第17話
すると、映像は甘いものから辛いシーンへと変わり、銃声が微かに聞こえてくる。男女はあっという間に血で濡れ、見るも無惨な姿へと変わり果てた。
「ほら、ええとこやないかい」
岩島さんは自信に満ち溢れていて、私は不快に満ち溢れていて。想像していたものとは違っても、気持ちの良いものではない。
「最初っからそう言えば、誤解など生まなかったのでは?」
白石さんが問うと、岩島さんは眉を顰めて、
「言うとったで?」
「少しは考えて発言しろ」
城山さんがハッキリ言うと、岩島さんは顔を顰めて、
「考えるも何も、ありのままを言っただけやで?」
「正直に何でも言えば良いってわけじゃないと、俺は思いますけどね」
橋本さんが正直に言うと、岩島さんは真顔で、
「お前だけには、言われとうない」
本当のことを言っていようが、考えて話していようが、正直に言っていようが。それまでの過程が不快なものであることには変わりなく、岩島さんの発言もやはり下品なもので。
どこか嫌悪感を感じてしまう。
映画の最中も終わった後も、岩島さんは文句ばかり垂れていて。人の家で威張るなだの、想像力に欠けているだの。昨日の素敵な彼とはかけ離れていて、やはりおじさん臭く年の差を感じずにはいられない。
城山さんの提案で、食事へ行くことになった。部屋を出て駐車場へ向かうと、昨日と同じ選択に迫られる。
けれど、私は迷わず岩島さんの車へ乗った。助手席に乗り込んだ私に、白石さんは何か言いたそうにしていて。けれど、彼は何も言わずに自分の車へ乗り込む。
「何でワシなんや? 見てみい、白石が何か言いたそうにしとったで?」
と言いつつも、岩島さんの顔は少しニヤけていて。私はそんな彼を見て、
「乗ったら駄目なんですか? だったら、和真の車に乗ります」
車から降りようとすると、鍵を閉められた。そして、岩島さんはエンジンを掛けて口を開く。
「そんなん言うとらんやろが。なんで、ワシの車を選んだんか、ジブンに聞いとるんやで?」
答えを分かっているのに、あえてそう聞く岩島さんも狡賢く。私は眉を顰めて、
「そういう気分だっただけです」
「ほうか」
シフトレバーを操作してハンドルを捌く岩島さんは、なんだか不機嫌になり。想像していた答えと違ったことに腹が立ったのか、いつも以上に運転が荒い。
駐車場から出る際も荒々しく曲がり、後続車からクラクションを鳴らされ。岩島さんは、また不機嫌になる。
けれど、岩島さんはそれに対して文句を言わず、箱から取り出した煙草を咥え。窓を少し開けて、煙草の先端にジッポーで火をつける。ゆらゆらと上がる白い煙は、誘われるように窓の向こうへと消えていった。
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