第62話 愛していると言ってくれ
翌日は怒濤の忙しさだった
そして異例尽くめの出来事ばかり
まず、アズールレーン国王陛下 前国王陛下立会の元アズールレーン王国広間でウィリアムサラスーラ国王陛下よりセラ・ロイ・ド・エトワール子爵に大公爵位を授爵の儀が行われた
その後、私は国王陛下の家族と顔合わせをし皇女の即位式をした
即位式の準備はもういつでもできるようにと準備されていたのか用意されていたドレスもガウンもすべて私にちょうど良いものばかりであった
皇女のティアラを国王陛下から頭に乗せられた時には母の事を想い、感極まり胸が熱くなった
王城のバルコニーから国民にもお披露目されそのあとは舞踏会への準備に直行である
舞踏会のドレスはセラがプレゼントしてくれたカトリーヌのあのスタイリッシュなデザインで体のラインが綺麗な薄いピンクのドレス
そして、セラは黒地に銀糸で刺繍が施されているタキシードに銀色のクラバットにはエメラルドが付けられている
「うわ!独占欲丸出しだが気持ちはわかるぞ セラ」
とフェリックスに冷やかされていた
「こんなにきちんと着飾ったセラ様大きくなられてから初めてです
もう素敵すぎです!!やっぱりセラ様は・・・」
とまた私のいつもの癖が出そうな前に
「アリス!ストップ
わかったから今はやめて……
あとで二人きりになったら思う存分言っておくれ」
と耳を赤くしたセラに止められた
養女になり家族になったとはいえ国王家族とはつい先程あったばかりである
舞踏会前にもう一度今度はセラと国王陛下家族に挨拶に行った
王妃様はセシル様とても穏やかでお美しい方ブロンドの髪にチェリーピンクの瞳が美しい
「アリスこれからはもう一人母が出来たと思って何かあれば頼るのですよ」
そう仰ってお支度のためご自分のお部屋に戻られた
従兄であり義兄になるルシル皇太子はセラと同じ歳
私や国王陛下と同じプラチナブロンドにエメラルドグリーンの瞳 顔は私に一番似ているかもしれない
身長はセラより低く、フェリックスと同じくらいだろうか
そして義妹になるリュチアは16歳王妃様にそっくりで髪色も瞳も王妃様と同じブロンドにチェリーピンク 可愛い系美少女である
二人ともセラとは何度も会っているせいか仲が良いようだ
気さくに話ししていてはっきりいってセラの方がこの国に馴染んでいる
まあ、仕方ないよね1年以上仕事で修行としてこの国にいたわけだしと思っていたら
リュチアが
「セラは私が結婚すると決めていたのに!!」とセラに抱きついて言い出した
え? 何いってるの?何してるの?
「リュチア、セラには好きな人がいるってずっと断られていただろう」
「リュチア姫もっと素敵な人が現れますよ」
「ええ!いや!私はセラがいいの!!」
セラはアカデミーの頃も、子供の頃からもすごくモテていて こういう光景は見慣れたものだ
とはいえ、今日お披露目の前にそんなこと冗談でもいう?
いや、あの頃とはちがう、もう!絶対嫌! 私がこんなに束縛心が強いとは自分でもはじめて気がついたかもしれない
「いや、アリスは束縛するタイプよね~」とかエリィ達精霊が私の後ろでヒソヒソ話してる……
だめだ・・・・・この子苦手かもしれない義妹になったとはいえ、もうできるだけ関わらないでおこう……とそう決めたのであった
「アリス、すまなかったね
少しわがままに育ってしまったようで本当に申し訳なかった」
「いえ、ルシル様お気になさらないでください」
「セラ様は少しは気にしてくださいね!」
とセラの耳元で少し怒りながら囁いた
セラは少し驚いた表情をしてそのあとクスッと嬉しそうに笑った
もうなんで嬉しそうなのよ!
