第18話 索敵班帰らず
ディートハルトは兵20人の組を20組作って森の中の索敵に当てる。ヨーゼフがディートハルトに言う。
「俺たちが森に入った方が良いと思うぞ。」「森は広い。情報がないと無駄に時間を浪費することになります。」
「もう、兵を100人も失っているんだろ、犠牲が増えるぞ。」「彼らも訓練された兵士です。20人いれば何とかなるでしょう。」
「だといいが・・・」
ヨーゼフは森を見ながら答える。
今度の索敵班は固まらずに大きく広がって進んで行く。目印も木の枝を切って作る。
索敵班の前に中西が現れる。索敵班が尋ねる。
「昨日の生き残りかほかの者はどうした。」「地獄へ行ったよ。地獄の入り口のようこそ。」
中西は剣を抜くと索敵班の中に切り込む。索敵班が動揺しているうちに5人切り殺す。索敵班の残りの15人は中西を取り囲む。しかし、彼らはゴブリンたちに囲まれていた。
索敵班は統率が乱れて中西とゴブリンたちの餌食になる。ヤコブ隊長はゴブリンを2人1組にして兵に当てらせる。兵よりゴブリンの方が腕が立ち強かった。それが2人がかりで兵を襲うのである。
兵に勝ち目はなかった。オーガは索敵班に出くわすと圧倒的な俊敏さと腕力で蹂躙していった。戦況は小人たちからフールにもたらされる。フールはロックとリースに報告する。
「索敵の兵を昨日は100人、本日は400人倒しました。勇者と仲間はまだ動いていません。」「みんなに被害は出ていないよね。」
「婿殿は優しいですね。圧倒していますから、けが人が数名出ただけです。」「そろそろ次の手を打つのだろ。」
「さすがリース様、今夜、森の外の拠点を叩くつもりです。勇者と仲間は、私と婿殿で相手をします。」「彼らについては説得をしよう。」
リースは、ディートハルト、ヨーゼフ、アデリナ、ティアナの4人を殺したくなかった。できれば仲間にしたいのだ。ロックは新しい勇者について考える。
彼は僕とリースを殺すことが使命と思っているはずだ。説得に応じるだろうか。
ディートハルトたちは索敵班が帰ってくることを待っていたが1人も帰って来なかった。兵たちに動揺は広がる。2日で半数の500人が消えたのだ。
タダツグがディートハルトに言う。
「何を慎重になっているの。兵は弱いんだから、僕たちが行くべきでしょ。」「魔王アンネリースと勇者ロックは手練れだよ。遭遇戦は避けたいんだ。」
「大丈夫、ロックは魔法が下手なんだろ。僕の方が強いに決まっているよ。」「確かに魔法はだめだったが魔王の所まで行った実力者だぞ。」
「ヨーゼフさん、僕に実力がないというの。」「そうはいっていないが・・・」
ヨーゼフの戦士の勘がタダツグがロックに及ばないと告げている。タダツグは機嫌を損ねて言う。
「みんなが行かないのなら、僕1人で行くよ。」「待て、タダツグ、行かないとは言っていない。」
「なら、明日はみんなで森に入るよ。」
タダツグは明日の予定を強引に決めると自分のテントに帰って行く。アデリナがみんなに言う。
「私はタダツグの意見に反対よ。」「なんで言わなかったんだ。」
「ヨーゼフ、分かっているでしょ。言っても喧嘩腰になるだけでしょ。」「アンネリースとロックと戦うの?」
「ティアナ、女王の命令だ。諦めろ。」「そう言うディートハルトが戦いたくないと思っていない。」
「思っているさ。負けるのは俺たちの方だと感じているんだ。」
「どちらにしろ、明日は森の中だ早く寝よう。」
ヨーゼフが言うとみんなそれぞれのテントに帰って行く。指揮所のテントには夜警の兵たちが残る。
「俺たち生きて帰れるかな。」「どうかな、何と言ってもオルドビスの森だ。人外の魔境だからな。」
拠点の警戒は増員さて10人の兵が見張りをしている。彼らは誰も気づいていない。すでにゴブリン部隊が包囲を完成させていた。
後は風神フールの指示でゴブリン部隊の半数が突入するだけだ。突入部隊は中西の班が担当する。ヤコブ隊長は、中西の復讐を遂げさせるため。突撃部隊を代わって包囲網敷くことにする。
ロックとフールは中西と共にいる。リースは森の木の上に登って観戦することに決めていた。フールは1人でディートハルト、ヨーゼフ、アデリナ、ティアナの相手をすることに決めている。
ロックは当然勇者タダツグの相手をすることになる。中西が右手を上げるとゴブリンたちは構える。右手を降ろすとゴブリンたちは音を立てずに突進する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます