第8話 コンクール明けの部活①

「では今日から本格的に、次の演奏会に向けての練習を始めていきます!曲はコンクールで吹いた曲に加えてポップス系を2曲くらい加えようかなーって思っているので、やりたい曲を各パートリーダーに送ってください!」

「「「はい!」」」

「それでは、10時30分から合奏をするので、それまではパート練をしていてください。解散!」

 

 部活最初の出席確認と部長の綾華からの連絡が終わり、みんながぞろぞろと各練習部屋へ移動していく。

 連絡が終わったら、いつも同期と駄弁ってから遅れて練習部屋に行くことが最近の恒例となっており、少し聞きたいこともあったため俺は綾華と恵がいるところの方へ近づいて行った。


「なー、綾華ー。今日の合奏って軽めにする?コンクール明け最初のまともな練習を厳しくしたらみんなモチベ下がるかなぁ」


 と声をかけると、恵も綾華も驚いた様子で目を見開いた。


「あれ、俺なんか変なこと言ったか…?」

「あ、あんたが、みんなのことを思って軽めにするなんて発想をするなんて…!」

「悠くん…!とうとう優しい心を持ったんだね…感動だよ…!!」


 こいつら、俺をなんだと思ってるんだ。


「あのなぁ!たしかにコンクール時期はブチギレたり、客観的に見れば虐めてるようなことをしたりあったけどな!あんなんずっと続けるわけないだろ!」


 コンクール時期の俺の合奏はとても地獄のようで、一部の後輩では「高瀬ハラスメント、縮めてタカハラ」などと言われるほどの言動をしていた。

 個人的にはそれを言われると罪悪感と恥ずかしさで逃げ出したくなるため、大会前や演奏会前でなければしたくないのだ。


「あはは、冗談よ。悠斗が好きなようにすればいいと思うけど、そうね、合奏の楽しさを思い出せるようにする方がいいかもしれないわ。1年生も参加するものね。」

「だよなー、でも俺がそういうのやろうとしたら、いつもダジャレとかが多くなっちゃうからグダるんだよなぁ」

「コンクール時期の『練習番号のCシィーから始めるからみんなシィー!』って言ってたとき、あの後悠くんへのみんなの冷たい視線すごかったもんね!」

「いいだろ!!あの発言をしたことで実際みんな静かになったんだから!!!!!」


「恵せんぱーい、まーだパート練来ないんですかー?」


声がした方を振り返ると、音楽室の入り口からフルートパートの後輩たちがひょっこりと顔を覗かせていた。


「ごめんごめんすぐ行くよ〜!じゃ、またあとでね2人とも!」

「おう、いってら〜。

 んで綾華、昨日のメッセージのことなんだが…」


 恵が楽器を持って音楽室から出るのを見送ってから俺は綾華に聞きたかったことを聞く。


「あーね、メッセージ見たわよ。すごく難しいところよね。でも、あんたはあの子が自分のことを好いてるとは思ってないんでしょ?」

「まあな。可能性はゼロじゃないだろうけど、流石に想像できん」

「そうよね、私も話聞かなきゃあんな可愛い子があんたみたいな人を好きになるわけないと思うし。」

「おい、なんでこの流れで俺が馬鹿にされてんだ!」

「なら、好きな人いることくらいは伝えてもいいんじゃない?それが何か弊害になることはないでしょうし。」

「おい、無視するな?」

「じゃ、練習行ってくるね。ばいばーい」

「おいっっっっ!!!!」


 というわけで、帰ったらとりあえず美咲に好きな人ができたことくらいは伝えようと決めた。

 

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