1(8月17日)

 浜沢寅太郎はまさわとらたろう六十七歳。妻あり。浜沢家も三人娘の代で終わって、清々したのか二十年前から孤立無援の山の秘境に住んで、妻と、「塩、塩はないか?」「んもう、スイカ、もう何個目?」――ごく普通の生活を送っている。

 夏。秘境とはいえ小さな集落があり、浜沢家含め4家族がこの集落に住んでいる。浜沢と同じ境遇の夫婦が、鈴木夫妻、豊池夫妻。後、若い夫婦で桜井家がいる。妻の名前は理子、夫が巧。養子縁組で子供はどこかにいった、無責任な夫婦。

 この8人が――サバイバルの参加者だ。


            ***


 8月17日。空は雲一つない晴天。浜沢裕子はまさわゆうこ、五十七歳は外に出ていた。隣の集落から岡部美津子おかべみつこが来ていた。美津子と裕子は仲良しだ。

「あら、美津子さん、どうしたの……」

 裕子がいった。美津子が泣きそうな顔で訴えた。「集落の住人が一人ずついなくなるの。いなくなった次の日、死体が見つかる――」

「やめてよ、そんな物騒な話」

 二人の顔はどんどん歪んでいく。

「ほんとなのよ。前田さんのいるS集落、次いで私のいるY集落――そうなると次は……」

「なるほど、あたしの集落、と」

「そういうことよ」

 美津子は帰っていった。(どうしたのかしら、美津子……)裕子は動揺していた。

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月刊 ようこそぬまのべミステリー 2024年 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

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