第18話◇たわわにわっしり◇
「お、おいどうしたんだ。気分でも悪いのか?」
青い顔でうずくまっているので思わず素で声をかけてしまった。
「ふえっ、あ、あのっ、えっと」
しどろもどろになりながら目を泳がせる
コミュ障な性格設定の影響なのか、中々意味のある言葉を紡げずにいる。
「大丈夫だ。慌てなくて良いから、落ち着いたら喋ってくれ。俺は何もしないからな」
「え……あ、あの」
「心配しなくていい。誰も責めたりしないし、慌てて喋る必要もない。ゆっくり呼吸してくれ」
突然のことに驚いている
呼吸を整えてしばらく胸を押さえ、落ち着きを取り戻していった。
ここでゲームの知識が役に立った。
それらは幼馴染み達に支えられることによってある程度日常に支障をきたさないレベルを保っているのだが、こうして一人でいるところを知らない人間に声を掛けられると、途端にパニックを引き起こしてしまう。
イベントでも知らない人にしどろもどろになっている所を主人公に助けてもらうというのがあった。
だから俺は相手のリズムに合わせ、慌てなくて良いことを、できるだけ優しい声色で伝えた。
主人公が幼い頃に
これによって彼女の中で主人公との記憶は良いものとして美化され、攻略の決め手になっていく。
「いいぞ。怖がらなくて良い」
「あり、がとう……ございます……えっと」
「ん? ああ、霧島だ。霧島亮二。
「ぁ、はい。
「そうだ。霧島でも亮二でも好きな方で呼んでくれ。って、いきなり名前は呼ばないわな、普通は」
「ぁ、はは。そうです、ね。では、霧島、さん、で」
「君でいいぞ」
「は、はい。では、霧島君…」
「落ち着いたか?」
「はい、ありがと、う、ございます……。落ち着き、ました」
「それで、ここにいた理由を聞いても良いか?」
そういえば、この状況ってゲーム内で似たようなイベントがあったような……。
確か……。
「えっと、教室移動の授業だったんですけど……。その」
「貧血で気分が悪くなって休んでたら置いて行かれた、とか」
「え、ど、どうして分かるんですか?」
そうだ。これは秋頃に起こるイベントによく似ている。
なんでこのタイミングで起こっているのかは謎だが、こういうことが割とあるのかもしれない。
「ちょうど今から保健室に行くところだ。一緒に行こうか」
「ぇ、ぁ、そ、その」
やはり難しいか。彼女には主人公以外の男性と話すのが苦手という設定がある。
ノベルゲーのヒロインにありがちな設定だが、赤の他人である俺がそれを懐柔するのは至難の業だな。
だが問題無しだ。俺には妖精さんが付いている。
警戒心緩和を発動し、初音の恐怖心を和らげた。
「怖いか?」
「ぁう……すみません。あの」
「いいんだ。こんな見た目だしな。怖がるのも無理はない」
「ぁ、いえ、えっと」
「金髪は辞めた方がいいかな」
そういえば気にしてなかったが、この厳つい見た目の半分は金髪かもしれない。
ヒロインには銀髪も金髪もブラウンも緑もいる。ましてや目の前には鮮やかな真っピンクがいるのだ。
だがこれもゲームの世界という考え方をすれば、俺の金髪は染めたもので、彼女達は天然であり、それが普通、自然なのだ。
「まあいいや。先生を呼んで……いや、保健室は遠いからな。俺は前を歩くから自分で歩けるか?」
「ぁ、はい、大丈夫、です。すみません」
「いいんだ。俺の見た目が怖いのが悪いんだからな」
「ぃ、いえ、そんなことは……」
俺はできるだけ優しく微笑みかけて手を差し伸べた。
怖がるだろうと思いきや、怖ず怖ずとその手を取ってくれる。
「ぁう」
「っと、危ないッ」
立ち上がった瞬間にフラついたので咄嗟に支える。
「危なかった。大丈夫か?」
「ぁ、はい……えっと、ひぇうっ⁉」
「え?」
「あわわあわわわっ!」
「お、おい」
いきなり体を密着させたことに驚いたのか
悪い事にここは階段の真ん前だ。
「危ねぇっ!」
「ぇ、きゃああっ」
バランスを崩した俺達はそのまま階段の下へと投げ出される。
俺は咄嗟に
「どあぁああああ」
自分も頭を打たないように身を丸め、十数段ある階段を転げ落ちていく。
背中に強烈な衝撃が連続で起こり、肺から空気が押し出されてダチョウをくびり殺したような呻き声を上げてしまった。
「おぐっ、ぐべっぽ……」
「はひっ……はひっ……あ、あの……き、霧島、君…?」
「おー、イテテ……怪我はないか
「は、はい……お陰様、で……あの、それより霧島君は」
「お、おう。すこーし背中がジンジンするが、まあ大丈夫だ」
「そ、その、すみませんっ。私のせいで、あのっ」
「気にするな。それより本当に怪我はないか? どこか痛い所は?」
「えっと、はい。大丈夫、みたいです。は、はわわっ、あ、あのっ」
「どうした? やっぱりどこか痛むか?」
「そ、、そうじゃ、なくて、あの、その……手、手を」
「手? 手って……おおおわっ!」
なんと転んだ拍子に咄嗟の行動で
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