと思ってるんですか? 学園の最強騎士ですよ」と冗談ぽく

 微笑むリル様


 そうです、あなたはいろんな意味で最強だわ


 私は「ありがとうございます」

 と応えるのが精一杯だった


 カウンターで受付を済ませ

「では、素敵な休日を」と挨拶し別れようとしたとき

 ついお願いもう一度振り向いて!と念じてしまった


 リル様がおもむろに振りむいて

「グレイシス嬢の領地、確かお隣でしたね

 またぜひ休日の間にお会いしましょう」

 と手を振り別れた


 その後のことはどうやって家まで帰ったかもわからない

 夢なら覚めないでと思うばかりだった

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