第7話【身を翻す燕のように】
その日、無事に部活に参加していた時のゲームにて。
「晴也!」
「おう!」
俺のパスを晴也が受け取る。
そして切り込んだ晴也が速く低いライナーのシュートを放つ。
「いけっ!」
「舐めるんじゃねぇ!」
キーパーである先輩が、そのボールを受け止めた。
「ちっ、やっぱダメか!」
「まだまだ!」
「三番!」
『了解!』
合図で陣形を変化させる。
三番は攻撃特化陣形。ここから一点もぎ取る。現在一対一。
ボールを奪い取り、攻撃を仕掛ける。
「お前たちばっかにいい恰好させねぇよ!」
「先輩‥‥‥‥すいません!」
晴也にパス。すると晴也はダイレクトで味方にパスを出した。
「どうした、晴也」
珍しい。撃てそうな場面だったのに。
「いや、よく見てみろよ新」
「ん、ぁあ‥‥‥‥なるほど」
先輩たちの眼がギンギンだ。
(このゲーム、次の練習試合と大会のスタメンかかってるからな‥‥‥‥)
必死になるのも当然なのだ。
だが、サッカー部の本気はかなりヤバい。
「いいか、絶対にボールを渡すんじゃないぞ!」
「任せろ!」
晴也も小学二年生からやっているだけあってテクニックは相当だ。
「松本!」
「はい!」
ボールを保持している後輩に指示を出す。
次にやるべき道は‥‥そこか!
「松本、四番!」
「了‥‥‥‥解!」
ロングパス。ハーフラインからゴール前までボールが通る。
「晴也、今!」
「お、らぁ!」
ダイレクトボレー。しかしボールはゴール寸前で弾かれた。
キーパーのパンチングだ。だけど、先輩は今姿勢を崩している。
そして今、ボールに一番近いのは‥‥俺だ。
(やってやる‥‥)
右足のシュートフォーム(ボレー)に入った瞬間、俺は気配を察知した。
後ろから来た二人の敵がボールを奪おうとしている。
そこで、右足を軸にした左ボレーに変更。
それもフェイク。
左足を回し蹴りのようにボールの上を通過させ、思い切り右足で踏み込む。
「マジかよ‥‥!」
「先輩!」
「させねぇ!」
「音花!」
「いけええええ!」
やっぱサッカーは、シュートしてなんぼだろ!
「うらぁ!」
遠心力の乗った右足でダイレクトボレーを放つ。
一度放った剣を勢い良く振り上げて二撃目を放つ‥‥そういう剣技がある。
その名も、【燕返し】。
乱回転のかかったボールは、勢い良くゴールに突き刺さった。
「…………うっし!」
「やったな、新!」
「先ぱぁあああい!」
「よくやった!」
「…………おう!」
そしてそのシュートを、彼女も見ていた。
「…………楽しそう」
(…………朝より、今の方が‥‥輝いています‥‥音花さん)
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