第21話 リザードマンに会う

 ゾフィー女王は、国にいる2000の兵のうち半分の1000の兵を失う。宰相がゾフィーに助言する。

 「隣国のヴァルハラ王国に応援を求めてはどうでしょうか。勇者を何人も従えていると聞きます。」「お前は他国に恥をさらせというのか。」

 「そのようなことは、ただ、魔王と戦うにはこれしかないと考えます。」「数で押せばよい。徴兵をして兵を増強するぞ。」

 「分かりました。仰せのままに。」

バシュラール王国では15歳以上の男子を徴兵することになる。農村や町では働き手が奪われ住民は困り果てる。1万人が集められ訓練が開始される。


 ディートハルトとヨーゼフは20キロの甲冑を着させられる。グラムが説明する。

 「初めは軽めの甲冑から始めましょう。」「これが軽めなのか。」

 「ロックは50キロから始めましたよ。」「それで今は300キロの甲冑か。」

 「お二人には100キロを目指してもらいます。中西さんでも50キロを克服しましたから大丈夫でしょう。」

ディートハルトとヨーゼフはこれは死ぬかもしれないと考える。グラムはさらに言う。

 「この坂を走って登ってもらいます。遅いと私の使い魔のソードボアが後を追いかけますのでつつかれますよ。」「ちょっと待ってくれ・・・」

 「行きますよ。」

ディートハルトとヨーゼフが走り始める前にソードボアの体当たりを受ける。さっそく、2人はティアナにヒールしてもらう。グラムは言う。

 「走らないとだめじゃないですか。」「ソードボアより早く走れるわけないですよ。」

 「アレを見てください。」

中西とホブゴブリンたちがソードボアを引き離して坂を駆けあがって行く。ディートハルトとヨーゼフはやるしかなくなった。

 2人はソードボアにつつかれながら坂を駆けあがって行く。3回も続けると動けなくなり坂を転げ落ちる。そのたびにティアナがヒールする。

 ディートハルトとヨーゼフはヒールを受けるたびに筋力がついて来る。

 アデリナは炎神パイロウスに魔法を習うことになる。パイロウスはアデリナに言う。

 「君の特異な魔法は何かね。」「炎熱魔法です。」

 「ならファイヤーボールを教えよう。」「そんな基礎魔法はできますよ。」

 「見本を見せよう。」

バイロウスはアデリナの言うことを無視して進める。バイロウスは手をかざすと巨大な炎の玉を作りだす。アデリナはこんな大きなファイヤーボールを見たことが無かった。

 「やって見たまえ。」「アレをですか。」「そうだ。」

アデリナは魔法の杖の先に魔力を集めてファイヤーボールを作りだす。しかし、バイロウスのようなファイアーボールは作れない。

 「集中力が足りない。集中して一気に炎に変えるのだ。」「はい。」

アデリナは集中してファイヤーボールを作りだす。

 「だめだ、集中力を一度に最高レベルまで引き上げるのだ。」「はい。」

アデリナは魔力切れを起こすまで続けるが合格はもらえなかった。フールがヒールしながらアデリナに言う。

 「すぐに出来るものではないですよ。根気よくやりましょう。」「はい。分かりました。」

アデリナは赤くなりながら言う。フールは彼女の心まで癒したようだ。

 ロックは300キロの甲冑を着てエスリムと回避の訓練をしている。水の斬撃がロックを襲うがぎりぎりで回避する。しかし、ロックとエスリムは突然訓練を中断する。

 ロックたちは、複数の魔物が近づいてくることを察知したのだ。ロックたちが警戒していると10人のリザードマンが現れる。

 リザードマンは、オオトカゲが人のように立ったような姿で鎧を着て槍で武装していた。リザードマンのリーダが言う。

 「最近、水辺を騒がせているのはお前たちか。」「泉で訓練をしていました。」

 「人間のお前がか。」「はい。もう少し静かにするように気を付けます。」

 「もう遅いわ。死をもって償ってもらうぞ。」「困ったなー」

他のリザードマンが水神エスリムに気づく。

 「ピエール様・・・」「うむ、どうした。」

 「やめたほうがいいかと・・・」「何を言っている。これから侵略者に裁きを下すのだ。」

ピエールはいきなり槍でロックをつく。ロックは槍の柄を掴んでいう。

 「辞めましょう。」「おのれ、バカにするのか。」

ピエールは槍を引こうとするがびくともしない。配下のリザードマンが言う。

 「ピエール様、もう1人はエスリム様ですよ。」「なにーーー」

ピエールは目を見開いてエスリムを見る。エスリムは笑顔で手を振る。ピエールは槍を手放して土下座する。

 「エスリム様と御仲間とは知らず、ご無礼をしました。申し訳ありません。」「その方はピエールと言うのですか。」

 「はい、族長の息子ピエールです。」「なぜ、名を持つ、魔王様は名を与えていないと思うが。」

 「メルヘムと言う魔族に名をいただきました。」「メルヘム・・・魔王キーシリングの配下にいましたね。」

 「魔王キーシリングですか、申し訳ありません。」「責めてはいないのですよ。泉を訓練に使いますが構いませんか。」

 「はい、もちろんです。」「族長にもよろしくお伝えください。」

 「はい、分かりました。失礼します。」

リザードマンたちは逃げるように去っていく。ロックがエスリムに聞く。

 「魔王キーシリングて、他に魔王がいるのですか。」「リース様を入れて7人の魔王がいます。彼らはそれぞれ自分の領地を支配しているのです。」

 「魔王アンネリースの領土はどうなるの。」「新しい魔王を立てないと他の魔王たちが取り合うことになるでしょう。」

 「大変ではないですか。」「そうです。だから婿殿に頑張ってもらっているのです。」

 「僕?」「はい、婿殿です。」

 「僕はリースと静かに暮らしたいだけなんだ。魔王なんてなりたくないよ。」「みんなのためです。私は婿殿のために何でもします。」

ロックは静かな生活とは正反対の道を進んでいると考える。

 午前の訓練を終えてみんなで昼食を食べる。エスリムがリースに報告する。

 「魔王キーシリング配下のメルヘムがオルドビスの森に入り込んでいた模様です。リザードマンの族長の息子に名を与えています。」「ほう、なめたことをしているようじゃのう。」

 「見つけたら、ボコボコにしてやるか。」

グラムが物騒なことを言う。リースがロックに言う。

 「バシュラール王家に国を任せていたが返してもらうことにしよう。」「この国はリースのものなの。」

 「そうじゃ。管理が面倒だったから600年ほど前にバシュラールに管理を任せたのじゃ。」「魔王討伐はいったい何なの。」

 「我との約束を忘れたバシュラール王家が勝手にやっていたのだ。我は暇つぶしに相手をしていたのじゃ。」「返してもらって誰が管理するの。」

 「お前様じゃ。魔王ロックと名乗るがいい。」「えーーーっ」

ロックは頭が痛くなってくる。

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