第8話

『だから焼きそばパンは・・・』


「レポートだよ、レポート!」



ギロリと睨まれた。

般若に。


これ以上、間違えてはならないあたしは大急ぎで手に持ったままだったレポートを彼の右手の上にそっと載せた。



「しんりんまお?」



レポートの表紙を凝視している

般若・・・いえ、岡崎先生のまさかの名字読み間違い




これは訂正したほうがいいのかな?

でも、間違いを指摘して怒りを倍増させたら完全に地獄行きだろう


でも、間違えられたままというのも・・・


どうしよう・・・






「岡崎センセ~イ、彼女、かんばやしまおって言うんですよ~」



あたしの躊躇いを知ってか知らずか、隣にいた絵里奈が躊躇うことなく、岡崎先生に正しい読み方を伝えてくれた。



やばい

今度は絵里奈が危ない


担当指導教官ではないとはいえ、絵里奈まで岡崎先生に睨まれたら、実習残り18日間、ふたりで路頭に迷ってしまうではないか


でも、絵里奈は間違っていない・・・






「そうなんだな、戸塚さんだっけ?教えてくれてありがとな。」


そう言いながら絵里奈に見せた般若のまさかの優しさ溢れる笑顔。


「は~い♪どういたしましてですう~」


絵里奈も羨ましいぐらいニッコリと笑ってる!

彼女の身を心配したことを後悔するぐらいに。



岡崎先生が初めての見せた笑顔の相手が

担当学生ではない絵里奈


くそ~

なんなんだ?



「おい、まお。」



さっきまでの絵里奈に対する優し目の声とは180度異なるぶっきらぼう100%の男の声。



しかも、“まお”ってあたしのこと?!


まおって呼び捨て?!

名前の呼び捨てって、あたしの中じゃ、家族にされるとか仲のいい友人だったり・・・そういう人がするもんだと思っているのに

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