二〇二五ーかつて未来だった話―

@ondahirou

第1話


 小島邦ヲは自殺しようとしていた。

この世のありとあらゆる物事に絶望したのである。

 2020年のCOVID-19ウィルスに人類が打ち勝ったかのように見えた2022年12月、イタリアで新たなる新型ウィルスが発生した。そしてその翌年、また翌年と新たなるウィルスが発生し続けたのである。

 ウィルスは年を重ねるごとに強靭化、強大化し、度重なるパンデミックに人類は打つ手を失った。2020年には二百近くあった国々は次々に亡び、東アジアだけが残された。残された人類のみで生き残らなければならないと悟った日本、朝鮮、中国の全政府は統合政府を作り、東アジア政府が成立していた。

 そして2025年、東アジア政府はいわゆる「社会完全リモート化法令」を発表した。人と人が完全に触れ合わないことでしかウィルスに勝てなかったのである。

 ふれあいを防ぐため外出は完全に禁止され、家庭内クラスターを恐れ家族別居法が施行された。配達による感染の対策で配達は完全に機械化し、外出が禁止されたため道路はロボットの通り道でしかなくなった。

 今や人間は社会を失ったのである。

 そうした中で小島は自殺を試みていた。

しかし簡単に自殺するといっても自殺は難しいのである。

社会の消失は自殺者を急増させ、政府は自殺対策として自殺禁止法を施行した。ありとあらゆる自殺に使えそうな道具が回収され、(もちろんロボットで)多くの人々は独房のような部屋に暮らすこととなった。もはや自殺するには飛び降りしかかなくなったのだが外出は外出厳禁法により禁じられている。

しかしコジマは法を破った。生きていることに耐えられなくなったコジマはたまらずに外出したのである。生きることへの絶望が法による処罰への恐怖を超えていたのである。

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