第12話 バシュラール魔王国建国
ユリアンは、国民主義の法律を完成させる。それには犯罪の刑罰から商取引までこと細かく記載されていた。ロックは初めの数ページで読むことを諦める。
カールは2日がかりで法律に目を通すとユリアンに言う。
「この法律は使えないな。」「これのどこが悪いと言うのだ。」
「創るのはバシュラール魔王国だ。もちろん、ロック様に魔王になっていただく。」「魔王は選挙で選べばいい。もちろんロック様が選ばれるに決まっているがな。」
「ロック様は魔王としてバシュラールの全てを手に入れることになる。民衆もロック様のものだ。」「それは法律に反する。」
「当然だ。だが、君の作った法律は優秀だ。使えるところは利用させてもらうよ。」「カール、私はお前が嫌いだ。」
ユリアンは怒って部屋にこもってしまう。カールは予定通りとばかりに法律についての会議を始める。
オーガとヤコブ隊長は最初から降参している。カールが言う。
「バシュラール魔王国はロック様が主権者で国の全てはロック様のものと言うことでよろしいですか。」「婿殿が王だからそうに決まっているだろ。」
グラムがわざわざ確認することではないと言わんばかりに発言する。
「その通りです。それを明文化したのです。」
カールが説明して、次に行く。
「地方の領主は民衆が選挙で選ぶ。」「貴族が黙っていないぞ。」
ディートハルトが焦って言う。カールは説明を加える。
「法律はすぐに公布しますが、選挙は5年ごということにします。」「貴族に猶予を与えるのか。」
「そうです。貴族は5年間を民衆から選ばれるように努力が必要になります。有能な者は生き残るでしょう。」「トラブルが起きなければいいが・・・」
ディートハルトは貴族の反乱を気にする。カールは基本的な部分だけを発表していくが、みんな脱落していき、中西とフールが残るだけになる。
カールは最後に言う。
「今話したことは基本的なことです。個々の法律に意見のある人は後から意見を聞きます。」「・・・・・」
返事はない。これ以上カールと法律の話をしようというものは、この場にはいない。
バシュラール魔王国の法律はカールの思うままになる。後日、ユリアンは見事に利用された法律を読んで嘆くことになる。
この法律は、貴族から民衆まで広く公布される。字を読めない者は
法律は民衆から歓迎される。貴族に支配されていた地方の運営を自分たちが選んだ者に任せることが出来るのだ。
反対に貴族たちはロックたちに反感を持つ。自分たちの地位が脅かされるのは確実だからだ。力のある貴族が集まってロックたちを倒す計画を立てる。
しかし、反乱は起こらなかった。兵たちが動かないどころか、民衆から強い反感を買ったため、動くことが出来なかった。
法律の公布から半年後、ロックたちはバシュラール魔王国の建国を宣言する。民衆はロックたちを歓迎する。魔王国の建国は人間以外の者にとっても重要なことであった。
国中からドワーフ、ゴブリン、オグル、リザードマンなどが集まって来る。ロックは魔王として彼らに面会する。ドワーフの族長が言う。
「俺たちと取引をしてくれませんか。貴族と取引していましたが魔王様と取引したいです。」「どのようなものを取引しますか。」
「武器から装飾品までなんでも作れます。」「分かりました。よろしくお願いします。後は財務大臣の中西と話してください。」
ゴブリンの族長がロックに言う。
「魔王様はホブゴブリンの部隊を持っていますが、私たちも使ってくれませんか。」「全員雇います。訓練は厳しいですよ。」
「頑張ってついて行きます。」
ゴブリンたちはグラムが引き受ける。オグルたちは族長がいない。彼らは自分の力に自信を持っていて群れないのだ。そのオグルが言う。
「オーガは名前をもらっている。俺たちにも名前をくれ。」「オーガのように訓練に耐えて、忠誠を誓うならいいよ。」
「俺たちは自由だ。オーガに勝って力を示す。」
ロックはオーガに話を振る。
「オーガ、どうする。」「全員叩きのめして見せます。」
オルグたちは、オーガと戦い始める。オルグたちはオーガに歯が立たなかった。オルグたちは負けて去っていく。
オルドビスの森から来たリザードマンの族長がロックに言う。
「私の息子ピエールは、魔族に名前をもらってから増長して若い衆を連れて勝手な振る舞いをしています。」「彼には会ったことがあるよ。」
「どうか私に名前をください。息子を止めたいのです。」「分かりました。ドラクはどうかな。」
「ドラク、素晴らしい名前だ。ありがとうございます。我が一族は魔王様に忠誠を誓います。」
魔王ロックの接見は、貴族たちもいるので3日続いた。祭り騒ぎは王都だけでなく、国中で行われる。バシュラール魔王国の建国と魔王ロックの話はすぐに隣国に知れる。
ヴァルハラ王国のセベク・アーブラハム・デ・ストラウトは、勇者ロックが魔王になることは知っていたが、その妻がアンネリースであることは知らなかった。
今、ロックの横にはアンネリースがリースと名を変えて妻としていることを知る。セベクは嫉妬の炎を燃やす。
「アンネリースは私が見染めた女性だぞ。なんであんな小僧に取られなければならないのだ。」
セベクは独り言を言いながら握った拳を振るわせる。魔王ロックを討ち取るために勇者を6人用意したが、まだ訓練が必要である。
アンネリースがぽっと出の小僧に寝取られるなど許せるはずがない。
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