と思いながらもセラにエスコートされ舞踏会の会場に入場した
入場とともにどこからか拍手が起こった
国王陛下ご夫妻が最後に入場された
「皆の者に紹介と報告がある我が妹ユーリの一人娘アリスがアズールレーンに戻ってきたのは皆もう知っておろう
今回アリスを第2皇女として即位したそして彼女は隣におるサラスーラのセラ・ロイ・ド・エトワール大公の元に嫁ぐことが決まっておる 本日はその報告とお披露目のために集まってもらった 二人の幸福を祈ってどうか皆で祝福してやってほしい」
と挨拶を国王陛下が終えた途端会場中に拍手が湧き上がった
音楽が流れ出すと
「ファーストダンスの手をとる栄誉を私にくださいませんか」
とセラが手を差し出す
「喜んで」と手をとり中央へ二人が踊り出すと精霊たちが集まり開場中が金色の光で包まれた 精霊たちもダンスし金色の光が音楽に合わせて舞い踊る
楽しく夢のようなひと時だった
翌日帰国前にようやくウィリアムと三人で話しができる時間が取れた
「陛下、実はこの指輪を海の女神よりお預かりしております」
とあの金の指輪をウィリアムに渡しながら海底での出来事を話しそして保存魔法で残したお二人の姿をウィリアムに見せたのだった
ウィリアムは金の指輪を握りしめ声を殺して泣いていた
私たちは、部屋を出てウィリアムを一人にした
そっと扉を閉めたあと部屋からウィリアムの嗚咽が聞こえてきた
しばらくしてウィリアムが部屋から出てきた
「そろそろ出港の時間だろう
私も帰りは船で帰ろう女神と両親にも海の上からでも礼を言いたいしな」
そう言いながら笑う
「それがいいですね、我慢せずに気分が悪くなったら仰ってください」
とセラがウィリアムの頭をくしゃくしゃとなでる
「お祖父様、お義父様 本当にありがとうございます」
「ああ、次は結婚式で会おう」
「婚約式は今から急に行くとなればあちらのご家族に迷惑をかけるからな」
「お気遣いありがとうございます」
そうして船に乗り、アズールレーン王国を後にした
船が、あの場所に差し掛かった頃ウィリアムが白い薔薇の花束を海へと投げた
すると、白イルカのルルが現れウィリアムが投げたばらの花束を咥え
「ウィリアムのお父さんお母さんに渡しておくねぇ アリスまたいつでも僕のことも呼んでねぇ」
そういってルルは波間へと消えていった
ウィリアムはいつまでも海を見つめていた
夜になりセラと星を見に甲板に出た
満天の星空の下 甲板にはふたりきりだった
静かな船上に誰かが、部屋でバイオリンを弾いている音が聞こえてくる
「私とダンスを踊ってくださいますか」
とセラが手を差し出した
「喜んで」
と笑いながら見つめあい二人でダンスを踊った
「ご機嫌はもう戻りましたかお嬢様」
「あらどうかしら・・・」
「やきもちなんて嬉しいな」
「嬉しいだなんて……
私があれからずっとモヤモヤしてるのに」
なんだかんだ言っても私は、あのリュチアの言動にモヤモヤしていた
そんな私の気持ちにセラも気づいていたようだ
「俺なんて今までずっとモヤモヤしていたさ
ファーストダンスって言っても本当のファーストダンスはウィリアムに奪われてるし」
「いや、それはアカデミーの・・・」
「ハハハ、冗談だよ そうだな・・・・」
そう言って真剣な表情に変わったセラの顔が近づいてきた
「セラ様…… 」
そっと唇が重なった
「他の言葉は要らない 愛していると言ってくれ」
彼が耳元で低く響く透明な声で囁く
「愛している・・セラ」
そういうと今度は唇を強く重ねてきた
彼の長い髪がスルリと落ちてきて優しく私の頬をくすぐる
「少しくすぐったい」
唇が離れ 少し笑いながら彼の顔を見つめると彼の金色の瞳が熱みを帯びて揺れていた
月の光が彼の向こう側で輝いている
「あっ見て」
セラにそう言いながら空を見上げると降り出しそうなぐらいの満天の星がいつもより煌めいていた
「あなたの瞳みたい」
というと彼は少し微笑んで
「愛してる」という言葉と、ともに強く熱く長く唇を重ねた
初めての口づけは海の上星の下 時間が止まっている様に感じた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます