第68話 恋のかけら

 領地に帰るとウィリアムとフェリックスそしてアイリーンお姉様がいらしていた

 王都から近いので彼らはよく顔を出す


「セラ、アリスおかえり」


「どうされたんですか陛下 宰相補佐官様と婚約者様まで」

 この人たちは、また何か厄介事を持ってきたのか?とセラとテリウスは思っているようで警戒心を隠しきれないようだ


「冷たいな、セラ…… お義兄様とお義姉様と呼んでくれていいんだぞ」


「じゃあ私はセラのことを伯父上と呼ばんといかんな」

 とウィリアムとフェリックスはそう言いながら笑っている


 その様子を呆れながらアイリーンが

「ミラー辺境伯様とここでお会いするお約束しているんですよ」


「人の城を待合場所にするのはやめてください」


「いやあ、ちょうどよかったんでな」


「本当にあなたたちは・・・それでどう言った要件だったんです」

 と言っていたら扉が開き、ミラー辺境伯がいらしたと思ったら

「セラ」

 と私の関わりたくないNO、1のあのリュチアの声が聞こえた 思わずセラの腕にしがみついた


「あら、アリスお姉様ったら警戒しなくても大丈夫ですよ 私もうセラに興味なくなりましたから」


 え? ならいいけどなんだろうその言い方なんだかカチンとくる


「リュチア様、突然いらっしゃってどうされたんですか?」

 と思わず少しムッとしながら聞いてしまった

 リュチアの返事を待たずして大きく扉が開いた

「おお、みんな待たせたな」


「師匠!」


「ウィリアム陛下、師匠と呼ばれるのはもちょっとまずいのではないでしょうか」


「いや、あなたは死ぬまで私の師匠であり勝手ながらもうひとりの父と思っております これからもそう呼ばせてください」


「そうか、ありがとう ウィル ところで、リュチア姫 先に一人で行くとはお行儀がよろしくないな」


「そうですよ、姫様 私とご一緒にいくお約束でしたでしょ」

 とミラー辺境伯の大きな体の後ろから薄い紫色の髪色の茶色い瞳の小柄のとても可愛らしい女性が出てきた


「師匠その方は?」


「ああ、陛下覚えておりませんか私の領地にいらした時に、何度かあっているでしょう

 私の兄 前辺境伯の娘 私の姪で、今は私の養女のクロエですよ」


「陛下お久しぶりでございます エトワール大公様 アリス皇女様皆様 初めましてクロエ・ミラーと申します」と綺麗なカーテシーで挨拶してくれた


「いや、この度リュチア様がクランフィールドアカデミーに短期留学することになって先日そのことでアズールレーン国王陛下に呼びつけられたのだ」


「え?よく許してくれましたね国王陛下」


「いや・・・・・ 姫はちょっとばかりわがままに育ちすぎたので少し他の世界も見せないといけないのではないか せめて短期間留学させてみてはと皇太子にかなり提言されたようだ」


「そうなの、お兄様ったら失礼だわ、でも婚約者のスミハール公国のルシエル様も同じアカデミーにいらしているから安心なの」


 え!いつの間に!あの時にはすでに留学の話も縁談も水面下で決まっていたのね!すごい、さすがだわ・・・・


「ルシエル様は私と同じ学年でいらしてリュチア様より2つ年上なんですよ 」


「じゃあ、クロエ様は一つ年下なのかしら」


「はい、アリス様は私たちの憧れの先輩でいらっしゃいましたから」


「え!そんな・・・」


「ウィリアム殿下は幼い時にお会いした時以来ですもの お元気そうでよかったです 

 一段と凛々しくなられましたね」

 とクロエが恥ずかしそうに話す


「あ・・・・ああ、クロエそなたも元気そうでよかった・・・

 美しくなったのだな」

 ウィリアムも照れながら返事を返す


 !!!!!!

 部屋にいるもの全員(リュチアを除いて)驚いた


 あら!ウィリアムったら!!思わずウィリアムの聖獣のリルまで普段姿隠しているのに出てきたじゃない


 思わず、私とフェリックスの目があった

 フェリックスは、笑いを堪えようとしているがニヤニヤしている


 これは、王宮に帰ったらウィリアムはフェリックスにからかわれるな……


 ああ、本当にウィリアムってわかりやすい・・・と思っていたら

 セラが、「うまくいくといいな」とこっそり私の耳元で囁く

 もう、セラってば……

「そういうお話は後でお話してください」

 と小声で言うとニヤニヤしている



 ミラー辺境伯もリュチアの短期留学の挨拶を名目にそういう思惑もあったのか ニコニコと娘と弟子の様子を見ている

 きっと王城でふたりをあわせるよりこの城であわせる方が人目もつかず、ふたりともリラックスして会えると思ってこの城を選んだのだろうか


「ミラー辺境伯様、せめて私達には前もってお知らせ頂きたかったです」とこっそり話すると

「お前達に話したら態度にすぐ出てしまうだろう」と小声で返されたあと

 ハハハハと大声で笑った


 気が付かないのはマイペースなリュチア姫だけ

 この部屋にいるものはみんなホワホワとウィリアムとクロエをあたたかい目で見守っているのであった


 そしてその後、和やかに食事をしてそれぞれ帰っていった


「しかし、テリウス 結局我が城はウィリアムのお見合い場所として使われたのか」


「ミラー辺境伯様にして見れば愛する娘と息子のように育てた一番弟子がご夫婦になればご安心でしょう

 あの様子じゃあフェリックスも全く知らなかったみたいですね」

 そう言いながらテリウスが部屋から出ていった


「クロエはもしかしたら幼い頃からウィリアムが好きだったのかもしれないですね」

 とお茶を淹れながら話していると


「クロエも初恋はウィルだったのか モテるなウィル 誰かさんもそうだったしな・・・」とセラが後ろから抱きしめて私の肩に頭を乗せる


「もう、危ないですよ・・・

 好きと愛してるは違うんですよ」


「どんなふうに?」


「そうですね・・・・

 好きという気持ちの恋のかけらをひとつずつ、ゆっくり沢山あなたがくれたからあなたへの気持ちが愛になったんです」

 そう言って拗ねた顔をして私の肩に乗せたセラの頭にコツンと頭を優しく乗せた


「そうか…… 」

 そう言って彼は甘えるように私を強く抱きしめた

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