ラヴェルのパヴァーヌ

ラヴェルのパヴァーヌ

白黒のフィルムの中で

少女は楽しげに躍っている。

懐かしいアルハンブラの庭で

かろやかにわらいながら。

噴水は優美に舞い

色とりどりの草花を咲かせている。

少女はそれらを手に取り

美しい風景は少女をも取り込んで

それは一つの絵画のようだった。

亡き王女は

今は亡き王女は、

追憶のかなたでただ楽し気に

回っている

笑っている

世界は彼女を祝福している。

かつて見たはずの、

かつてともにいたはずのあそこは

今や彼女だけのもの。

王女は、

獅子の噴水はいまだに流れている。

いつの日か、あなたと見た景色は、

今日も変わらないはずなのに。

そこにあなただけがいない。

王女は、

今や亡く。

白黒のフィルムは終わり

あとには涙にくれる私ばかり。