第14話 ロックの刀「岩切り」
オルドビスの森から刀鍛冶の橋本がロックのために打った刀を王城に持ってくる。橋本がロックに言う。
「やはり、日本刀の方が似合うと思ってロックさんのために作った物です。」「ありがとう。日本刀は長いんだね。」
「これはロックさんに合わせて作ってあります。刀身は1.5メートル、刀身は分厚くできており重さは15キロあります。」「へー、片手で扱えそうだけど。」
「ロックさんだけですよ。片手で扱えるのは。」「ありがとう。刀に名前話あるの。」
「それですが。ここに用意した岩を切ってみてください。」
ホブゴブリンたちが4人がかりで長方形の岩を運んでくる。ロックは刀を抜くと岩を斜めに切る。
刀は折れることなく、岩を通過する。そして、切られた岩の上部がずり落ちる。
「ロックさん、刀の名前を岩切りと名付けましょう。」「岩切りかー、いい名前だ。大切にするよ。」
橋本はロックの喜ぶ姿を見て納得するとオルドビスの森へ帰って行く。それをリースが呼び止める。
「橋本さん、私にも剣を打ってくれませんか。」「しかし、私はリースさんの剣はどのようなものが良いかわかりません。」
「分かりました。まずは剣さばきを見てください。」
リースは自分の剣を持ち出すとロックにも剣を持たせて試合げいこをする。ロックはこれまでの訓練で腕を上げてリースの動きについて行けるようになっている。
しかし、リースは本気を出している。ロックの剣はリースに軽くいなされてリースに撃ち込むことが出来ない。ロックは剣姫と言われるリースの本領を知る。
「リースの剣は華麗だね。かなわないよ。」「お前様も腕を上げていますよ。」
「リースさん、その剣を見せてください。」「いいですよ。」
橋本はリースの剣を真剣になってみる。
「これは素晴らしい剣だ。どうして私の作った剣がいるのですか。」「旦那様と同じ作者の剣が欲しくなったのじゃ。わがままを聞いてください。」
「分かりました。この剣に負けない剣を作って見せます。」「お願いします。楽しみにしていますね。」
橋本は新しい剣を打つため帰って行く。
グラムも橋本と一緒にゴブリンたちを連れてオルドビスの森へ行く。
ヴァルハラ王国では、勇者たちの訓練が続けられていた。6人の勇者は、残された級友を守るため、国王のベンヤミンの言うことを聞くしかなかった。
訓練途中で6人は特性から役割を与えられる。剣士にトウヤとユキコ、戦士にヒナタ、魔術師にサチ、ヒーラーにセネカ、隠ぺいを得意とする斥候にケンゴがなる。
6人は騎士団長のアンドレアスに基礎を教えられて基本動作が出来るようになる。するとベンヤミンから指示が出る。
「勇者たちはメジナのダンジョンに潜り経験を積むこと。」
これには騎士団長のアンドレアスがベンヤミンに直接抗議する。
「勇者たちはまだ戦いができる状態ではありません。今、ダンジョンに入ると死人が出ますよ。」「これは、神セベク様の指示である。神に逆らうのか。」
「せめて護衛の兵を付けることをお許しください。」「分かった。早くするのだ。」「はい。」
アンドレアスは神セベクが焦っているように感じる。
セベクはバシュラール王国へ行って、サタナキアの乱入によって恥をかいたので、勇者を使ってロックに痛い目を合わせたかったのだ。
しかし、今の勇者ではレベルが低すぎる。そこでダンジョンでレベル上げを思いついたのだった。
勇者たちは護衛の兵と騎士団長のアンドレアスと共に王城を出る。勇者たちは初めて王都を見るが、きれいな服で着飾っている人がいる中、ボロを着て路肩に座り込む人々が目に付く。
明らかに貧富の差が大きかった。トウヤはアンドレアスに言う。
「貧しい人が多いようですが教会は何をやっているのですか。」「王都では朝に教会でパンが配られる。だから餓死する人が出ていないが、地方へ行くとひどいものだぞ。」
「魔王のせいなんですか。」「教会はそう言っているが、貴族が肥え太っているだけだな。これは他で言うなよ。」
「俺たちはいったい何をやっているんだ。」「今は耐えろ。いいな。」
勇者たちの馬車は王都を出て、いくつかの町や村を通過する。そこでは異臭がして、道には倒れている人がいるのに放置されていた。
勇者たちは2泊してメジナに着く。そこは他の町や村と違って活気があった。アンドレアスが勇者たちに説明する。
「この町は、ダンジョンから産出される魔獣や宝物の取引で潤っている。だが、荒くれ者が多いから慎重に行動してくれ。」「分かりました。」
勇者たちは、冒険者ギルドへ行く。少年少女6人の組み合わせはギルドの中で目を引く。さっそくこわもての冒険者が寄って来る。
「坊ちゃんお嬢ちゃんたち何しに来たんだ。ここは託児所ではないんだよ。」「そこまでにしてもらおうか。」
アンドレアスが冒険者に言う。冒険者はアンドレアスの胸の紋章に気づく。
「何だ、保護者付きかよ。」
冒険者は悪びれることもなく離れていく。アンドレアスは勇者たちに言う。
「受付で冒険者登録をしてくれ。」「分かりました。」
トウヤたちは神に必要事項を書くとそれぞれ職種によって能力値を測ることになる。剣士のトウヤとユキコ、戦士のヒナタ、斥候のケンゴは剣士と戦って腕前を測る。
試験官の剣士はA級の剣士が務める。剣技の等級はSからDまでに分けられる。結果、トウヤとユキコ、ヒナタ、ケンゴともにCであった。
魔術師とヒーラーは魔力量を測ることになる。ここで騒ぎが起きる。魔術師のサチがS判定だったのだ。ヒーラーのセネカはB判定である。
魔力の等級もSからDに分けられる。さっそくサチに声がかけられる。さらにヒーラーは貴重なためセネカにも勧誘が殺到する。護衛の兵が慌てて2人を群衆から助け出す。
冒険者ランクはSからFに等級が分けられる。トウヤたちは未経験なので全員Fになる。この等級によって受けることが出来る仕事や行けるダンジョンの階層が決まっている。
勇者たちは冒険者ギルドを出ると武具を買いに行く。ここで剣や盾、防具などを揃える。サチがみんなに言う。
「魔法使いらしくなってきたかしら?」
防御用のマントに杖を持ってくるりと回って見せる。ケンゴが言う。
「俺なんか地味だぜ。」
黒ずくめの衣装に短剣を持っている。アンドレアスが言う。
「本物の勇者になったら国から装備が与えられるからそれまでこれで我慢してくれ。」「大丈夫ですよ。ようやく勇者になった気がします。」
トウヤが答える。これからトウヤたちはSランクまで冒険者ランクを上げなければならないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます