第21話◇種はしっかり植え付けておく◇

 いや、最高だった。エロ親父みたいに存分に堪能してしまったぜ。


「揉み心地抜群だな」

「でも、男の人の、視線が、いつも、突き刺さって、怖くて、外を歩けない、です」

「そうだな。男ならこれは見てしまうだろうな。好きな男はいないのか? あの幼馴染みとかどうなんだ?」


「はい……らく君のことは、好きです……。でも、やっぱり恥ずかしくて、時々チラチラ見られるのは、嫌じゃないけど、恥ずかしい」

「幼馴染みにおっぱい見られるのは嫌じゃないんだな」

「はい……好きな人、ですから。でも、きっと私みたいなおばけおっぱいなんて、気持ち悪いって、思ってるから」


 そこだけはネガティブに捉えるのか。

 さて、ここで幼馴染みを擁護するか、否定するか。


 難しい所だが、今は彼女の心理を否定的な方向に持っていくのは得策ではないだろう。


桃園ももぞのは魅力的だぞ」

「そ、そんな。でも、いつもらく君にはからかわれてるし、年上なのに、いつもビクビクしてるから、鬱陶しいって、思われてるかも」


「男ならそんくらい守ってやる甲斐性が必要だ。幼馴染みを信じてやれよ。きっとアイツは良い奴だぞ」

「は、はい、らく君は、昔から優しくて、苛められてる私を、いつも助けてくれました」


 俺は質疑を続けた。大事なのは初音自身がどう感じるかのみに言及するかだ。

 主人公が実際に初音を「こう思ってるんじゃないか」とは言わない。実際知ったこっちゃねぇし。


「好きなんだな」

「はい、好きです……でも、優奈ちゃんや小雪こゆきちゃんみたいに可愛くないし、舞佳まいかちゃんみたいに溌剌な元気もない。私には何もないから」


 なんか舞佳も同じような事を言っていたな。似たもの同士ってことか。


「そんな事はないぞ。桃園ももぞのは魅力的だ」

「そ、そんな事ぉ」


「いきなり変えなくて良い。いつも通りでいればいい。少しだけ違う自分を見せてやってみろ。それで反応が変われば、男はきっと変化に気が付く」

 

 まああの鈍感系難聴主人公では危ないかもしれんが、その時は俺が慰めてやろう。


 文字通り、全身全霊でな!


「上手く行かなかった時は俺の所に来い。相談に乗ってやる」


 恋愛経験なんぞさほど豊富でもないし、最終的には俺のものになるのだが、今は彼女の心を肯定して俺への信頼度を植え付けるのが先だ。


 初音はつねの頑ななネガティブをほぐすには、単純にエロスキルでセックスに持ち込んでも効果が薄いだろう。


 ゲーム終盤の成長した彼女は本当に魅力的だ。

 できればああなってほしいと思っている。


 まずは主人公に対して思いを向けさせ、恐らくするであろう失敗の時に付け込む。


 いやさっ、慰めるっ!


 予想だが確率的に8:2で失敗するはずだ。

 現時点でのゲーム内の二人の関係性では、主人公は恐らくそこまで気が利かないだろう。


 付け込む隙はそこにいる。気弱で自己肯定感が低い初音はつねは傷付きやすい。


 傷付いた心は無防備だ。スキルを使わなくてもつけ込み放題である。


初音はつね

「え……ぁ」

 

 俺は身を起こし、初音はつねの名前を呼ぶ。


「初音は可愛いぞ」


「……わ、私、本当に可愛い、んですか?」

「当然だ。それを証明してやる」


 今こそスキルの出番だ。俺の言葉には女の心の隙間に入り込む魔力みたいなもんがあるはず。


 頬に刺した赤みが目の前にある。俺は顔をグッと近づけて唇を寄せた。


「え、あ、あの……あ、あの、私、好きな人が……」

「大丈夫、だ」

「ゆ、うき……ぁ、んっ……」


 弱々しく抵抗する初音はつねを押さえ込んでそのまま唇を重ねる。

 抵抗できないように後頭部を押さえ込み、体全体を抱きしめて密着させた。


「ふ、ぇえ、な、なんで……」


 ここでようやくパスが繋がった。彼女の心の中は、快楽に対する欲求と、強い混乱と戸惑いに満たされている。


 しかし、そこに否定的な感情が含まれてはいなかった。


 どうやら俺とのキスに対して嫌悪感は感じておらず、むしろ未知の感覚に対する混乱で頭が付いていかないだけに思える。


 なんで、という言葉はなんでキスしちゃうのか、ではなく、自問自答だろう。


「今は忘れろ。そのうちちゃんと教えてやる」


 都合の悪い部分だけ記憶の消去を行なう。

 まだセックスしていないので、舞佳まいかのように顔を見るだけで発情するようにはできないが、俺との行為で感じた感情だけは残しておこう。


 そうすることで、彼女は少なからず俺を意識し始める筈だ。


『そろそろスキルの時間が終了しまーす☆ 後始末を始めましょー☆』


 丁度良い所でお時間のようだ。思った通りセックスまで持ち込むことはできなかったが、夢のスイカップをたっぷり楽しめたので良しとしよう。


◇◇◇


「ん……ふわ? あ、あれ? 私」


 気絶してしまった初音はつねの衣服を正し、エッチな行為の痕跡を全て消しておいた。

 

 濡れたパンツだけはどうしようもなかったが、記憶は消したので大丈夫だろう。


「目が覚めたか、桃園ももぞの

「あ、霧島、君……。私、どうしてたんですか?」


「別に何も。二人でここに来て、ベッドに横たわったらぐっすりだったぜ」

「あぅ、は、恥ずかしい、男の子の前で寝ちゃうなんて」

「心配しなくても誰も来ていないから、俺以外は寝顔を見られてないぞ」


「はうぅ、き、霧島君には見られたってことじゃ、ないですかぁ」


 先ほどまでと違い、初音はつねはほとんど淀みなく俺と喋ることができている。


 エッチな行為で心の距離が縮まったおかげだろう。

 伝わってくる彼女の感情には、俺に対する恐怖心がすっかり抜け落ちていた。


「せ、背中は、大丈夫ですか?」

「ああ、もうすっかり良くなった。桃園ももぞののおかげだ」

「え、わ、私、何かしましたっけ?」


 おっぱいモミモミの下りはちゃんと忘れているらしい。

 記憶消去が上手く行って一安心だな。


 この妖精さんスキルの良いところは、「何をすればこうなる」とかではなく、単純に接触時間によって一定の効果があるところだ。


 そこに自発的な「何かをする」の意思が乗っかる事で強い効果を発揮する。


 まさしくエロい事をするためのスキル効果って訳だ。


「こっちのことだ。気にするな」

 

「そ、そうですか。あ、あの。改めて、ありがとうございます……。何かお礼をしないと」

「あんまり気にしなくて良いが、そうだな。何か思いついたら伝えるから、連絡先を教えてもらえるか?」

「ぁ、で、でも」

「男と連絡先交換は抵抗あるか? それなら彩葉いろはを通じて伝えてくれていいぞ」

「あ、はい。それなら……大丈夫です」

「本当に無理しないでいいからな」


 俺に対する恐怖心は消えても、男そのものに慣れていない所は変わっていないか。

 仕方ないが、初音はつねの性格的にこう言っておけば、却って何かせずにはいられないだろう。


「それじゃあ俺は戻る。貧血には気を付けろよ」

「は、はい。ありがとうございました」


 こうして、思いがけず始まったラッキーちゃーんす☆でおっぱいを堪能し、初音はつねに種を植え付けることに成功したのだった。

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